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「おかえりアスラン!」

 

エプロンを身につけていつもと変わらず元気な声で出迎えてくれる可愛い妻に、
アスランは口元と頬を緩ませ幸せをかみしてめていた。
休日の甘い予定は大幅に狂わされてしまったが、その分待っているだろう至福の時。
カガリの喜び方がなんだかとても大きいような気がして、それがまた嬉しかった。
寂しかったのだろう。
残り少ない今日と明日の彼女から甘えながらの嬉しいおねだりがあることを期待していた。

 

 

「お風呂入ってこいよ。すぐ夕食準備するから!」


「あぁ」

 

ちゅ、と唇にキスをしてアスランはネクタイを緩める。
カガリに手にしていた鞄を渡して風呂場へ向かった。
いっしょにシャワーを浴びるのは行為のあとでもそれはそれでよい。
綺麗な金色の髪の一本から、つま先まで、全身隈なく丁寧に洗ってあげよう、と、
そんな煩悩で頭をいっぱいにして。

 

 

 


一方のカガリは、アスランの鞄を部屋に持っていった後、
すぐにバスタオルと着替えを手にしてアスランのいる風呂場へ向かう。
脱衣所の大きなカゴの中にはアスランが脱いだものが丁寧に放り込まれていて、
手に抱えた柔軟剤でふわふわしている1番大きなバスタオルと交換した。

 

「・・・あれ?」

 

アスランが脱いだ衣服から、ひらりと何かがカガリの足元に落ち、
それが目に入って、彼の服の中にこれが入っていて持ち上げた瞬間落ちたものだとわかる。

 

「なんだろ」

 

そう言いながらも、名刺だろうということにはすぐに気付いた。
気付かずこのままクリーニングに出してしまうところだった。
屈んで足元に落ちたそれを拾い上げる。
カガリの小さな手にもすっぽり収まるそれは、

「やっぱり名刺だ」

仕事関係のものだと思い、クリーニングに出さずにすんでよかったとほっとする。
後でアスランに渡さないととそう思い・・・それで終わるはずだった。

 

 

「・・・!?」

 

カガリは見た。

何となく名刺を裏返して見てしまったのだ。そしてよく見てみれば、いや、よく見なくても
その名刺がピンクで縁取られ派手目な女性の写真がくっついてる。
<<おいろけにゃんにゃん・リナ>>
だなんて、一体どこの国の言葉だと疑問がわくほど甘ったるい丸文字がカガリの目に飛び込んできたのだ。

 

「・・・え?・・・え?!」

 

カガリは1度目を閉じた。そうしてから思いきり見開く。が、変わらない。
だから今度は薄めで凝視してみた。
最後には顔に近づけたり遠ざけたりしながらじっとその一枚を見続けた。が、やはり変わらない。
見間違いではないのだ。

 

「な、な、な!なんだよ・・・これっ!?」

 

事態を把握すれば、名刺を持った手が怒りで震え出してきた。

 


「カガリー?ボディーソープきれてるー」

 

「!!」

 

脱衣所にカガリがいることを気付いたアスランが、風呂場の扉越しに声をかけ、
その声にびくっと身体を揺らしたあと、ほとんど条件反射的に考えることもなく
カガリは持っていた名刺を自分が身につけていたエプロンのポケットに突っ込んでしまった。

 

「カガリー?」

「あ、あ、あ、あぁ・・・!い、い、今、新しいのだす・・・からっ」

 

アスランの声にカガリはまた身体を震わせた後、棚から新品のボディソープを取り出す。
まだわずかに震えてる。
頭の芯までイライラが伝わって、そこから身体が反応しているようだ。
それでもさっきのアスランの声に怒りをぶつけるのではなくちゃんと答えを返している自分は、
いまだこの現実が信じられないみたいだ。信じたくないだけかもしれない。
名刺が入ったエプロンが妙に重く感じてしまう。


きゅっと、ボディーソープを握り締めたあと意を決してバスルームの扉を軽く叩くと
それを合図に扉が開いてアスランがひょっこりとそこから顔を覗かせ手を差し出した。

 

「ありがとう」

 

ボディーソープを手渡すとにこりと微笑まれて、カガリの怒りは一気にしぼんでしまった。
けれど変わりに胸をつく、切なさ。

 


・・・アスラン・・・おまえ、もう私に飽きちゃったのか・・・?

 

 

怒りはすでにどこかへ消え去った。バスルームの扉が閉まり、
今、胸をいっぱいにするのは、彼への想い。

 

 


・・・私より、私よりも、おいろけにゃんにゃんがいいのか・・・?

 

 


カガリはエプロンを脱いで重い足を引き摺るかのようにして、1人キッチンへ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

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おいろけニャンニャンって!!(笑)
なんだか拍手でもご心配おかけしてますが、ちゃあんとアスカガですので!
しかもシリアスとギャグの微妙な融合!!(笑)
5話予定が長くなりそうです。
ちなみに元恋人っていうのは、いろんな意味を含めてます。
・・・が、あんまりタイトルと関係ない話になりそうです(爆)。
1話1話短いんで、全話掲載終えたら適当にページまとめます〜。

 

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