新婚旅行

 

 

 

 

 

「アスラン・・・アスラン・・・!」

どこか遠くから可愛い愛する妻の声が聞こえてくる。
アスランは耳に届いた自分を呼ぶその声に、ゆっくりと瞼を開いた。

「おはよう、アスラン!雪、積もってるぞ!」
「・・・・・・ん・・・カガリ・・・おはよう。はや、おきだね・・・」
「ドキドキして早く起きちゃったんだ!」
「・・・・・ん・・・さむい、な・・・カガリ・・・」

腕の中にあったはずの温もりがないことに寂しさを覚えながら、
アスランは自分の顔を覗きこんでいるカガリの頬に手をのばす。
そっと柔らかな頬に触れると、カガリもアスランの思いをわかったようにすぐさまその唇を近づけておはようのキスを贈った。

「雪、ゆきだぞっ、ゆーき!」
唇を離すと彼女は真っ先にお目当ての雪という言葉を繰り返す。
昨日以上に瞳を輝かせてはしゃぐ彼女につられて窓の外を見れば、やっぱり予報通りに雪が降り積もっていた。
「アスラン!ご飯食べて雪投げしよう!」
「はいはい」
よく見てみれば、カガリは昨夜2人が脱いだもの全てをきちんと畳んでいて、さらにアスランの着替えを鞄から取り出し用意していた。
コーヒーの香りが鼻をくすぐって、朝食の準備もばっちりされてあるのに驚く。
余程、雪合戦を楽しみにしていたのだろう。
アスランはカガリが用意していてくれた自分のシャツに手を伸ばした。
朝食を終えると、2人で後片付けをはじめるが、その間もカガリはそわそわしていた。
たまに後ろを振り返り、外の景色を確認する。
今すぐに雪がとけてなくなるはずなんてないのに、なんだか必死なその姿が可愛くてしょうがない。
「カガリ、先に外で遊んでおいで。俺、片付けたらすぐ行くから」
「む。子供相手みたいな言い方するなよな〜」
「子供みたいだけど」
「こらっ」
「・・・って!」
からかい口調で言ったアスランの足を軽く踏み付けた。
そしてアスランはお仕置きと言いながら、カガリの唇を深く奪った。

 

 

 

後片付けを終えるとカガリはすぐさま外に出て、それをアスランが慌ててカガリのコートと手袋を手に追いかける。
暗証番号で開閉するドアをロックしてからなんとかカガリに追いつくと、
カガリはすでに小さな雪ダマを、手袋もせずに作っているところだった。

「こら、風邪ひくから」
「ん、ありがと!」
アスランがもってきたコートをカガリの肩にかけると、
カガリも大人しく雪ダマ作りを一時中断させてコートをしっかりと着込んだ。
そして手袋も身につけると、また一心不乱なまでに雪ダマを作り始める。
「作るの、手伝うぞ」
「アスランはライバルなのに?」
「え?・・・・あぁ」
そうだ。思い出した。
カガリと雪投げ合戦する約束をしたのだ。つまり今から2人は敵同士になる。
となるとアスランもカガリのようにたくさん雪ダマを作っておかなくてはならない。

カガリが腕時計で時間を確認した。

「今から3分後開始だ!負けたら言う事聞くこと!おまえはあっちで」
雪を丸めながらもてきぱきとアスランに指示をだす。
カガリの言葉に従い、アスランも指定された場所へと向かう。

できればカガリの傍でいっしょに雪玉を作って、たまにカガリに触れてキスをしたい。
けれど真剣に雪に向かいあってるカガリを見て、アスランも自分の思いはため息とともに飲みこんで
自分専用の雪玉作りを開始した。

そしておよそ3分が経過したところで、カガリの元気な声が響く。

「よーし!それじゃ、はじめるぞぉー!」

ぶんぶんと勢いよくカガリはアスランに向かって手を振っている。
アスランはそれを見て、立ちあがった。

「いっくぞー!」

カガリの第1投がやってくる。アスランも自分に向かってくるはずの雪玉をよけるために神経を集中させる。
カガリが腕を振り上げた。

「えぇい!!」

その手から、雪玉をアスランめがけて放り投げる。
ところが・・・・・

「・・・・・・あ、れ?」
「・・・・・・・・・・」

カガリの手から放たれた雪玉は、アスランめがけて一直線のはずなのに、
放物線を描いたまま、アスランの手前1Mでぽとりと落ちて形を崩す。
カガリの腕の力では届かなかったのだ。

「・・・・・・あっれー??!」

そう疑問の声をあげながら腕をぐるぐるを振り回している彼女。
その姿にアスランはこっそり笑いつつ、少しずつ近づいていった。
それに気づかないカガリは、ひたすら投げるイメージを固めるために、まるで投手のように腕を振り上げては降ろす。

