バスローブ一枚でソファーにもたれかかりながら、湯中りした身体を休ませているカガリ。
その横で、せっせと夕食を温めたりと忙しいアスラン。
妻と夫の立場が逆転しているような気がする。ましてや今日の主役は他でもないアスランなのだ。

「・・・・やっぱり私が・・・」
「あぁ!いいよ、カガリ。休んでて」
「でも・・・!」
「いいから。ね?」

立ちあがろうとした体をそっとその手で止められてしまった。
本当は立ちあがるのも辛いしまだ頭がぼうっとしているのだが、
アスランにばかり任せては申し訳ないと動こうとしたのに、カガリの身体はまたソファーに沈む。

アスランはカガリが動かずにじっとしていることがむしろ嬉しいらしい。
せっせと働いてくれているにも関わらずずっと笑顔だからそれがよくわかる。

立てなくなったのはシャワールームで、アスランのせいで、だ。
だからと言って今日の主役を働かせていいわけがない。
何によりそれを望んだのは自分でもあるし・・・お願いを聞きすぎた自分の責任でもある。
しかし、今のアスランは自分が夕食の支度をしたいというこのお願いは聞いてくれないだろう。
その他のどんな些細な願い事だって何でもいつだって叶えてくれるのに。
カガリは諦めてソファーにもたれかかった。

 

 

 

 

「今日はここで食べるか」


そう言ってアスランがソファーの前のテーブルに料理を盛り付けた皿を置く。
「ありがとう、アスラン」
何もできなかったから、せめてしてくれたことに最大の感謝を贈ろうと、カガリは微笑みながらそう言った。
その言葉に、アスランも同じように微笑んでお礼のお礼にキスを贈る。
力の抜けているカガリは身を任せてそれを受け止める。

小さなキスを繰り返したくなりそうで、アスランは自分を叱咤して1度だけで終わらせた。
なんせ、愛するカガリが心をこめて作ってくれた美味しい料理が待っているのだ。

「食べようか?」
「うん!いただきまーす」
「いただきます」

カガリがもたれかかっていたソファーから身体を起こして皿に手を伸ばそうとするが、
また先ほどと同じようにアスランにその動きを止められた。

「カガリはソファーにもたれたままでいいから」
「・・・・え?でも行儀悪いし・・・」
「いいから」

そう言うとアスランは鍋ごと持ってきていたロールキャベツを皿に盛り、フォークと一緒にカガリに手渡す。

「・・・食べさせてあげようか?」
「え・・・!?」

皿を手渡された時に言われた言葉に、カガリは驚く。見れば彼の顔が赤い。
言ってからちょっと恥ずかしい台詞だと気付いたのだろう。


「食べさせてあげるなら、今日は私が、だろう?」


そんな彼が愛しくて、カガリは受け取ったフォークで皿の中のロールキャベツをすくい、
溢さないように注意しながらアスランの口元へ運ぶ。

「はい、あーんして」
「・・・・・え!?」

カガリ以上にアスランは驚いて、一瞬にしてもっと赤くなってしまう。

「ほらぁ!」

やってるほうも恥ずかしいんだぞ、とカガリは可愛く睨みつけて口を開けるよう促す。
そう言うカガリも顔が赤い。
二人してソファーに互いの言動の甘さで沈みこみそうなくらい赤くさせて、じっと見詰め合う。
アスランがゆっくり口を開いた。
それを見たカガリは、お手製のロールキャベツをアスランの口の中へ。

「・・・・・・・美味しいか・・・?」
「うん・・・すごく」

小さな一切れをごくりと食べたアスランがカガリの質問に答えた。
真剣な顔をしてこちらをじっと見ているカガリ。
けれど、美味しいと一言伝えると、それはあっという間に満面の笑みにかわる。

「次は、俺の番ね?」
「え!いいよ・・・!」
「ダメ。俺もしたいから」
「も、もう・・・!」

アスランのお願いごとやしたいことは全て叶えてあげようと思っていたカガリ。
それを知ってるアスランをずるいと思う。
「しょ、しょうがないなぁ!」
ぷっくりと頬を膨らませた後すぐに微笑んで、彼のお願いを叶えてあげる。
「はい」
「・・・・ん」
彼が持つフォークに乗ったロールキャベツを口の中へ。
美味しいと言った彼の手から食べさせてもらったロールキャベツは、各段に美味しかった。

