10月29日、敬愛する父親の誕生日。


その日に向けて家族の愛を終結させてお祝いのはずが、まさかこんなことになるなんて・・・
誰も予想なんてしていなかっただろう。

 

 

 

 

 

KISS   KISS 

 

 

 

兄弟喧嘩というものは成長過程には必要なものだと誰かが言っていた。
それが本当かどうかなんて二人にはわからない。
ただ相手に負けたくないという気持ちが先行してしまっていて、本来の目的さえも忘れそうだ。


全ての始まりはわずか1日前。そう、昨日の出来事。
近づいてきたアスランの誕生日は最愛の妻であるカガリはもちろんのこと、14歳になる双子の息子たちにも楽しみで嬉しいことだった。
お祝いはどうしようと今にもスキップを踏み踊りだしそうな母親を見ていた長男がこう言った。
「・・・父さんのこと1番わかってるの母さんだもんなー」
「うん」
それに次男も頷く。

毎年毎年、子供達は父親にささやかなプレゼントを贈ってきた。
二人で知恵をふり絞って喜んでもらえるものを考えるのだが、年を重ねるたびに選択肢は減っていく。
去年は考えに煮詰まりすぎて肩叩き券だなんていい年してあまりにも幼稚なものを贈ってしまった。
それでも父親は喜んでそれを受けとってくれて・・・一応は成功に終わったのだが、
けれど、「もったいないから使えないな〜」の言葉通り、あまりにものんびりしていたせいもあり、
長男が券を奪って無理やり肩叩きを始めていたのだからもはやこれがプレゼントなのかどうかもわからなくなっていた。
そんな去年を思い出し、二人はため息をつく。
別にプレゼントなんて贈らなくても「おめでとう」の一言だけで心からの笑顔を見せてくれるだろう。
でも毎年贈ってきていたのに急にプレゼントがなくなるのも、贈る側としても何だか変な気分で・・・
だから今年は何にしよう・・・と、二人で頭を抱え込んでいたのだ。


「母上に・・・聞いてみる?」
最後の手段を使ってみようと、ライルは提案した。
「・・・いや!ダメだ!多分、『アスランなら何でも嬉しいぞ〜!』・・・で終わる!」
「・・・・・・うん」
母親の真似をしながらきっぱりとその考えを一蹴したウィルに、ライルはまた頷く。
父親の愛する母親は、キス1つが最高の贈り物になってしまうのだからプレゼントに関して悩まなくてもいいのだろう。


もうお手上げ状態だ。
二人そろえば少しは妙案も浮かぶかと思ったのに・・・。
「・・・・・母さんに聞くのは無理だとして・・・何か・・・いい案・・・」
「・・・・・・何も思い浮かばないよ・・・」
「う〜ん・・・おまえよりは俺のほうが何か思いつくんじゃないかと思うぞ」
「なんで?どうして・・・?」

兄がさらりと言った言葉がひっかかる。ライルは素直に尋ねてみた。
すると

「だって、母さんの次に俺が父さんのことわかってるもん」

と、さも当たり前かのように言うではないか。
けれど今の言葉は弟にしてみればあまりにも聞き捨てならない。

「ちょっと待ってよ・・・!」
「ん?」
「なんで兄さんのほうが父上のことわかるって言うの!」
「だってそうだろ?」

ウィルの返答は余程自信があるのだろう。
珍しく熱くなる弟とは正反対に驚くほど静かに冷静だ。
それが余計に火に油を注ぐようにライルの機嫌に障る。

「兄さんなんていつも宿題後回しで父上に叱られるばかりなのに!」
「そ、それとこれとは関係ないだろっ」
「関係あるっ!迷惑ばっかりかけて・・・!」
「なにおう!!関係なんてないってば!」

「絶対にある!」

「ない!」

「ある!」

「ない!」

「・・・・・・・っ」

「・・・・・・・っ」


互いに互いを睨みつける。
こうなった以上、どちらも頑固なせいかひく事はない。それは父親と母親の血を受け継いでるから仕方のないことだ。
それに、兄弟喧嘩なんて滅多にないものだからこそひく事はできないのだ。

「・・・・・こうなったら、どっちが父上を喜ばせられるか・・・勝負だね・・・」

大きく息を吸いこんだライルが、今までの熱を冷やすかのように静かに言い放った。
「そうだな・・・・」
その静かな勝負の申し出を兄は受け止める。

「ぜっっっったい負けないからね!!」

「俺が勝つッッッ!!!」

もはや父親に喜んでもらおうは二の次で、もうすぐやってくるアスランの今年の誕生日は
二人の意地の延長線上の戦いになってしまった。
鼻息を荒くしてそっぽを向いた二人を見て・・・


「あいつら仲いいよなぁ〜!」


カガリの暢気な一言だけが部屋を明るくさせていた。

 

 

 

 

 

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