何度かその行動を繰り返して、やっとのことでいい投球フォームを思いついたのか、
しゃがんで雪玉を手にとった時ようやく、すでにライバルが自分のすぐ傍に来ていたことに気付いたのだ。
自分に被さる影に、あ、と小さな声をあげてカガリがしゃがんだまま上を見上げると、
そこにいたアスランがにこりと笑って同じようにしゃがんでカガリの身体を抱きしめた。

「俺の勝ち、捕まえた」
「こ、こら!捕まえたら勝ちじゃないんだぞっ!」
「じゃ、俺の負けでいいよ。・・・でもカガリの傍がいい」
「も、もう〜!」

ぎゅっと抱きしめられるせいでカガリは身動きがとれない。
冷たいはずの風が身体をそっと撫でても、アスランに触れられた体は火照っていて熱いくらいだ。

「もう〜じゃ、いいよ!そのかわり、雪だるま!いっしょに作ろう?」
「あぁ」

いっしょに作ろうと言われて、アスランは微笑んだままやっとその身体を腕の中から解放した。
思ってた通りにカガリの顔が赤くなっていて、アスランはそっと髪にキスをする。
そしてカガリと2人で、雪だるまを作り始めた。
最初はカガリも大きいものを作ろうとしていたけれど、案外これが難しい。
何度挑戦しても、絵本の中のように大きいものを作ることがうまくいかずに、
しばらくしてから諦めたのか小さな丸い雪玉を2つくっつけて、手のひらにも乗りそうなほどのサイズの雪だるまを作った。
そして胸をはってアスランにそれを見せる。

「どうだ!雪だるま『あすらん』だぞっ」

それに笑ったアスランは先ほどのカガリのように童心に返ることにして、
なるべく綺麗な雪を選んで2つ丸い雪玉を作る。そして雪だるまの形にした。
「雪だるま『かがり』だ」
と『あすらん』の隣に並べて、楽しそうにできあがるのをじっと見ていたカガリに向かって言った。
ところが、喜んでくれると思っていたらカガリの口はへの字だ。
一体何が気に食わなかったというのだろう。
アスランが優しく尋ねようとした時、カガリはゆっくり、そのへの字だった口を開いた。

「『かがり』のほうが大きい・・・っ」

その一言で、可愛い不機嫌の理由がすぐにわかってしまいアスランは笑ってしまった。
それを見てまたカガリの口はへの字に戻り頬を膨らませる。
そもそも手のひらの大きさが全然違うのだ。
当然、その手のひらで作った雪だるまの大きさもかわってくる。
でもアスランはそれは言わないで、カガリのご機嫌をもとにもどすための言葉を口にする。

「カガリのほうが、包容力あるから。それが形になったのかな?」

そう伝えてもカガリはまだへの字口。
けれど、むすっとした顔で黙り込んでいたカガリが、
『あすらん』の横にいたちょっと大きい『カガリ』を、わずかに開いていた隙間をつめるように移動させた。

「カガリ?」

「・・・雪だるまも寄り添ってたほうがあったかいだろっ」

あぁ、もうなんて可愛いことを言う妻なのだろうか。
ちょっと照れ隠しなのか、ぶっきらぼうな言い方がたまらなく可愛い。
寒さのせいか、身体を伝う熱のせいか、どちらかはわからないが、頬が赤い自分がいるだろう。

「そうだな・・・雪だるま『あすらん』も『かがり』の傍がいい」
「だろっ?」
アスランの一言に、やっと心から嬉しそうに笑い返してくれたカガリが愛しくてしょうがない。
「それじゃ、実物アスランもカガリに寄り添おうか?」
「へ!?」

カガリが意味を理解するより先に、アスランはカガリの身体を抱きしめる。
抵抗できないようにしっかり自分の胸と腕の中におさめて、金色の髪は唇で触れた。
厚着のせいで柔らかさを感じることができないのが残念だけれど、腕の中のカガリはやはり・・・
「あ・・・ほんとだ。温かいな」
「こ、こらー!!これは寄りそうじゃなくってひっつく!」

動きを封じられてしまったカガリは、やはりいつものように軽く暴れ出す。
けれどアスランは笑いながら抱きしめたまま、何度も髪にキスを落とした。
そのうちにカガリの動きが大人しくなり、ぴたりと止まり・・・アスランが瞳を覗きこむ。

