今日はとても天気がよかった。
涼しく暖かい風が気持ち良くて窓を開ける。
その窓際の椅子に腰掛けて最近読みふけっている愛読書を広げると、
外から聞こえる、子供達とカガリのはしゃぐ声に心奪われてしまった。

まるでそう遠くない未来の光景を、今体感しているようで・・・

甘く幸せな想像に浸りながら、読みかけのページに視線を合わすと、
先程まで遠くから聞こえていた愛しい声が、耳元で響いた。

「アスランッ!!」

ぱっと窓の外を見ると、眩しいその姿が、目に入る。
瞳をきらきらさせて、

「本ばっかり読んでないで!ほら、外にでるぞっ!」

と言いながら、開いた窓から手を伸ばした。

続きが気になって仕方なかったアスランのその本も、
彼女の前ではただの紙のかたまりとなってしまった。

 

 

 

GAME 3

 

 

 


愛しいその声で外にでたアスランは、カガリの周りに子供たちがたくさん居るのを見て微笑んでしまった。
この少女の誰からでも好かれる性格は、やはり純粋な子供たちが一番よくわかっているのかもしれない。


「・・・で、今日は何して遊んでいるんだ?」
「花いちもんめ!」
「・・・花・・・・?」
「おまえ・・・ホントに、遊びってものを知らないな」

口ではちょっとバカにしながらも、カガリはこういう時いつも楽しそうだった。
自分からアスランに何かを教えることなんて滅多にないから、楽しくて仕方ないのだ。

・・・・・でもカガリの説明ってすごくアバウトで困るんだけど・・・・

愛するが故に、口が裂けても言えない。
というよりも、楽しそうなカガリを見るのが楽しい、だけなのかもしれない。
こんな日常の些細なことで、どこまでも愛しい存在だと思い知らされる。

「わかったか?」
「・・・・・まぁ、なんとか・・・」

カガリの説明はこうだ。
2チームに分かれて手をつないで向かい合う。
その後は、変なダンスをしながら歌い、相手チームで欲しい子を選択する。
選択が終わった後はまた、変なダンスをしながら歌い、じゃんけんをして勝ったほうが欲しい子をこちらのチームに引きこめる・・・というものだった。


・・・・・・・・・・・・・変なダンスってどんなダンスだよ?というより歌うのか!?

心の叫びはやっぱり言えなかった。

 

「よーし!じゃ、私とアスランチームで対戦だっ!」

カガリのその一言で、子供達がわぁっとはしゃぎだす。
ちょうど男の子と女の子の人数がいっしょだったので、男女別でチームは分けられた。

少しだけ・・・カガリと手を繋ぎたかったのだが、こんなとこでそんなことを言えば、カガリの鉄拳が飛んでくることは目に見えている・・・。

軽く誰にも気付かれないようにため息を吐くと、男の子の手をとった。

「よーし!アスランッ、負けないからなー!!」

女の子チームは実に華やかだった。
アスランから見れば、一番綺麗な華がいるのだから当然のことだけれども。

「俺だって負けないから」

いまいちまだゲームを理解してはいないものの、負けるのは嫌いだ。
こちらには仲間がいるし、その子たちにも喜んでもらいたい。

そしてアスランが理解していないままにゲームはスタートした。

「「勝ぁってうれしい花いちもんめー」」

急に両端の子供たちが手を引き前に動きだしたのを、少しこけそうになりながらついていく。

「「負けーてくやしい花いちもんめー」」

今度は後ろに下がった。
またもやこけそうになりながら同じように動く。

「「あの子が欲しい」」
「「あの子じゃわからん」」


・・・・・・・・なるほど。カガリの言っていた変なダンスってこれのことか・・・・・。
1人、心の中で納得する。


「「相談しよう」」
「「そーしよう!」」

そう声が一段と大きく響くと、それぞれのチームの子たちが、輪になって集まった。
アスランも慌ててその輪の中に入りこむ。

「ね、ミーナちゃんは?」
「ミーナちゃんかぁ・・・・・・」
「アスランおにいちゃんは?誰がいい?」

俺はカガリが・・・という言葉を押し隠し、俺もミーナでいいと思うよと言葉を紡ごうとする。
浮気している気分はこの際捨ててしまおう。
アスランが口を開きかけるその前に、輪の中の1人が声をあげた。

