結婚10年目というのは、とても大切な日だということを、子供のオレでもちゃんと理解している。
愛は真夏の......
「オーブ国民もみな祝福してますので!ぜひ!」
なんだかテンションが高い男の人が、目をきらきら輝かせて言った、
それは3日前のことだ。
なんとかテレビ局のなんとかさん、って人がアスハ邸にやってきた。
半年近く前から単独取材をお願いしますとうちによくやってきてたんだけど、
それをマーナが上手くかわしていた。
けれどそれでもメゲズに迷惑ではない程度に頻繁にやってくるその男の人に、
母さんが笑いながら取材を引きうけたんだ。
その人の目的は、これだった。
「「・・・・・・・結婚10周年、特別記念番組・・・」」
いつもはオレとライルの声が重なることを不思議だと言う父さんと母さんだけれど、
今日はオレたちじゃなくて2人の声がキレイに重なった。
そう、もうすぐ父さんと母さんが結婚して10年なんだ。
いろんなテレビ局が特集を組むんだろう。オーブのみんな、母さんのおっかけファンみたいなものだし・・・。
・・・・・っと!これを言うと母さんにすごく怒られるんだ。
でもなんでわざわざ許可をとりにきたのだろうと思っていたら、
その、なんとかさん、は手で大げさに表現しながら説明しはじめた。
どうやらその番組内で、アスハ家の日常を流したいらしい。
つまりは撮影したい、というのだ。
「オーブ国民もみな祝福してますので!ぜひ!」
「・・・・・・あ・・・・いや・・・・気持ちは嬉しいのだが、私たちは芸能人じゃないので・・・」
こういうの、テイヨクコトワル、って言うのかな。
母さんは隣に座ってる父さんと時折視線をあわせてそのまま目で会話していた。
オレもなんとなーくわかる。
こういう時の父さんと母さんは、テイヨクコトワリタイ、のだ。
「国民全員がまってます!カガリ様とアスラン様の幸せそうなお姿を・・・!」
「は、はぁ・・・・」
「私はカガリ様がアスラン様と結婚される時、本当に嬉しかったんですよ・・・!
ナチュラルとコーディネーターの愛の象徴!オーブの女神とプラントの若獅子!まさにこれこそがドラマ!!」
「は、はぁ・・・・・・・」
興奮気味に話すなんとかさんと、照れたような困ったような顔の父さんと母さん。
ちょっとだけおもしろそうだなって思ったオレだけど、2人が反対じゃ無理かなって思った時、
お茶を持ってきたマーナが声をあげた。
「まぁまぁまぁまぁ!ステキですわ!」
「「は?」」
またしても父さんと母さんの声が重なる。
「ぜひ!ぜひ!出演いたしますわ!」
「本当ですか・・・!!」!!」
「マ、マーナ・・・!!」
母さんがマーナを止めにはいったけれど、時すでにおそし。
「ありがとうございますっ!!」
「いえいえいえいえいえ!カガリ様を美しく撮ってくださいましね!」
「それはもちろんですっ!!」
なんとかさん、とマーナはがっちり手を握りあっていた。
父さんと母さんは口をあんぐりあけて呆けてる。
その顔があんまりにもそっくりだったから、オレは今度は「ニタモノフウフ」という言葉を思い出した。
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