新婚旅行

 

 

 

 

 

 

カガリは口が開きっぱなしだ。
一体何にと問い掛けられれば、今目の前にそびえ立つ豪華なホテルに、だ。
専用駐車場の無駄な広さにも驚いたが、何より今日泊まるこのホテルがカガリの視線を釘付けにする。
18年間育ってきたところがところだから、ホテルの価値が十分にわかる。
いや、そんなことは関係なく、ここはかなり高ランクのホテルだということが、一目でわかったのだ。

「ほら、カガリ。入ろう」
「え・・・え!?え!?」
「え?だ、だって・・ここ・・・っ」
「・・・・・カガリには小さいホテルかもしれないけど・・・」
「そんなことない・・・!」
「そう?」
「そうだっ」

自信満々に答えを返したカガリを見て、アスランは笑いながらホテルのこれまた無駄に大きな自動扉へ向かう。
そしてそのアスランの後について、息を飲みこみたくなるくらいのホテルへと足を踏み入れた。
本当に今カガリの目の前に広がる光景は眩いくらいで、華美で重みのある調度品に飾られたロビーを歩く足取りが恐る恐るになってしまう。
自分がこの床を踏むのが許されないような気分にさえなってしまうほどだ。
そんなカガリを見てアスランは小さく笑うと、フロントでチェックインの手続きをさっと行い、
鞄をかわりに持とうとしたボーイの手を遮りチップを渡してからカガリと二人きりで予約した部屋へと向かった。


エレベーターの中に入ったところで、自分達が泊まる部屋のある25階を指すボタンを押してほしいと頼まれたカガリは、
アスランの言うとおりにその階へのボタンを押そうとする。
と、それをじっと見ていたアスランがカガリの頬にキスをした。

「!!」

あまりにいきなりのことだったので誤って22階を押してしまったではないか。
「ごめんごめん」
「〜〜〜!」
本気で謝ってない彼に、カガリは可愛く睨みつけた。
けれども甘い微笑みを返されてしまって、気付けば自分は赤くなるだけだった。

 

 

二人が一晩過ごすことになる部屋は、最上階の一室だった。
何を見てもカガリは驚きと喜びの声をあげる。
「私、こういうところ泊まったことない!」
「そうなのか?」
「うん。泊まるって言ったら・・・野宿だったし」
「え!?」
「テントか、下手すりゃ毛布一枚で雑魚寝だぞっ」
「・・・・・・・・・」
唖然として口が開きっぱなしになってしまったかもしれない。
そういえば前に聞いたことがある。
彼女が家出をしてレジスタンスにいたことを。
その時も、口が開きっぱなしのままただただ驚いたのだが、まさか一国の姫君が野宿だなんて。
誰が想像するだろうか。少なくともアスランの思考の中にはそんなものはなかった。
しかし、雑魚寝と聞いてアスランは思いつく。
もしかして、他の男と隣に並んで寝ていたのでは・・・と。
そんなことを思ってしまえば、自然に無口になり、不機嫌になってしまう。眉間に皺が寄ってしまう。
カガリはそんなアスランに気付いた。
そんな風になった理由が、自分の発言のせいだとは思わなかったが、
こういう時はキスが1番よく効くということも知っていて、背伸びをして彼の頬に口付けた。
「・・・カガリ・・・!」
「・・・・・・・機嫌がよくなるおまじない、な?」
そのおまじないは非常に効き目があったらしく、アスランはすぐに笑顔になった。
むしろにやけていると言っていい。

 

部屋に入ったカガリは辺りをきょろきょろと見まわす。
ベッドルームの隣には、もう1つ部屋がある。これはどうやらスィートルームという部屋らしい。
高級ホテルの中でもかなり高い部屋だろう。
値段を聞きたくなったが、そんなのは野暮だとも思い、カガリは素直にアスランの優しさに感謝した。
そして早速、窓際へと駆け出す。
大きなガラス窓には、少し暗くなり明かりが灯りだした街が輝きを放ってカガリの瞳に映った。
「うわぁ!!」
雪を見た時と同じくらいの感動の声をあげたカガリのそばに、アスランは寄添った。
「すっごい綺麗だぞ・・・!アスラン!綺麗!!」
「そうだな・・・でももっと暗くなったらさらに綺麗だと思うよ」
「うん!楽しみだな!!」
にこにこと笑うカガリを見て、アスランはこのホテルを選んだ自分を心の中で誉めた。
夜景はきっと喜んでくれるだろうと、少し奮発したのだ。
夕食もどこかで豪勢にとるのも悪くない。そう思い、カガリに尋ねてみる。
「夕食はどうする?ホテルのレストランでもいいし、外に出て別の店探してもいいよ?」
窓際できゃっきゃと騒ぐカガリの傍に寄ったアスランは、はしゃぐカガリを目を細めて見つめながら尋ねてみた。

