その晩、カガリ姫はひたすらマウントポジション・クリンチにローブローを復習・復唱していました。
それはまるで高揚した気持ちを落ちつかせる呪文のようで効果があったのか、夜になる頃には幾分か落ちついていました。
しかし、執務を終えたアスラン王子を見つけるや否や動悸息切れ、
どうしようもなくなりその片腕をとり有無を言わせず2人の寝室へひっぱっていったのです。
「か、かがり!?」
「いいから、来い!」
怒っているのだろうか腕をとるその手の力は強く、王子は仕方なしに大人しく姫に連れられて行ったのです。
部屋の前にくるとカガリはアスランを乱暴に押し込めると、カガリ姫もその後に続いて部屋に入り後ろ手てドアの鍵を閉めました。
王子は押し込められた勢いでその場に倒れ込み彼女をを見上げます。
何かが起こる・・・そんな気はしましたが、アスラン王子はただただ子ひつじのように怯えながら事の顛末を見守っていたのでした。
しかし次の瞬間、王子は信じられない光景を目にしたのです。
「よし・・・・ヤルぞ!!!!!」
「へ?」
威勢良く宣言すると迷うことなくカガリ姫が自らの服を脱ぎ出したではないですか。
Tシャツをがばっと脱ぐと足元に落とし、上半身は色気のない下着姿になりました。
そのあまりに突然のできごとに、眼福・・ではなく驚愕したアスラン王子は、
これから起こること、そして今日彼女に何があったかをなんとなく察し慌ててカガリに駆けよります。
「ま、待て!!キラか、ラクスか!」
正解です。こんな入れ知恵をするのはこの二人以外にありません。
嬉しい事ですが、子供すぎる姫が愛し合う行為のことをどれだけ理解してるのかわからない以上、
ただ単に2人の挑発にのってしまい行おうとしているのではないかと思い、
彼女が脱いだシャツを拾い上げ彼女に覆いかぶせるようにしてその柔らかい身体を抱きしめながら隠しました。
「いいから・・・いいから!無理やりになんて、そんなこと思ってないから!」
「無理やりじゃない!!!!!」
カガリの声が静かな室内に響きました。
キンとした空気を貫くような、甲高い声に、アスラン王子も言葉を失います。
その瞬間、抱きしめた胸の中のカガリ姫からすすり泣く声が聞こえてきたのです。
「だ、だって、アスラン、私と話、してくれないじゃないか・・・っ、嫌いに・・・なって・・・う・・・っうぅ」
あぁ、なんていうことでしょう。
アスラン王子はけっして彼女を嫌いになったわけではありません。そんなことあるはずがないのです。
「私、アスランといっしょにいないと苦しいよ!!」
「カガリ・・・っ」
嘘がつけない彼女の、まっすぐな告白にアスランは胸が苦しいくらいに高鳴りました。
それと同時に、傷つけていたことに罪悪感が脳内を駆け巡ります。
「ごめん。無視していたわけじゃないんだ・・・ただ顔を会わせづらくて・・・」
あの日の夜、王子はずっと悩んでいました。
「別れた方がいいと思った。・・・それが1番だと」
「やだ!!アスランといっしょがいい!!!」
嬉しい言葉を贈りつづけてくれる姫君を、愛しそうに壊れ物を扱うかのように、そっと、でも力強く抱きしめ直しました。
あんなに悩んでいた気持ちが、もうどこにも欠片も見当りません。
「うん・・・でもやっぱり、君が好きでたまらなくて・・・
だから君がもう少し大人になったら、もう1度プロポーズしていいか、聞いておこうと考えてたんだ」
「ずっといっしょがいい・・・」
「あぁ・・・あぁ!ずっといっしょだ!」
誰よりも想いあっていながらすれ違っていた二人が心を通わせた瞬間でした。
いつまでも抱き合っていたい。心が結ばれているのなら、身体が結ばれるのはもう少し先でも構わない。
王子はそう思ったのです。
が・・・
「・・・それじゃあ、しようか。」
「え!?」
余韻に浸っているのか浸っていないのか、先にお誘いしたのはカガリ姫でした。
「え?え?えぇ!?」
「したくないのか?したいのか!!??」
「したいです!!!!」
正直者です。それが1番です。
でもまだちょっと気がかりなこと。
「・・・でも・・・イヤなことはさせたくない・・・」
ぐるぐるハツカネズミのような彼の思考回路は、したいならする、したくないならしない!