 

 

 

 

 

結局最後まで、二人は夕食を食べさせあった。
それはいつもより食事の時間のかかるものだったのに、イヤな気分はしなかった。むしろ楽しい。
これを誰かが見たら、なんて馬鹿げた事をしてるのだろうと言われてしまうだろう。
そんなことを自覚しながらも、二人の愛ゆえの馬鹿げた戯れは愛しいものにかわってしまう。
夕食の片付けを終えた後、カガリは満腹感にソファーに背中を預けたところでそう言えば・・・と思い出す。
冷蔵庫にケーキが置いてあるのだ。
本当は手作りのものにしたかったのだけれど、今回は見送り人気店で買ってきたバースディケーキが。

「アスラン、ケーキ忘れてた!ごめん!」

食事の準備を任せっきりにしてたせいで、すっかり頭の中から抜け落ちてしまっていた。
誕生日なんだからケーキがなくちゃ始まらない。
考えていたお祝いが1つ抜け落ちていたことに、カガリの眉が下がった。
「いや・・・俺はいいよ。ロールキャベツが美味しかったしな」
そんなカガリに気付いたアスランは、優しくカガリに言った。
まだ眉が下がり切ったままだったので、その額にキスもプレゼントして。
アスランからキスを贈られたカガリはやっと笑顔になる。

「・・・・・カガリはケーキ食べたい?」
「ん・・・食べたいな・・・あ!おまえが食べないなら食べないぞ!」

つい、自分の意見を言ってしまった。ぱっと手で口を隠してカガリは慌てる。
主役の意見を聞かずして自分の意見を通すことだけはしたくない。

「カガリが食べたいなら、俺も食べようかな・・・一切れを半分こしよう?」
「いいのか!?」
「あぁ」

そう答えてアスランは立ちあがる。
カガリが取りにいこうとした行動さえもまた遮られ・・・アスランがキッチンに行く後姿を見ていた。
暫くするとアスランはケーキを一切れのせた皿を持って戻ってくる。
テーブルにそれをかちゃりと置くと、ソファーには座らずに下のカーペットに座りこむ。

「カガリ、こっちおいで」

そう言って彼が指し示すのは、彼の膝の上。

「・・・・・うん」

その言葉は甘く、言われるままにカガリはアスランの膝の上にそっと腰を降ろした。
するとアスランがすっと腕を使いカガリを抱きしめる形をとる。
「・・・・・・この格好、アスランの顔が見えないぞっ」
ちょっとだけ膨れっ面でアスランに言うと、耳元でくすりと笑う声が聞こえてきた。

「食べようか?」
「うん!お誕生日おめでとう〜!」
「ありがとう」
ハッピーバースデーの曲を鼻歌で披露するカガリを、抱きしめる手に力を込めた。
「あ、ろうそくは?」
「いらない、カガリがいればいい」
なんだか質問とはかみ合ってない答えだったのに、その答えが嬉しくてカガリはフォークを握り締める。
そしてケーキをすくって一口食べてみた。
甘くて甘くて・・・今なら、このケーキはどうして甘い?と聞かれたら、アスランがいるから、なんて、
さっきの質問とかみ合ってない答えと同じような答えを返してしまいそうだ。

 

「アスランも食べるか?」

フォークでまた一口分すくったところで尋ねてみる。

「いいよ、カガリが食べて」
「そうか?」

言われてカガリはまた自分の口へと運んだ。
やっぱりもうアスランはお腹いっぱいなのかもしれないと、気にすることもなくケーキを食べる。

・・・いや、1つだけ気になることが。
自分の身体に回されたアスランの手、だ。

時折腰から胸へと移動して、くすぐったいというか・・・感じてしまう。
バスローブ越しの胸を揉まれた時はさすがのカガリも小さな悲鳴をあげ怒ったような表情を作り振り向いた。
けれど見つめ返したアスランの表情にあまりにもドキドキしてしまって言葉をなくしてしまった。
そうしてまたケーキを食べることに夢中になる、の繰り返し。
こんなふうに拗ねたり怒ったり笑ったりしながら・・・
甘いケーキを口にして、もっと甘い雰囲気にスポンジのようなふわふわな気分になる。