真っ赤なカガリがアスランが弱い上目遣いのまま嬉しい一言を言った。

「・・・・キスは・・髪だけ?」
「まさか」

即答したアスランにはにかみ微笑んで、カガリは瞳を閉じる。
自分の腕の中に閉じ込めたままアスランはその唇へ、彼女が待ち望んだキスを贈った。

 

 

 


外だということも綺麗さっぱり忘れていた二人は、
ワンルームマンションから出てきた30代くらいの男性が咳払いして通りすぎた時、
ここがどこなのかということを思い出しその身体を離した。
暫くバツの悪そうに見詰め合って、その後笑い出す。そうして手を繋いで部屋に戻った。
部屋に戻るとすぐさま荷造りだ。

必要なものしか鞄から出していなかったから、時間もさほどかからない。
この部屋は本当に1日だけ雨風を凌げるだけのものだったことに、アスランはまた眉を下げる。
またしても謝罪の言葉を口にしそうな彼に、カガリが先手をとった。
「謝ったら、ホテルで・・・その、・・・してあげないぞっ」
カガリのその言葉は効果覿面だった。
それは困る、と、アスランも気を取り直して謝罪の言葉は頭の片隅に追いやった。

確かにこの部屋は、綺麗でもなんでもない質素なものだったけれど、カガリにしてみれば
彼の故郷で新婚生活が楽しめたと思えばこれ以上幸せなことはない。
やっぱり互いがいればそれで楽園なのだと、アスランもカガリも同時にそんなことを思っていた。

 

 

手荷物を持って、部屋の扉をしめてロックする。
そのまま運転してきた車へ行き、ここに来た時のように荷物をつめこみ二人もそれぞれ運転席と助手席に乗りこんだ。

次に向かうのはホテルだ。
チェックインまでには時間があまっているのでホテルに直行せず市街地をドライブするつもりだ。
エンジン音がかかったところで、カガリがワンルームマンションを振り返る。
ここで過ごしたのはあっという間だった。
けれど部屋を出てみれば案外楽しい思い出が蘇ってくるではないか。
同じように昨晩の出来事を思い出したアスランはカガリに微笑みかける。
狭かったシングルベッドも、二人をぴったりとくっつけさせてくれて、温かかった。

アスランが車を動かした時、カガリが言った。
「ばいばい、『あすらん』『かがり』。幸せにな」
手をふって、先ほど二人が作った『あすらん』と『かがり』に声をかける彼女。
なんとも子供っぽい言動なのに、笑うよりも微笑んでしまうのは、やはり彼女が愛しくてたまらないからかもしれない。
アスランはワンルームマンションが見えなくなるまで手を振りつづけるカガリを見てそう思った。

 

 

 

 

雪は積もっているのに、車が通る道路だけは除雪機でしっかりと雪を取り除いてるところが
気候の管理もしっかりしてるプラントならではかもしれない。
そう思えばこの雪も本物ではないのだ。
できればカガリには本物の雪を見せたかった。
けれどカガリもそれをわかっているのに心から喜んでいてくれる、それが何より嬉しかった。

運転しながら、まるでガイドのように車の外の世界を紹介しているアスラン。
その声はまるで音楽だ。
一言一言がカガリに対する愛がこめられていて、たまに恥ずかしい台詞をさらりと言う。
雪を被って咲く紅い綺麗な花を見つけて、
「あの花、カガリみたいだ。可愛いな」
なんてことを言われては、カガリも紅くなるしかない。
アスランは運転中だから、バカ!と言いながらその腕を叩くこともできずに、
カガリは旦那様からの甘い無意識のアプローチに酔いしれることしかできなかった。

 


窓の外から何か大きめのドームのようなものが見えた。
それを見てカガリが声をあげる。
「スケート場だ!」
カガリのその声が、いかにも「行きたい!」と言ってるように聞こえてアスランはすぐに進路を変更する。
突然かわった進行方向に、カガリは驚きながらも笑い、
「ありがと、アスラン」と、アスランに可愛らしく礼を述べた。
「どういたしまして、カガリ、またこけるなよ?」
「もう!」
今度はつい癖で彼の肩を軽く叩いてしまった。