の単純明快なカガリには理解できない時もありますが、そんな謎だらけの部分だって少しずつ時間をかけて埋めていくのが夫婦だと、今のカガリ姫はちゃんとわかっているのです。
「ラクスが言ってた。ヤル気がない時は断れるんだって。
お互いの気持ちが重ならない時はやっちゃダメだって。私、今おまえと夫婦になりたいな」
それはつまり、カガリは今、アスランを欲しているということ。愛する人からそんなふうに誘われて断れる男がいるでしょうか。
少なくとも、今、ここにはいなかったのです。
「・・・カガリ・・・いいのか?本当に?」
心はもうすでにウキウキパラダイス状態の王子も、最後の確認とばかりにカガリ姫に問い掛けました。カガリ姫は愛らしく微笑みます。
「うん。だから安心しろ!もし1度やってイヤだったら2度としないし!」
「2度と!!??ええぇええええええええーーーーーーー!!!!!」
はい。ハードルが天高く上がりました。若葉マークのカガリ審査員の合否は厳しそうです。
経験値のない優しい王子はたじろぎました。
初めてをうまくやる自信なんてどこにもないからです。
そんな高等技術やスキルがあるのなら、甘いムードを作り姫とはとっくに結ばれててもおかしくないのですから・・・。
「か、カガリ・・・っ、ニ度と、は考えなおしてくれないか・・・っ」
「えーーー、ダメぇー」
「無理無理無理無理無理無理!!!!!!」
必死な王子がなんだか可愛らしくて・・・そんな心配しなくとも、姫がアスラン王子に不合格を突き付けるはずなんてないのに、
カガリ姫は心の中でくすくす笑いました。
「ほら、まずは・・・・ちゅーからだろ?私、あの時息苦しかったけど、イヤじゃなかったぞ?」
堂々としたその態度、実はやっぱり女の子のほうがずっと大人なのかもしれません。
アスラン王子はずっと、この姫君にぶんぶん振り回されながら幸せになるのでしょう。
アスラン王子の右手の指が、カガリ姫の左手の指に絡まりました。
恐る恐るゆっくり、確実に近づいていく唇。これが2人の本当のファーストキス。
わずかに触れ合って零れた言葉。
「あ・・・アスラン・・・」
エメラルドの瞳が潤んできらきら輝いていて、その瞳に自分が映っていたことにカガリの胸は烈しく鳴りだしました。
これが恋なんだと、カガリの身体と心が教えてくれたのです。愛しさが募リ、王子をぎゅうっと抱きしめました。
そうして甘い夜は更けてゆき・・・
「アスラン・・・・」
「カガリ・・・・」
更けてゆき・・・・・あぁ、大変です。いきなりアダルティな展開です。
クリンチは成功したものの、そんなこと覚えてません。マウントポジションもローブローもすっかり忘れて、彼の声に酔いしれて。
そして一応この話は全年齢対応の御伽話でありますので、アダルティな展開は割愛させていただくことをご了承くださいませ。
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次の日の朝、低血圧だけれど1度も遅刻したことのないアスラン王子が生まれて初めて寝坊しかけた、そんな朝。
朝食が用意されてある大広間までの廊下を歩く、昨夜までの暗い表情とは違い柔らかな表情の王子の隣には・・・
「むーーーーーー」
口を一文字に結んで可愛らしく唸っている姫君の姿。
姫はかなりご機嫌ななめのようで、どうにかして彼女の笑顔を見たい王子は女性と接するというとんでもなく少ない経験値を
使おうと必死でした。
どうやら若葉マークが必要だった二人にとって割愛された部分では
「アスラン・・・好き・・・」「カガリ・・・愛してる・・・」 ―――チュンチュン…(雀の鳴き声)
なんて少女漫画のような甘い雰囲気のまま突っ走ったのではなくて、
「うぎゃーーー!」「うぉおおおおお!!」 ―――「ゼーハーゼーハー」
なんて異種格闘技、体当たりドタバタ戦が繰り広げられた模様です。
それも2人らしいというか、それでこそ2人というべきか。
「むー、む。」
カガリ審査員の合否はやはり否、だったのでしょうか。
目が醒めた時からこんな感じで、とてもおはようのキスとともにもう1度・・なんて雰囲気ではなく。
寝坊した二人にそんな時間がないことは十分承知していましたが、アスラン王子はちょっとだけ夢見てもいたのです。
大広間までの路、そこには甘い会話もなくじゃれあう恋人同士もおらず、けれど不器用でも確かな幸せがありました。
アスラン王子はちらちら横目でカガリ姫の様子を伺い続けました。どんな瞬間も見逃さず、ずっと見ていたいだけかもしれません。
だって口が一文字の不機嫌そうな彼女もとても可愛くて可愛くて。
そんなことを考えていたらカガリ姫がやっと唸り声以外の言葉を口にしたのです。
「むーーー・・・なんだかまだ入って」
「わーーーーーーーーー!!!!入ってない入ってない入ってない!!!!!!」
無邪気な爆弾発言でした。
自分の責任だということはわかりきっているので、王子は居た堪れない気持ちになりました。
そして何より、カガリ姫が不機嫌な理由がわかって一気に落ち込みます。
「・・・ごめん・・・やっぱり・・・ダメ、だったよな?」
カガリ姫の言葉が頭に浮かびます。
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
1度やってイヤだったら2度としないし!