本当はホテルのレストランで豪華なディナーを予約しようかとも思ったのだが、
プラントの食事にカガリの口が合うのかどうかはわからず、
何より、どうせなら彼女の好きなものを食べさせてあげようとそう思い、予約はせずにいた。
だからどこで食事をするのかを決めなくてはいけない。
夕食にはまだ早い時間かもしれないが、思い切り運動したせいもあってか二人とも少しお腹が空いている。

「う〜〜〜ん・・・どうしようかなぁ・・・。今日はもう疲れたしなぁ」
「え?カガリ疲れたのか?」
「・・・おまえ、私のこと体力があることだけが取り柄だと思ってんだろっ」
「思ってないよ」
「嘘だ!顔が笑ってるぞ!」

本当のところちょっとだけ頭の片隅に思いついたりもしたのだが、
でも決して、それだけ、が取り柄な女性だなんて思ってない。
一つ一つ答えていくのも難しいほどに好きなところがありすぎるくらいだ。

「カガリ・・・今日はもう疲れたのか・・・」
「なんだよっ」
まだ何か言いたいのかと軽く睨みつければ、先ほどの微笑みは意味深なものにかわっていく。
「だって今晩・・・できないだろう?」
「・・!!」
アスランはカガリの耳元へ、彼女が弱い甘い声で囁いた。
カガリの身体がびくりと跳ねあがったのに気付いたが、吐息を吹きかけながら続ける。

「・・・・・それとも・・・」

してほしい?と尋ねようとする前に、カガリがアスランから1歩離れて距離をとる。
「ゆ、ゆゆゆゆ夕食はルームサービスで済まそう・・・ッ!」
自分が大好きだけれども少し苦手でもある甘い雰囲気を察知したカガリは、
わざとその雰囲気を壊すために大声を張り上げた。
恥ずかしがりやの彼女の照れ隠しには慣れたもので、アスランはそれに動じることもせず、
1歩さがったカガリに1歩歩み寄る。そして自分の腕の中に閉じ込めた。

「今・・したい・・・」
「だ、ダメ・・・まずご飯・・・っ」

アスランの駄目押しの攻撃に流されそうなカガリは、彼を振り切るのに精一杯だ。
今、ベッドに沈めば完全に彼のペースで起き上がることはできないだろう。
何せ昨晩は自分のお願いを聞いてくれて1度だけで終わらせてくれたのだ。
今日はそれなりに覚悟してるし、自分だってそれを望んでいる。
けれど今ベッドに沈められると、もっと暗くなってからの外の景色を眺めることができなくなるのではないだろうかとカガリは思い、
何としてでもこのアスランの甘い雰囲気から脱したかった。

「カガリ・・・・」
「・・・・・・あ・・・」

耳朶を噛まれるのが弱いことをしっていながら、彼は攻めることをやめない。
カガリから小さな声が漏れたのに気分をよくして、その手はカガリが恥ずかしがるようなところに触れてきた。


「〜〜〜!もぉ!!や、めろっ!!」


アスランの腕の力が自分に触れるために緩まったスキをついて、カガリはひらりとその腕の中から脱出した。
「・・・カガリ・・・・」
それでもなお、彼はカガリのそばへ、見事なまでに甘い雰囲気を壊さずについていく。
まるで狼に狙われてる気分になったカガリは、最終手段とばかりに備え付けの電話機でフロントに回線を繋げた。
「も、もしもし!ルームサービス頼みたいんですけど・・・っ!!」
このカガリの行動にはついていけていなかったアスランも、諦めたのかベッドに腰掛けてため息をつく。
もう少しで夕方から幸せな夫婦の時間を思い切り楽しめるはずだったのに・・・。
その相手となるカガリは、ルームサービスで次々と料理を頼んでいるところだ。
それだけたのんでも食べ切れないぞと言う前に電話は終わったようで、カガリはこちらへと向き直った。
「夕食、頼んだから・・・!ロールキャベツもあるらしいぞ!」
「・・・・・そう」
好きなものの名前を出されても、今はあまり嬉しくはない。
自分でも自覚はするが、まるで拗ねてしまった子供のようだとアスランは思った。
けれどカガリはそんな旦那様のことをわかっているのか・・・
「ご飯終わったら・・・いっぱいしてあげるからっ」
先ほどのお返しとばかりにアスランの耳元で甘く囁いて、シャワールームへ駆け込んだのだった。

