「それじゃ、シーン1!カガリ様帰宅シーン撮りますね〜!」

 

 

 

 

 

 

 

愛は真夏の.......

 

 

 

 

今日の母さんは、マーナがきゅうきょ手配した赤のドレス。
マーナいわく、「テーマは2児の母親に見えない麗しの姫君です!」らしい。

背中が広くあいていて、しっく、なドレスは、いつも可愛い母さんによく似合っている。
そのドレスを着た母さんがオレたちの前に現れた瞬間、崩れた父さんの端整な顔。
ちなみに、弟よ・・・おまえもか。

「母上、とってもキレイです」
「ん。ありがと!」
「えへへ」

父さんより先に今日は弟が先制攻撃をしてみせた。
お礼を言われてライルは頬を染めて嬉しそうに微笑み返す。
叶わぬ恋だというのに・・・・。
なんせ相手にはすごく愛してる旦那がいて、しかも2人も子供がいるのだから。

・・・・・・まぁ、それがオレたちだけど。

 

それにしても、意外にも父さんが大人しい。
撮影前に母さんの機嫌を損ねたくないのだろうか。
今の今まで顔を崩して微笑んでいるだけだった父さんが急に口をひらいた。

「カガリ・・・・そのドレスで今夜、ね?」
「ばっ!バカッ!!子供たちの前だぞ・・・ッ」
「照れない照れない」
「もうバカ!」

あ、またバカって言われてる。平和だなぁ・・・。
でもそのドレスで?今夜?
ダンスでも踊りたいんだろうか。
う〜ん。父さんの事だからきっとそうなんだろうなぁ。
でもどうしてオレたちがそばに居たらダメなんだろ。母さんも父さんを1人占めしたいのかな?
弟よ、やっぱりおまえに勝ち目はないぞ。

 

 


そんなことを時折考えながら・・・・
父さんと母さんがノロケてるあいだに、オレは昨日届いた台本というものをチェックした。

基本的に普段のアスハ家を撮りたいらしくて、セリフとかは指定されてない。
けれどライルはすでに昨日全て読み終えて頭の中にいれたらしい。
その台本をぺらりとめくって中身を見た。
まず、シーンは母さんが閣議から帰ってきたところから始まる。

 

・・・・・・・・・・・・母さんは、閣議を背中があいたドレスなんかでは行かないぞ・・・。

 

普段でさえめったにドレスは着てくれないのに、
それどころか畑いじりをしてる時はジャージだってことを国民に伝えてあげるべきだろうか?
それともそれは永遠の秘密にして、国民の母さんへのイメージを崩さないように努めてあげるべきなのかな?
わかんないなぁ〜。・・・・・ま、いっか。

 

ドラマはそのあと、帰ってきた母さんが父さんに軽いキスをされる。

軽い、はフィクション。
キスはノンフィクション。

キスをされた母さんは照れてお返しに父さんにキスをする。
う〜ん。この場合、そばにオレたちがいるかどうかが鍵だと思うぞ。
オレたちがいればバカって言って平手打ち。オレたちがいなければキスのお返しが互いに延々と続く。
母さんは恥ずかしがりやなのだ。そこも可愛いんだけど。

で、その台本は、母さんはドレスのまま白フリルエプロンをつけて夕食の準備を始めて・・・・・・って、
どこの家庭がドレスに白フリルエプロンつけて夕食を準備するんだろうか。
それともやっぱりアスハ家のイメージがこんななのかな?
実際はTシャツジーパン、赤のエプロンだぞ。
ちなみにオレとライルもおそろいの赤エプロンをマーナに作ってもらったぞ!


そのまま母さん手作りの夕食をとった後は、家族全員でお風呂・・・・・
『』してある。『撮影はしません。テロップを流すだけですのでご安心を』と書かれてある。
あたりまえだ!
母さんの裸を見せられるわけがない!
第一、最近4人で入った記憶なんてないぞ。

父さんがこの間オレ達の前で母さんを風呂に誘ったら、平手とともに断られて可哀想だなぁと思ってたけど・・・
オレが夜中に起きてしまって汗をかいてたから風呂場にいくと、2人が居た。
見なかったことにしてあげてオレはまたベッドに戻ったし。
でもどうせなら、フウフの寝室にあるシャワールーム使ってほしかったなぁ。

 

おっと・・・・台本、台本。
なになに・・・・・・・?
そしてお風呂のあとは家族団欒。うん、これは合ってるな。
最後に親子そろって川の字で寝る・・・・・。
ん〜?これは微妙・・・・・。
たまーーーにいっしょに寝るけど、1、2年くらい前から父さんに言われ始めたことがある。
「夫婦は2人きりで眠ってこそ幸せなんだ・・・!」
あまりに真剣に教えられたから、フウフエンマンであってほしいオレたちはそれを忠実に守ってる。

 


読み終えた台本をぱたりと閉じた。
漢字にはひらがなが打ってあったけど、オレ、漢字ほとんど読めるぞ。
負けず嫌いなとこは母さんに・・・父さんにもだけど似て、母さんが大好きなとこは父さんに似た。
まぁ、これはライルには負けるけどさ。オレ、どっちかってゆうと母さん似だし。
あ、でもオレ、父さんにときめかなくてよかった。
うん、それはすごくよかった。


 

「それじゃ、シーン1!カガリ様帰宅シーン撮りますね〜!」

なんとかさん、の声が聞こえてきた。
撮影の時間になったらしい。
今日は撮影のため色んな人が屋敷にきてる。

母さんが緊張のせいで動きがおかしい。
父さんがそんな母さんの肩を叩いた。
「リラックスリラックス」
「お、おう!まかせとけ!」
どんなに可愛いキレイな姿でも、母さんは勇ましい。
そんな母さんも、結局優しくて強くてかっこいい父さんも大好きだ。

 

ドラマは、母さんが屋敷に帰ってきたところから始まる。
軽いキスで出向かえる夫。それが最初のシーン。

 

 


 

 

・・・・・・・けれど軽いキスが、深いキスになるのなんて・・・・・・・

少なくともオレと弟だけは間違いなく予想してたことだったろう。

 

 

 

 

 

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