王子はよほど自信がないようです。
「・・・こら!おまえ、何か勘違いしてないかっ?」
すぐにカガリ姫は察しました。
身も心も結ばれて心に余裕ができるのは案外女性のほうかもしれません。
「私・・・イヤじゃなかったからな」
「え・・・?」
「だから安心しろ!」
あの時ラクスは言いました。イヤならイヤと伝えていいと。けれど、愛してるならきっと大丈夫だと、
カガリ姫はその言葉の意味が今はよくわかります。
どんなに恥ずかしくても、苦しくても切なくても、アスラン王子のことを嫌いになるどころか、
昨日よりもずっとずっとずっと好きになっていたのです!
「まぁ痛かったけどな!」
「がーーーーーん」
カガリの一言に浮いたり沈んだりのアスラン王子が愛しくて
胸いっぱいの心地よい感情に流されるかのように無邪気な姫君はストレートにお誘いしました。
「だからこれから頑張ろうな!いっぱいいっぱいしよう!」
「カガリ・・・っ」
あぁ、やっぱり、1度くらい遅刻なんてしても許されるんじゃないかと、真面目な王子に思わせるほどの誘惑。
彼女は本当に昨日までなんにも知らなかったなんて信じられないくらいで。
「だって早く慣れたいんだもん!ムチ使うんだっ」
「え?ムチ??」
知らぬほうが幸せなこともあるかもしれません・・・永遠に知らないためにも『主導権』は手放さないよう頑張ってほしいものです。
「ふふふっ」
ムチがなんなのかほんの少しだけ気になって、でもそんなことすぐに忘れさせられたカガリ姫の笑顔に、
もう1度が無理ならせめておはようのキスを。
差し出した手のひらに、何の疑いもなく手を重ね、瞼を伏せてそっと唇を近づけると初々しく瞳を閉じて応えてくれる、姫君。
廊下は、誰にも邪魔されない、まるで2人だけの舞踏会。
2人が出会ったあの時、王子が拾ったのはガラスの靴ではなく、永遠に続く幸せでした。
シンデレラと呼ばれた少女・カガリ姫は、それから幾月の後に子供を授かり、王子の片腕として立派に働き、
3食しっかり食べ時々お昼寝をして、
アスラン王子を虜にした愛らしい笑顔で、国民に愛される素晴らしい王妃となるのです。
めでたしめでたし。
「わたくしのおかげで仲直りされたようですので、お礼はたっぷりいただかないといけませんわね・・・うふふふふ」
・・・・・・めでたしめでたし?
●●●おわり!●●●
「まさしく、ぶっつけ本番だね!」
さすがキラさま。下ネタも爽やかです。
という一文をどっかに入れるつもりだったんですが(爆)。
いれたほうがよかったかなぁ(笑)。
キラ様をもうちょっと活躍させるつもりでしたが、何時の間にかラクス様おいしいとこどり。さすが女帝。
そういやこれはシンデレラだった(笑)と、終わりはやっぱり童話っぽく御伽噺っぽく。
でもやっぱりシンデレラって設定が飛んでしまってますね(笑)
長い間更新あけてたので、新作掲載はほんとに緊張しました・・・
思ったより(望月にしては)長くなって、でも久々にやりきった感があります。
今はもうアスカガで胸いっぱいおなかいっぱい。
浮気する間もないくらい(嘘だ!笑)アスカガ一直線です。
次もあんまりお待たせすることなく楽しく描けたらいいなと…思ってます。
やっぱり自分が楽しくないとダメですね。
最後までお付き合いありがとうございました!
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