スケート場の駐車場に車を停めると、カガリが車から出てはしゃぎ駆け出す。
氷の前にまたここでこけそうだなとアスランは苦笑しながら、そのあとをついていった。
フロントで手続きを済ますと、それぞれのサイズの靴を借り身につける。
すぐに履けたアスランとは違い、カガリはベンチに腰掛けながらもその不思議な形の靴に四苦八苦だ。
アスランがすぐさまひざまずき、それを手伝った。
カガリは足が閉めつけられる感覚に首をかしげる。
「これ、痛いな。けっこう」
「すぐ慣れるよ」
そう言ってアスランはすっと立ちあがる。
カガリも真似して立ちあがろうとするが、うまくいかない。
「ほら、手・・・」
「あ。うん」
アスランが差し出した手に自分の手を重ねてやっと立ちあがることができた。
けれどバランスがとれずふらふらだ。
「よくこんな靴で歩けるよな〜」
周りにいた人が同じ靴を履いてるのに普通に歩いてる姿を見てカガリは呟く。
「カガリは運動神経いいから、すぐに上手になるよ」
カガリの手をひいたままいっしょにゆっくり歩き出したアスランがそう答えるとカガリはにこりと笑った。
「そうだよな!うん、そうだ!ジャンプくらいできるよなっ」
「え!?」
「テレビで4回転ジャンプやってたんだ!さすがに4回は難しそうだけど、2回ならいけそうだぞ!」
「・・・・・・そ、そうだな・・・」
ジャンプだなんて、アスランにだってできるものではない。
けれどここで夢を壊すのも可哀想だし、アスランはあえて真実は伝えずに笑顔を返すようにした。


そのまま二人はリンクにあがる。
もちろんアスランがカガリを支えて、だ。

「う、わ・・・!アス、ランッ!離す、なよっ」

やはり氷の上ではバランス感覚がまた違う。
アスランの手だけではなく、身体に抱きつく形でカガリはそのバランスを精一杯保った。
傍から見ればただのいちゃついているカップルなだけだ。
周りの視線が少し気になったアスランも、カガリが涙目で手を離すなと言ってくるものだから、
その可愛らしいお願いに負けてしまった。
カガリが転ばないように上手く誘導させて滑りだす。
カガリが前を向いているから、それを抱きしめて滑るアスランはもちろん後ろ向きだ。
しかし見事な滑りを披露するのがさすが、アスラン、だ。
けれど今はカガリも自分のことでいっぱいいっぱいな状態で、
そんなカッコイイ旦那様の姿を見ている余裕なんてあるはずもなく、必死に足元に力をいれ集中している。
「カガリ、リラックス」
「う、う、ううううん・・・っ」
その返答は、リラックスなんて微塵も感じることのできないほどに固かった。

けれど、暫くアスランの優雅な滑りについていっているうちに、カガリも自分の足で滑っていっているではないか。
やはりアスランの思う通り、カガリの運動神経は素晴らしいかもしれない。
引っ張るその力を気付かれないように少しずつ緩めていく。
カガリがそれに気づいたのは、自分の片手だけがアスランに触れている頃になってだ。

「え?あすら・・・離すのか・・・っ?」

不安な表情を浮かべたカガリに、できるだけ安心できるような微笑を向けると、
カガリは安堵の表情を浮かべるのではなく、その微笑に紅くなってしまった。
そして、そのままするりと最後の手も離れていく。

「え・・・わ・・・!・・・と・・っ」
「そう、滑れてるよ、カガリ」
「ほ、ほんと・・かっ!?」

今までの自分を思って疑心暗鬼なのか、アスランの手に引っ張られなくとも滑れてる現実が信じられないらしい。
「本当だよ」
また甘く微笑んで答えてあげると、またカガリは紅くなる。
「カガリ、可愛い」
「え!?」
「あ、真っ赤」
「も、もう!アスランの意地悪っ!」
今度はカガリがアスランの滑りを追いかけるようにリンクの上を1人で移動した。


それから数分ほどでカガリは見事な滑りをマスターし、その上達ぶりにはアスランも驚きカガリとともに喜んだ。
そして同時に、転びそうだと抱き着いてきてくれなくなったことが寂しい。
なんとも勝手なものだ。
それでもこのままカガリがうまく滑れるようになったことを素直に喜ぶことにし、
少し遠くからその滑るフォームを見てあげようとカガリに背をむけて移動した・・・
その時だった。

「きゃ・・・っ!!」

「カガリ!!」

後ろから聞こえた声に慌てて振り向くと、カガリが転んで尻餅をついている。
転び方があまりにも不自然で、アスランもすぐさま傍に寄った。

「いた・・・た・・」
「大丈夫か!?」
「ん・・・ごめん」
「痛むか?」
「ん・・・すりむいちゃったかも・・・」
カガリがそう言って左手で右の肘を抑えている。

痛みはそれほどでもなさそうだが、身体に傷をつけてしまったみたいでアスランはまるで自分が傷ついたかのように表情を曇らせた。

そしてカガリの身体を抱き上げる。
お姫様だっこされたカガリは、恥ずかしさに声を荒げ様としたが、
あまりにもアスランが心配そうな顔をしていたので、黙って彼の腕の中で大人しくしていた。