 


甘いものは別腹とはよく言ったものだが、カガリもやはり女の子で・・・ケーキは見事なまでに綺麗になくなった。
同時にその、胸に与えられた快感で瞳がとろんとしてしまっている。
ごちそうさま、と小さく言ったカガリの耳元で、またアスランが笑いカガリはくすぐったさのような快感に小さく震えた。
そして、意味深な言葉が耳に届く。

「次は・・・俺がもらおうかな?」

「え・・・?」

アスランがぎゅっと腕を身体に絡めているから後ろを振り向く事ができずにいたが、急にその力が弱まった。
カガリが振り向こうとする前に、アスランが振り向かせる。
手からフォークが滑り落ちた。
アスランが自分の腕をとったのだ。
目を見開くと、目を閉じている彼の顔が近づいてくる。
これから何をされるのか、それで全てわかり、カガリもすぐに瞳を閉じた。

「・・・・・・・んぅ・・・」

「・・ん」

始まった口付けは、甘くて甘くて、口の中がとろけそうだ。
早速彼女のの舌へ自分の舌を重なりあわせて、口内に残っていたクリームのかけらを味わうアスラン。
くちゅりと音を鳴らして、それさえも気にせず激しくなる一方で・・・
バスローブをはだけさせていくのも時間の問題だった。

「・・・・・・・ベッ・・ド・・・」
「あぁ・・・」

カガリが吐息とともに漏らした言葉に、アスランも頷いた。
シャワールームで抱いてしまったのだから、次はちゃんとベッドで抱いてあげたいと、また横抱きに抱き上げる。
まだ、互いの吐息が熱くて、カガリは抱き上げられたままアスランの頬や唇にキスを繰り返す。
そんな可愛い行動のせいで、熱は燃え上がるばかりで・・・・
ベッドに辿りついたカガリがまた立てなくなるまで求められることになるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


熱くなりすぎた身体で、互いを求め合う激しい行為の後、
「水が飲みたい・・・」
と、ベッドにぱたりと倒れているカガリのために、アスランはキッチンに行き、ペットボトルの水を持ってくる。
その水を口に含んだままカガリにキスをし、舌をうまく使ってカガリの喉へと水を流し込んだ。
カガリの喉が美味しそうに水を飲みこんだのを確認すると、そっと唇を離す。
零れた水は、これまた舌でなぞって掬ってあげた。

「おいし・・・」

疲れきってるせいもあるか、声が掠れているのがまた色っぽくて・・・
無理をさせたと反省したばかりのはずのアスランはまた喉を鳴らした。
それでも無け無しの理性をかき集めてカガリの頬を撫でてあげた。
安らぎに、カガリが微笑み瞳を閉じる。

「・・・・・・・・・眠い?」
「う、ん・・・・・」

アスランの言葉に、カガリは頷いた。
そして次に聞こえてきたのは、可愛らしい寝息。
風邪をひかないようにとアスランは掛布団をカガリにしっかり掛けて、自分もその横へ滑りこむように潜りこんだ。


起こさないように、できるだけ傍により、頬にキスをする。
身じろぎしたカガリのそんな小さな行動さえ可愛くてたまらなくて・・・
アスランはこの心をいっぱいにしてくれる幸せを感じていた。

自分の生まれてきた日をこんなに喜んでたくさん愛してくれる人がいる。

それがカガリでよかった。カガリじゃなきゃイヤだ。

この幸せのまま今日は眠りについて、そしてまた明日、新しい幸せに出会わせてくれる彼女に感謝して・・・。

「・・・・・愛してる・・・ありがとう」

おやすみ、の代わりに今日は特別な言葉を。
幸せに包まれたまま、アスランは瞳を閉じてカガリと同じ夢の世界へ誘われるように眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

END

極甘でした〜(笑)。おめでと、アスラン!

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