その場に残されたアスランは、突然の彼女の誘惑に赤く染まりそのままベッドに倒れこんでしまった。

 

 

 

 

カガリがシャワールームに駆け込んで、そろそろ出てくるだろうと思ったとき、
部屋の中のベルが鳴った。
どうやらたのんだものが届いたらしい。
アスランは立ちあがってドアまで行き、ロックを解除するとゆっくりと開けた扉の向こうにボーイが立っていた。
「大変お待たせしました」
丁寧な言葉遣いと態度に、アスランもついお辞儀を返してしまう。
部屋の中まで運びましょうかと尋ねられたがそれを断り料理を受け取る。
けれど、いい香りがするその中に1つだけどう考えても彼女がたのんでないものが混じってあるではないか。
「これは・・・?たのんでないはずですが・・・」
アスランの目に映ったのは、一本のワインだ。
「お客様は新婚旅行ということで・・・当ホテルからのサービスでございます」
いざ人から新婚旅行と言われると、アスランは今更ながらにそうだと実感してしまう。
カガリが居てくれればそれだけでよかったから、この旅行も特別なことだとは頭の中からすっかりと抜け落ちてしまっていた。
そんな自分に苦笑したアスランは、たのんだ料理とともにそのワインを受け取った。
19歳はプラントでは成人年齢だ。酒だって堂々と飲める。
だからこんなワインを用意してくれたのだろう。アスランは感謝の言葉を述べ、
チップを渡してドアをしめると、贈られたワインをよく見てみる。
酒類にはあまり詳しくないアスランでも、これがかなりいい物であることだけはわかった。

「・・・・カガリ飲むかな・・・?」

カガリは真面目でそして頑固だ。
19になるというのに未だに酒の類いを口にしたことがないらしい。
それは未来の国家代表として育ってきた環境だったからこそ、
自分1人が些細な法律でも破るわけにはいかないという理由で守りぬいてきたものだ。
今時14,5でも親に隠れて飲酒なんて、誉められたものではないにしろ珍しいことではないが、
カガリはそんな道も歩まず、ただひたすら生真面目なくらいに生きてきたのだろう。

・・・カガリが飲まないなら、俺も飲まないでお土産にでもしよう。

そう思い、とりあえずはシャワーを浴びて出てくるカガリを待った。

 

 


「お待たせー」
そう言ってバスローブを着たカガリがシャワールームから出てきた。
早速カガリにワインのことを伝えようとする前に、アスランの手にあったそれを見てカガリが先に尋ねる。
「それワイン?おまえ飲むのか?」
「え・・・あ・・いや・・・」
先手をとられてしまったアスランは、言葉を濁した。
「遠慮しなくて飲んでいいぞ?」
「あ・・・・・・・・」
カガリを上手く誘いいっしょに飲もうと思っていたアスランも、
そういう風に言われてしまったら、予定を狂わされ上手く言葉を紡げない。
急にだんまりとしたアスランを不思議に思いながらも、
カガリは自分がたのんでいた食事が届いたことに気付いて気になっていたワインのことは投げ出し喜ぶ。
「お腹空いたー!食べよう、アスラン!」
「あ、あぁ」
いまだにはっきりとしないアスラン。
けれどカガリはすでに空腹が限界で、アスランのそんな様子も気にならなくなってしまった。

スィートルームには大きく広いベッドはもちろん、扉のない向こうの部屋にはゆっくり食事ができるスペースがあった。
アスランはその部屋まで料理が乗った皿を運び、2人の早めの食事が始まった。
カガリがたのんだものはとても2人で食べ切れる量じゃなく、
「こっそり持って帰ろうか〜?」
と冗談まじりに言ったカガリにアスランは笑った。
なぜだかそれが意地汚いとは思えず、むしろだんだん家計をしっかり考える主婦らしくなってきたカガリが居てくれる気がして、
こんな些細なおかしな言葉なのにアスランは嬉しくなった。