「おにいちゃんは、カガリちゃんだよねぇー!」

自慢気に言うその子に視線が集まる。
そしてその言葉に他の子供たちも、納得した顔。

「あ、そうだよね!!」
「仕方ないから、カガリちゃんにしてあげようよ」
「うん。おにいちゃんかわいそうだもんね」
「カガリちゃんがいなきゃ、いつもさびしそうだもん」
「ねー」

子供たちから次々と発せられる言葉に、アスランは顔を赤く染めて言葉を失った。

俺はいつもカガリが居ない時はそんな寂しそうな顔をしているのか!?
子供たちに同情されるほどに・・・!?

恥ずかしさでこの場から逃げ出したい気持ちを押さえて笑ってみせた。
・・・口の端がわずかに引きつってはいたが。

 

「「決ーまった!!」」

同じようにまた向かい合った。
まだ少し顔が赤いせいで・・・カガリを見ることはできなかった。

そして先程の変な・・・カガリいわくダンスが始まる。

「カガリちゃんがほしい!」
「リュウくんがほしい!」

呼ばれた子はぱっと前に出た。
恥ずかしさで直視することはできなかったが、ちらっとカガリを見てみれば同じように前に出てきている。

「負けないからな、リュウ!」


考えて見れば、ここでリュウが勝ってカガリがこちら側にくれば、うまくいけば・・・カガリと手を繋げるかもしれない。

 

・・・・・リュウ、がんばれ・・・!

 

アスランは心の中で小さな少年に祈りを捧げた。

「よしっっ!!私の勝ちっ!!」

カガリのその声に、女の子チームからは歓声があがる。
アスランは、心の中で、あくまで心の中で思いっきり残念な顔をしたが、
こちらを向いたリュウが悲しい・・・・・・というよりも、申し訳なさそうな顔をアスランに向けていたから、きっと顔にもでていたいに違いない。


「次は誰にする?」
「・・・・・・・カガリちゃんにしてあげようよ・・・」
「うん」

同情の目がこちらに向いた。
もうこうなってしまったら、本当に笑うしかない。

別の子でいいよ、と言えばいいのだが、今のアスランにそんな言葉は思いつかなかった。

 

 

 

 

 

 

「よしっ!!またまたまた私の勝ちー!!」

カガリのじゃんけんが強いのか、はたまた男が弱いのか。
カガリは勝ちつづけた。

そして

「・・・・アスラン1人、か」

気付けばアスランは1人でぽつんと立っていた。
最後の少年もまた、アスランに申し訳なさそうな顔をして相手チームにいく・・・
いや、アスランチームの子は全員、そんな顔で向こうへ行ったのだが。


「アスランを取り込めば、完全勝利だなッ」

嬉しそうにカガリがそう言った。

・・・・この勝負はどうやら、最後の一人まで取り込まなくてはいけないというルールが暗黙の了解であるらしい。
もしかしたら、夢中になったカガリがアスランに負けたくないというだけで続けてるのかもしれないが・・・

 


1人になったアスランは、苦笑する。
次は1人でダンスして、歌を歌わなければいけない。
そう歌を・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・歌ッ!?

 

 


自分にとって一番苦手といっていいほどの単語に頭痛がした。
ここで降参でもするべきか、と一瞬頭の中をそんな言葉がかすめたが、
これを無視して、相手チームの歌声が響き始めた。

「「勝って嬉しい花いちもんめー」
「・・・・・・・ま・・ま・・負けて悔しい花いちもんめ・・・」
「「あの子が欲しい」」
「・・・・・・・・・・・・・・・あの子じゃ・・・わからん・・・」
「「相談しよう」」
「・・・・・・・・・・・・そう・・しよう・・・・・」


今までは子供の声に紛れこませてほとんど歌ってなどいなかったのだが、
1人ではそういうわけにもいかない。

ぎりぎり相手に聞こえるほどの小さな声で、アスランは歌っていた。
向こう側では、カガリが笑いを堪えている姿が目に入る。

 


・・・・・絶対、勝つッッ

 


勝つためには、カガリを選ばないほうがいい。
違う子を選んで、こちら側に引きこんで、人数がそろったところで勝負にでればいい。
アスランの頭脳は高速回転で動き出す。
たしか一番じゃんけんの弱かった子は・・・・あの子だな・・・。