リンク外へ連れて行くと、アスランはカガリをベンチに腰掛けさせてスケート靴を脱がしてあげた。
カガリの足首をそっと掴んで動かすと、幸い足自体に痛みはないようでアスランはほっとため息をつく。
しかし、その安心感も束の間、カガリがとんでもないことを口にした。

「う〜ん・・・やっぱりジャンプは難しいなぁ」
「飛ぼうとしたのか・・?」
「うんっ」

笑顔で答えるカガリにアスランは頭を抱え込みたくなった。
これならばあの時、やはりジャンプなど素人には無理だとはっきり言っておけばよかったと反省もする。

きっとカガリのことだ。
怖れもなく思い切り体をひねって飛んでみたのだろう。
ジャンプすることを怖がってくれれば、その動きは緩やかで怪我するどころか転ぶだけで済んだかもしれないのに、
カガリにはこういうことを怖れるということがあまりない。
だからこそ、思いきり飛んで、思いきり失敗して、思いきり痛い思いもしたのだろう。

「もうジャンプは禁止!プロの指導もないのに飛べるわけないだろう!?」
「でも・・・っ」
「いいから、言う事を聞け!」

珍しいアスランの本気の怒りに、カガリは言葉をなくしてしまう。
アスランはアスランで、自分がついていながらカガリに痛い思いをさせてしまったことに後悔が襲う。
だからこそ言葉も強くなってしまった。
泣きそうなカガリの頭を軽く撫でてから自分もスケート靴を脱ぎ、カガリの分とあわせてフロントへと返却しにいった。

自分達の普通の靴に履き替えたあと、二人は車へと戻った。
まだアスランが怒ってるのかと、助手席からちらりちらりとカガリは横目で様子を覗う。
それに気づいたアスランが1度盛大にため息をついて、カガリに向き直った。

「ごめん・・・。あんなに怒鳴って・・・」
「・・・・私こそ・・・無茶してごめん・・・」

カガリにありったけの優しさと愛しさをこめて微笑みながらそう言えば、
カガリも今度は嬉しさで涙目になり、素直に謝罪を口にする。

「どこが・・・痛い?」
「ん・・・肘・・・ちょっとだけ・・・」
「・・・・・・見せて?」

そう言われてカガリはそっと右腕をアスランに差し出す。
アスランはその腕にそっと触れて、カガリの服の袖をゆっくりまくると、やはりそこは赤く擦れていた。
アスランはためらいもなくその傷に舌を這わせる。

「・・・・あ・・・」
「・・・・・・・痛む?」
「大丈夫・・・」

舌をゆっくり動かして、カガリの傷を舐め取るようにすれば、アスランの口には血の味がうっすらとした。
やはり少し切れていて血がでていたようだ。
少しでもよくなるようにと願いをこめてキスをするようにその傷に唇で触れる。

 

「・・・・・・あ・・・ん」

 

カガリが甘い声をもらしたところで、アスランの動きが止まった。
唇を腕の傷から話すとカガリの瞳を見て言った。

「・・・・・・ここでやめておくよ・・」
「え?」
「これ以上、カガリに触れたら、ここでしたくなる」
「あ・・・・・」

したくなる、と言われてカガリはどうして彼がこの行動を止めたのか初めてわかった。
瞬間、真っ赤に染まりあがり、それを見てアスランも赤くなる。

「い、行こうか?」
「う、う、うんっ」

少し動揺しながらのアスランの言葉に、カガリも伝染したかのような返事のしかたになってしまった。
そうして車が発進し、カガリは窓際にこてんと体重を預けてみた。
過ぎ行くスケート場を名残惜しく思いながら、舐められた腕をそっと自分の指で触れてみる。
傷なんて、本当に彼のキスで治ってしまったかもしれない。
身体が熱い自分がいる。ドキドキしている自分がいる。もっと触れてほしい自分がいる。
だから小さく呟いた。

「・・・・・続きは、ホテルで、な?」

カガリの声が聞こえたようで、アスランの視線はまっすぐ前を向いていたのに、
その頬がまたしても赤くなったのを見て今度はカガリは声をだして笑った。

 

 

 

 

 

 

NEXT

 

長くなっちゃったんでここで区切ります!でも何度も言うように続きはあるとは思わないで・・・
テーマは、ひざまずく旦那様(笑)。
ちなみに4回転は無理だけど、2回転くらいなら・・・っていうのは
どこかのバカが言った台詞そのまんまです。
ちなみにそのバカは滑ることさえできませんでした。
ちなみにそのバカはこのサイトの管理人なんかをやってます。
さーて!お次はホテルでいちゃラブだね!(笑)

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