今日あったことを喋りをしながら料理に手をつける。
その間、カガリが話す言葉にアスランは耳を傾けていた。
オーブにも行ったことはないがスケート場はあるらしい。
それならば今度はスキーに連れていくと約束したアスランに、カガリは微笑んだ。
そうして楽しい夕食の時間が過ぎていった。
お腹いっぱいだと言ってカガリがフォークを置くとアスランもカガリと同じように手を止める。
けっこうな量を2人で食してしまった。満腹感で眠気が襲いそうだ。

・・・いやいや、夜はまだこれからだ。

アスランはこれからやってくる甘い夜にこっそり口元を緩ませた。
昨晩は1度きりで我慢したのだ。狭いベッドの中で甘えて寄ってきたカガリにもう1度しようとは言えず、
けっこう悶々としてしまったかもしれない。
だから、珍しくカガリのほうが先に起きてきたのだろう。
今夜は自分の我侭を通させてもらうつもりだ。

「あ、おまえ、次シャワーいってこいよ!」
「あぁ」
カガリが交代でシャワーを使っていたのを思い出したのか、アスランにシャワーを浴びるよう促す。
アスランが、もう1度今度はいっしょに入ろうと声をかける前に、なぜかすでにカガリは赤かった。
アスランがシャワーを浴びて出てきた後のことを想像したのだろうか?
それならばと、アスランはシャワールームに入る前に彼女が先ほどしたように彼女の耳元へ唇を寄せた。
「いっしょに入るのは・・・終わってから、な?綺麗にしてあげるから」
「!!」
し返しのお返し、だ。
思ったとおりに、カガリの顔はこれでもかというほどに赤くなる。
先ほどの自分もこんな感じだったと思えば恥ずかしいが、アスランはそんなカガリを見て笑ってしまった。

 

暫くしてからアスランがシャワールームから出てくる。
カガリはきっと夜景に魅入ってるのだろうと思いながら出てくれば、窓際にカガリは居なかった。
「?」
一体どこに居るのだろうと思い二人で食事した部屋へ行けば、カガリがワインを手にそれをじっと見ている。
「カガリ?」
「わ!!・・・っと!」
急に声がかけられたのが余程びっくりしたのだろう。
大きく身体を飛びあがらせて、ワインを落としそうになって慌てていた。
その慌てぶりにアスランはどうしたのだろうと思う。
もしかしたら・・・カガリがじっと見ていたこれ、ワインに興味があるのだろうか?
「・・・・飲んでみるか?」
アスランは問い掛けてみる。
カガリがワインを持ったまま動きを止めた。
「・・・・でも、私19だから・・・」
「俺も19だよ?」
「・・・・・おまえはコーディネーターだもん」
「今時19で飲んでないやつっていないって」
「そりゃそうだけど・・・」
もごもごと言葉がはっきりしない彼女。どうやらやはり本心では飲みたいらしい。
アスランは優しく微笑んでカガリに言う。
「大丈夫。ここはプラントだ。・・・誰も君を咎めやしないぞ?」
「で、でも・・・」
「いっしょに飲もう?な、カガリ・・・」
とにかく優しく、とにかく甘く、カガリにかける言葉は全てそうだが、さらに「特別」をこめて言ってあげた。
カガリはうっすら赤く頬を染め、こくりと1度頷く。
それを見たアスランは、早速器用にワインのコルクを開け、用意されていたグラスにワインを注ぐ。
赤い色をした液体がグラスに注がれる瞬間が綺麗で、カガリはじっとそれを見ていた。
ソファーに座ってそれぞれのグラスを持つと、アスランが小さく微笑んでカガリに言う。
「乾杯」
「あ、か、乾杯!」
カチンとグラスを鳴らした。
まずアスランが一口含む。
最初は香りをかがなくていいのかと、カガリもグラスに口をつけ一気に飲み干した。
「え?か、カガリ・・・?」
あまりの勢いのよさに、それはもうワインを飲むんじゃなく風呂上りの牛乳に見えアスランは戸惑う。
初めて酒を飲むというのにこんなに一気に喉に通して大丈夫だろうかと心配にもなった。
けれどアスランの心配が無駄になるかのように、カガリは元気よく声をあげた。
「・・・美味しいなっ!!」
おかわりだと言ってワインボトルに手をつけ自分のグラスにまたワインを注いだ。
その注ぎっぷりが豪快でもうこれがワインに見えなくなったアスランも、
カガリが美味しいといい気に入ってくれたことが嬉しくてもう1度自分もグラスに口をつけた。
これをプレゼントしてくれたホテルに感謝して、飲む。
アスランには少し甘いくらいだったが、この飲みやすさと合わせてカガリにはちょうどいいみたいだ。

