日が暮れ始めた頃、俺は冷蔵庫にあったもので夕食を作り、
食事を終えた後は、これからのことについて話した。

 

 

今週末にカガリは荷物をまとめてこちらの家にやってくることにし、
入籍も、その日にしようと、2人で決めた。
結婚式は・・・2人とも家族はすでにいないので、二人だけでひっそり行うことにした。
彼女には双子の弟がいるらしいんだが、
幼い頃離れ離れになってから連絡がとれないというのも以前聞いたことがあった。
だからあまり弟のことを聞くのも止めておいた。

 

 

2人で将来の話をしている間、
時折、贈った指輪を眺めては嬉しそうに微笑む彼女に、俺が口付けをしながら、
時間がすぎていった。

 


「カガリ・・・・・遅い時間だし・・・俺がうちまで送るよ」

 

もう就寝時間と言っていいほどに、真っ暗になった外を見て俺がそう言うと、
なぜかカガリは首を横に振った。

「でももう帰らないと・・・・」
「帰りたく・・ない・・・・・」
「カガリ・・・・・?」

俺の聞き間違いでなければ、今、帰りたくないと言ったカガリ。
彼女は、それがどういう意味かわかって言ってるのだろうか?
カガリのことだから・・・わかってないのかもしれない。

「カガリ・・・・・でも・・・」
「いいから!・・・・シャ、シャワー借りるぞ・・・!」
「あぁ・・・タオルは風呂場にあるから・・・」

そう言って、風呂場へと向かった彼女。
俺はあまりに突然のことでうまく思考回路が回らず、自分でも何を言ったのかよくわからない。

どのみち頑なに首を縦にはふってくれそうもないカガリを、俺は泊めることにした。

 

「まいったな・・・・・・」

彼女が泊まるということは、つまりは、その・・・・・あれだ。
はっきり言って、すごく嬉しい。
いつかこういう日がくることをずっと望んでいたのだし、
多分、いや絶対、彼女以上に嬉しい状況だ。
それに加えて、今日ずっと見せてくれていた可愛い表情に、もう夢中なのだ。
正直、本当に結ばれてしまいたい。

 

れど、結婚するまではできれば・・・・というのは、
今は亡き彼女の両親に対しても最低限の礼儀のような気がする。

古風すぎる考えなのだろうか?
でも、本当に彼女を大切にしたいのだ。

 

 

 


暫くすると、カガリが風呂場から出てきた。
俺は、もう必死の思いで何事もないように、ソファーに寝転がる。

 

 

「アスラン・・・・・あの・・・・・・・」
「カガリ、ベッド使っていいからね」
「・・・・・・・え」
「俺、ソファーで寝るから」
「・・・・・・・・・・・・・うん・・・」

俺が言ったことに、カガリは渋々頷いてくれた。

 

ちらりと横になりながら彼女の後姿を確認すると、
ちゃんと俺の部屋へと入っていってくれたようだ。

 

その姿に安心して、俺は眠りにつこうとした。

けれど、何故だか眠れなかった。

 

そして、先ほどのしょげてしまったようなカガリを思い出して、
彼女が気になってしまって・・・・・・・

俺はソファーから身体を起こし、自分の部屋へと向かった。

 

 


「・・・・・・・カガリ・・・もう、寝た?」

 

 

なるべく小さな声で彼女に問い掛ける。
寝ていたのなら、それで安心して俺も眠れると思ったのだ。
けれど、カガリは起きていた。

「・・・・・・・あ・・すらん・・・っ」
「え・・・?」

彼女の声が泣いているようだった。
俺は慌てて、カガリの傍へと寄る。

 

「カガリ・・・?どうしたんだ?」
「アスラン・・・・・・・わたし・・・・・・っ」
「カガリ?」

 

泣きじゃくるような彼女に一体何があったのだろうと、俺は慌ててしまった。
怖い夢を見たのだろうか?
やっぱり家まで送ってあげればよかったのだろうか?

 

けれど、彼女が口にした言葉は、俺の予想を越えていた。

 


「アスラ・・・・ンに、抱いて・・・もらおうって・・・思ったのに・・・っ」

「え!?」

「私・・・・・魅力・・ない・・・のか?」

 

 

涙で声が滲んでいた。
搾り出しているような彼女の言葉に、俺の胸は締め付けられる。

 

 

あぁ、またやってしまった。
いつも彼女を傷つけてしまうのだ。
今日は最高の日にするはずだったのに・・・・・・

 

俺は、懸命に言葉を捜す。
彼女を傷つけない言葉を、
彼女への伝え切れない愛の言葉を・・・・・・・

 


「君に魅力がないだなんて、・・・・そんなことない」
「じゃ・・・!」
「でも、君を大切にしたいんだ、本当に君を愛してるんだ」
「・・・・・・・あすら・・・ん」

 

俺の告白に、彼女が頬を染めた。
少しだけ安心してくれたみたいだ。
まだほんのわずかだけ寂しそうな彼女へ、俺は言った。

「でも一緒に寝ていい?」
「・・・・・・うん!」

やっと笑ってくれた彼女。
どうやら本当は抱いて欲しいというのは無理をしていたみたいだ。

緊張がほぐれた彼女の隣へ・・・俺はベッドにもぐりこむ。

 

 

甘い彼女の香りにくらりとして、ほんのわずかだけれど、
先ほど言ったことを後悔してしまったかもしれない。
けれど、やはり彼女への愛が大きくて、笑ってくれるだけでこの心は満たされていた。

 

 

 

 

「アスラン、腕枕、して・・・?」

 

「いいよ」

 

 

 

 

甘えてくる彼女が可愛くて、
俺は腕枕をしてあげたすぐ後にその額と頬にキスをした。

「今日は、これだけ、な?」
「うん、アスラン・・・・・」

 

暗闇でもわかる、彼女の頬が染まったことに。
俺は嬉しくて、幸せで・・・・・・だから1つだけ意地悪な言葉を彼女に言った。

 

「でも、君が俺の名前を名乗る日からは、覚悟しておいてくれよ?」
「・・・・・・・・う・・・うん・・・っ」

 

 

彼女はきっと、もっと真っ赤になったに違いない。

 

 

 


「アスラン・・・・・おやす・・み・・・」

「おやすみ、カガリ、愛してるよ・・・」

「ん・・・・・わた・・し・・・も・・・あいして・・・る・・・」

 

彼女の、眠る直前の言葉は、俺が飛びあがって喜びたいほどの嬉しい言葉だった。
そのすぐ後、彼女の寝息が聞こえてくる。
かわいい寝顔にキスをして・・・・・

 

俺は、やっぱり眠る事はできなかったけれど、
疲れるどころか彼女の温もりに安らぎを与えてもらった。

 

 

 

 


不器用な俺と、君。
この日を、俺は一生忘れることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―あとがき―

やっとアスランがカガリにプロポーズです・・・!
書いてて泣けてきました(笑)。
なんせ私は彼が片想いの頃から応援していたのですから・・・!
カガリに怒られてもちょっと嫌われても・・・懸命な彼を見てきたのですから・・・!(笑)
不器用なアスカガ万歳!

SIMをプレイしたことある方はご存知だと思われますが、
プロポーズが成功したら即結婚なんですね。
でもそれじゃおもしろくないということで・・・
1週間ほど婚約期間をもうけてみました・・・って、
けっして、初夜を先延ばしにしたわけじゃありません!(笑)。
そしてプロポーズ裏ネタ・・・・。
実は3回目で成功したのです(笑)。

腕枕ベッドはたまらんスマッシュ様からお借りいたしました。
もうこのベッド、萌!!(笑)

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