「「決ーまった!」」

カガリチームがこちらを向いた。
選ぶ相手は悩むこともなく1人だ。

「「アスランがほしい」」

元気な声が重なって耳に響く。
アスランも向き合って。声をだそうとする。

勝つためには、カガリを選ばないほうがいい。
じゃんけんの弱そうな子の名前を挙げようとした。

 

 

 

 


その時、偶然か、カガリと瞳があった。

 

 

 


向こう側にはたくさんの子供達。
そういえば女の子はカガリ以外まだじゃんけんをしていない。
子供の遊びに私情を挟むなんて。

カガリを選ばなければ勝てるんだ。

そう思うのに、その琥珀から視線を引き剥がすことができない。
見つめられているわけでもないのに、酔いしれる感覚が襲ってくる。

 

カガリを選ばなければ勝てるんだ・・・。

頭の片隅ではわかっているのに

 

 

 

いつだって俺は―――

 

 

 


 

 

 

「カガリが・・・・欲しい・・・・」

 

 

 

 

 


甘く、響かせた

 

 

 

 

 

それは、毎夜聴かせる愛の言葉にも近いのに
初めて口にした言葉のような気分にもさせる。

ただ、その琥珀を見つめ、甘く響かせた。

だからきっと、彼女は拒めない。

 

 

 

ちゃんと通じたらしくて、カガリの顔は真っ赤に染まっていった。
瞳を見開き、口を半開きにさせ、時が止まったかのように微動だにしない。

時が止まったカガリは、子供達のはしゃぐ声で目を覚ました。
1人の女の子に促されるままに前に出る。
それに合わせてアスランも前に出る。

向かいあうと、上目遣いに少し睨まれた気がした。
けれど、それさえも毎夜繰り返していること。

 

ここで負けるのはゲーム以前になぜだかすごく嫌だった。
負けず嫌いだ、とかそんなカンタンな理由なんかじゃない。

 

 

絶対勝ちたい

 

 

「・・・じゃんけん」

 

 

勝ちたい
祈るようにアスランは強く思った。
シャツの下にある隠れてる赤い石に祈りをそっと捧げる。

 

 

「ぽい」


 

 

怖さで両目をつぶってしまう。

 

あぁ・・・どうか、どうか。
ハウメア様・・・っ俺に勝たせてください・・・っ!!

 

そう最後に祈ると、右目からゆっくり開ける。
5本の指を先まで力強く広げてある自分の手がまず目に入った。
そして、左目を開けると、少し小さめの、握りこぶしが見える。

 

 


「・・・・・・・・・・・・・・・勝っ・・た・・」
「・・・・・・・・・・負けた・・・」

 

 

勝ったことが信じられなかった。
まるで全ての運を使い果たしたかのよう、だ。

ぼうっとする心と身体の中でアスランは叫んだ。


ハウメア様ッ
ありがとうございます・・・・ッッ!!


身体中がふわふわと浮いている気分だ。
たかがゲームに。
されどゲームに・・・・・

 

 

 

 

 

「「「おっめでとぉ〜〜〜〜!!!」」」

子供達の声が2人の耳に大きく響く。
そして2人とも我に返った。


見ればカガリチームの女の子たちまで拍手をしながら喜んでいる。

してやられた。

まるでこのゲームは、自分達が子供達のために、ではなく、
子供たちから2人のために贈られたかのようだ。


「・・・・・・ありがとう・・ッ」

なぜか自然にそんな言葉がでてしまって、子供達の拍手はさらに大きくなって、
カガリからはまた睨まれる。

でも、そんなことさえ気にならず彼女が可愛くて仕方なかったアスランは、
子供達の前でカガリを抱きしめ、恥ずかしがり屋な彼女の鉄拳をくらってしまった。

 

 

 


END

 


花いちもんめってこんな感じでしたよね?
これもまた微妙にわからないのに手をつける・・・(笑)
このお話は別Ver3.5があります。設定的には全く同じです。
3.5は同時進行で考えて後からできたものです。どちらかを載せ様と思ったんですが、
こういう展開も面白いかなぁと思ったので載せちゃいます。
後から作ったため、最初の文が相変らず適当ですが・・・(笑)

 

GAME3.5

 

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