・・・カガリが喜んでくれているなら、これと同じもの探してみようかな。

アスランはそう思い1人微笑んでいたが、この後ワインを飲んだことを後悔することになるなど思ってもみなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふふ〜〜あーすーらーんっっ」

アスランは困惑していた、この状況に。愛する妻に押し倒されているのだ。
一体、何がどうしてこうなったのか。いや、原因はわかりきっている。
ワインだ。
暫くの間「美味しい」とだけ言って4杯目をグラスに注ぎ、その1滴まで喉に通した後、
さすがに飲みすぎだと思いカガリを止めに入ったアスランは、今押し倒されてしまったのだ。

「か、か、カガリ・・・?」
「あーすーらーんー、おいしーぞぉー」

カガリの目がトロンとしてるのに、今更気付いた。

「あすらんはぁー、おいしいぞぉ〜」

もはや何を言っているのかわからない。
押し倒された時に少しだけはだけたバスローブから、カガリの豊かな胸がふるりと揺れて見える。
その光景にアスランはごくりと唾を飲みこんだ。

「おいしーわいんはいかがですかぁ?」
「・・・か、カガリ・・・っ。何言ってるかわからないぞ・・・!」
「あぁ!?」
「ひ!!」
青筋がたつくらいの表情でアスランは睨みつけられた。
いつもの可愛いちっちゃな、あの怒った時の「もうっ、アスランのバカっ」という睨み方とは全然違う。
「わたしのぉさけがーのめないってーか!!」
「ち、違・・・!お、落ちつけ!」
「おちついてぇるぅぅ!!」

押し倒されたままで、カガリの柔らかな太ももがアスランの足をまたいで挟んでいる。
その柔らかさと怒鳴るたびに揺れる膨らみのせいで、アスランは泣きたい気分に襲われる。
生殺しとはこういうことを言うのだろうか。
けれどもアスランが可愛いカガリを前に我慢なんてできるはずもなく、
形勢を逆転させるためにうまく自分の身体を起きあがらせようとしたその時だった。

「・・・あ・・すらんは・・・わたしが・・きらい・・・なんだ・・・っ」
「え!?」

自分の頬に、何かが零れてきた。それはカガリの涙だと気づくのに時間はかからなかった。
カガリが泣いているのだ。

「カ、カガリ・・・!?」
「う・・・ひっ・・く・・・」

ぽろぽろと、涙を零していく。
ついさっきまでアスランに対して怒鳴り声をあげていた彼女とは別人だ。
赤くなった彼女の綺麗な瞳からはどんどん涙が溢れていく。
アスランは、その涙を、押し倒されたままそっと右手で拭った。

「・・・・俺が、君を嫌いになるはずないだろう・・・?」
「・・・・う・・だ、・・・って・・・!ひっく!」

しゃくりあげ始めたカガリ。落ちつかせるためにもアスランは優しい言葉を選ぶ。
その間も胸はふるふる揺れて、アスランこそが泣きたい気持ちだ。
けれど、今カガリを泣かせたままでいるのは男として絶対に許しがたい。
愛する人が泣いているのだ。
その涙が乾くまで男としての欲望は捨てようと心に決めて、もう1度その涙を拭う。

「・・・カガリ・・・・好きだよ・・・」
「あ・・・すら・・・ひっく・・・」

カガリがアスランの胸になだれこむようにその体重をかけた。
アスランは受け止めると、そっとカガリの身体と自分の身体を起こし泣いているカガリの顔を覗きこんだ。
彼女のバスローブの前はもう意味をなさないくらいにはだけていて、華奢な肩と胸が見えている。
また唾を飲みこみながら、すぐにでも襲いたい気持ちを抑え、アスランは最後の理性でカガリに言った。

