「・・・・・・・あの子たちに嫌われたかもしれない・・・」

 

相談したいことがある、と至極真剣な表情でカガリに呼び出されたアスランは、
今、彼女の言った言葉を理解することはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

Be  Happy

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・そんな、まさか」
「いや・・・!だって・・・!」

やっとのことで振り絞った否定の言葉も、否定される。

3歳の双子の息子たちは、誰に似たのかカガリが大好きで、寝ても覚めてもカガリのことばかり、だ。
父親の存在は忘れられてるんじゃないかと思ってしまうほどに。
そんな2人が彼女を嫌いになるだなんて、アスランからしてみれば絶対にありえない事。
この家族の中に、カガリを嫌いになれる人間なんて1人も居やしない。

 

「どうしよう・・・!アスラン・・・!」
「カガリ、落ちつけ」

 

カガリの言い分はこうだ。
1週間前の休日、カガリは子供たちにケーキを作ってとせがまれた。
可愛い息子のお願いとあってカガリはキッチンに立ったわけだが、
ケーキ作りは生まれて初めてのことで、それはそれは甘いだけのケーキができあがってしまったらしい。

「甘いのなら喜んだんじゃないのか?」
「ただすごく甘いだけなんだ!美味しくなくて・・・!」

だから失望されたのかもしれない、と必死に泣きそうな顔で説明するカガリ。
アスランはため息をつくしかない。

 

カガリは決して料理が下手なわけではない。
アスハ邸には専属コックが何人かいて、平日は忙しいカガリのために美味しい料理を提供してくれるが
休日はカガリが広いキッチンに立って、家族にそれ以上に美味しい料理を作ってくれる。

子供の心はわからないけれど、1度や2度の料理の失敗で嫌われるような親子関係ではないはずだ。
カガリだってちゃんとわかってるはずなのに、その動揺は凄まじい。

それもそうかもしれない。
アスランから見ても、ここ数日の双子の様子がおかしいことだけはわかっていた。
カガリの顔を見るなり逃げたり、こそこそ内緒話をしていたり・・・

「どうしよう・・・!こんなこと初めてで・・・!」
「あ!反抗期なのかもしれないよ」
「バカ!私は真剣なんだ!」

 

本気で怒られてしまって、アスランは苦笑いを浮かべた。

 

実はわかっているのだ。
彼女が息子たちに避けられている理由は。
けれど、頼りになる父親としては、何としてもこの秘密は死守せねばならない。

「まぁ、とりあえず、俺が話聞いてみるから」
「・・・・・・・・・・・うん・・・・」

我が家の華が輝きを失ってしまうのは悲しい
少しでも元気がでるようにと、アスランは瞼にキスをして部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

向かったのは、子供部屋。
アスハ邸の一部は家族にしか入れない家のような仕組みになっていて、
そこの一室に双子の部屋がある。

今ごろもきっと、2人は部屋でこそこそしているのだろう。

 

双子の部屋に着くと、アスランは扉をノックした。


「あー・・・・2人とも、居るか?」
「いるよー」

ドアから聞こえてくるのは幼い我が子の声。

「開けるぞ」
「や!だめ!・・・・・・・・・・かあさん、いる?」
「・・・・・・・・・居ないから」
「じゃ、いいよ!」

部屋の中に入る許しを得たアスランはゆっくりとドアを開けてその中へ入っていった。


「何、してるんだ?」
聞くのもどうかと思った。
見ればわかる。

「ははうえのプレゼントつくってるのはひみつなのー!」
「とうさんにもまだひみつ!」
「・・・・・・・・・・・そうか」

思いきり笑い出したいのを堪えてみせた。
子供たちは真剣なのだ。・・・・・自分たちでばらしてることも気付かずに。
子供部屋に置いてあるカレンダーの18日にクレヨンで赤い丸がされてある。
2人が一回ずつ丸したのか、それは二重になっていた。

 

床に座りこんでいる2人の手元にあるのは紙と折り紙とノリ。
ちぎり絵で、カガリを描いているらしい。
黄色の折り紙がたくさんあるのに微笑んだ。
カガリの髪の色だ、きっと。
アスランが好きで、子供たちも大好きな色。
やっぱりこの子たちは自分に似たと、アスランは2人に向かって微笑んだ。

 

今、子供たちの秘密をばらすわけにはいかないけれど、
あんなに悩んでいたカガリのために、安心させる要素を1つは持っていってあげたい。

子供たちの頭をぽんと叩くと、カガリが気にしていた事を尋ねてみた。

「この間、カガリがケーキつくってくれた?」
「うん!たべたよ!ケーキ!」
「美味しかったか?」
「うん!」
「おいしかったね!」
「おいしかった!」

 

双子の回答は、アスランが思っていたのと寸分もくるいはなかった。
この答えで、カガリが少しでも元気になってくれればいい。
子供たちのしていることも、親としては応援して成功させてあげたい。

 

けれども、

 

「カガリを、あんまり泣かすなよ」

 

これは男としての忠告。

なんてかっこいいことを言ったりしても、本当は、
カガリの心を1人占めしてる二人への、ちょっとしたヤキモチかもしれない。

 

 

 

とにもかくにも、5月18日まであと3日。


愛する家族の、一輪の華の、生まれた日まであと3日。

 

 

 

 

 

NEXT

 

BACK

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送