「・・・・・愛してる・・・」
「・・・・・あ・・・すら・・・」

甘い、甘い雰囲気だった。
アスランはゆっくりとカガリの唇に自分のそれを重ねようと近づけていく。

あぁ・・・これでやっと・・・。

予定より色々と狂ってしまったこともあったが、これでようやく甘い時間が始まるのだ。
2人であの広いベッドで思う存分愛し合うのだ。いやここでもいい。もうどこでもいい。
唇が近づいていく。もう少し、もう少しで重なろうとした。が。

「・・・・・・アスランのかお、まっかっかーーー!!」

「へ・・・?」

唇を重ね合わせるという動きがぴたりと止まり、薄く閉じかけだった瞳を見開いた。

「あははははははは!!!まっか〜〜〜!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・」

ソファーをばんばん叩いてカガリが爆笑している。
怒り・泣きの次は笑いか・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あっはははは〜〜!!ひーー!おなかいたーーい!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アスランは思いきり後悔した。
カガリが笑い終えても、疲れて眠ってしまい、2人きりの甘い甘い交わりもお預けとなるはず。
盛大に思いきりため息をついた。なんてことだ。
テーブルに置いてあるワインをちらりと見て、怒りがわいてくる。
ワインに怒ってもしょうがないのだが・・・むしろ怒りたいのはこれをすすめた自分だろう。
「俺・・・バカだ・・・」
「え?アスラン、バカなのかー!バカバカー!?」
「・・・・・・・・・・・」
小さく呟いた言葉にもカガリはまるでおもちゃを見つけた子供のように反応してはしゃぐ。
今度こそ本気で泣きたい。

とりあえずはだけた胸元が今は目に毒だと、アスランはカガリのバスローブに手を伸ばした。
しっかり前を羽織らせるつもりだったのだ。
けれど、アスランがその行動に出る前に、カガリが先に動く。

「・・・・え?」

アスランは何かに押し倒され天井を仰いだ。
カガリがまたアスランを押し倒したのだ。
一瞬、何が起こったのかわからずにいたが、カガリが上から自分の瞳を覗きこんでいるのに気付いて、
先ほどのようにまた自分がカガリの下にいることに気付いたのだ。

「か、カガリ・・・もう」
「・・・・しぃ。だまって?」

大声で笑っていた彼女はもういない。
そこにいたのは、赤く蒸気させた頬のまま微笑む彼女だ。
その、あまりにも色のある姿に、アスランは目が釘付けになる。そうしてまたしても唾を飲みこんだ。
上半身は、はだけたバスローブのせいで胸が丸見えで、やわらかですらりとした彼女の足がアスランの足を捉えている。
期待を裏切られるのはイヤだ。けれど思い切り期待したい。
アスランの頭の中に2つの思いが駆け巡る。
先ほど泣いていたせいか、カガリの瞳が潤んでいる。それがもう、どうしようもなく可愛い。

「か・・・が・・り・・・」
「・・・・・・アスラン・・・しよ?」
「・・・!」

柔らかな感触だけでもうアスランは眩暈がしていたのに、カガリのその一言のせいでこの場で倒れこみたいくらいだ。

「したいよぅ・・・」

さらにカガリは誘惑を続ける。
そう言ってアスランの唇に自分の唇を重ね合わせてきた。
「・・・・・・ん・・っ」
いつもは、彼女からのキスといえば、照れてちょっと唇を合わせるだけの可愛いものなのに、
今彼女が贈ってくれるキスは、いつもアスランから贈るような、深いものだった。
カガリの舌が、アスランの唇をわってその舌を捕らえて絡み合わせてくる。
ぴたりと、自分の身体に重ね合わせたカガリの胸の柔らかさと、絡み合う舌のあまりの気持ち良さに、アスランはもう限界だった。

「・・・・・アスラン、だいすき・・・あい・・してる・・・」
「俺も・・・・愛してるよ・・・」

 

 

甘い、夫婦の時間はこれからだったのだ。

 

 

 

 

 

 

EMD?

はい!中途半端な気もしますが、これで終わりです!!(笑)
最後に裏を描きます。
それで新婚旅行は終わり〜!
長い間お付き合いありがとうございました!
ほんとにツッコミどころ満載だよ!もういいよ!!(笑)
いちゃラブばんざーい!

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