お風呂

 

 

 

 

 


ピンチだ。
非情にピンチだ。

そもそもこうなったのは、2人が新婚だからで・・・・いやアスランが珍しく強引だったからであって、
別に嫌だなんて思ってはないし、いつかこうなることだって予測できた。
けれど、けれど・・・・・

 

ど、どういう顔して入ればいいんだよぉぉ!!!

 

バスルームの脱衣所で白いバスタオル一枚身にまとって右往左往。
まるでドラマでよくやる子供が生まれるのを今か今かと待つ父親だ。
子供は居ないが今、バスルームには夫、がいる。

夫という単語に、ただでさえ混乱中の脳内は湯気を噴出すんじゃないかと思うほどに沸騰してしまう。

 

いっしょにお風呂


今までだって何度か、・・・・・・・いや何度もそれとなく誘われたことはある。
そのたびに知恵の少ない頭の中を必死に動かして切りぬけてきたのだ。
今回だってうまくやれるつもりだった。

 

それなのに、
「・・・・・・・・・・もう、いいよ。・・・・カガリは俺とは入りたくないのか」
なんて言いながら、しょげた後姿があまりにも可哀想で、切なくて、
「そんなわけないだろう!・・・入ってやる!!」
なんて甘さを見せてしまったせいでこうなってしまった。
「えぇぇ!!??」
誘った本人がそんなに驚いてどうする、とツッコんでおけばよかったと今後悔している。
もちろん、風呂場では「しない」という約束をとりつけはしたが。

 

いっしょにお風呂に入る、
結婚した人間なら必ずや通る道なのだろうか?それとも恋人時代からの試練なのか。

結婚する前まで2人にはキス以上のことなんてなかったし、
そんな恋人時代の中でお風呂に入るなんて言葉が思いつくはずもない。
いっそのこと、もっと前から経験しておけばこんなに恥ずかしがることもなかったはずだ。
夫婦になって、もう自分の身体の全てを捧げて全てを知られているというのに、
今更恥ずかしがることなんてあるはずないのに・・・・。

「そ、そうだよな・・・!恥ずかしくないさ!」

大きな声で自分に言い聞かせる。
自分のよいところは、怖いことから逃げ出さないこと。
怖いと言うより今は、あまりの緊張で頭が混乱してるだけかもしれないが・・・。

「・・・うん!人生はチャレンジだ!!」

もう1度大声を張り上げて、カガリは自分自信の意気を高めた。

 

 

 

 

バスルームの扉に手をかける。
1度ぎゅと目を瞑ってから大きく深呼吸して、がらりと開けた。
白い湯気がカガリの視界を覆った。むわっとした湯気が眩暈を誘う。
ただでさえ、もうすでに自分の頭は沸騰中。決意は今にも崩れ落ちそうなくらい。
「お、お、おまたせ・・・っ」
口からでた言葉はこの空間ではよく響く。
うるさいほどに鳴り響く心臓の音までこの中では響きそうで、カガリは思わず一瞬だけ息を止めた。

アスランが、小さく頷いたのが見えた。どうやら少し照れてるらしい。
誘った本人がこれだから、今自分はどれほど赤い顔をしているのか・・・
入る直前に鏡で確かめておけばよかったとカガリはどうでもいいことを考えてしまう。
それくらい頭が混乱しているのだ。
そして、いざ入ってみたものの、ここから先はどうしたらいいのかわからない。
勝手に身体を洗い始めていいのだろうか。それとも相手が身体を洗い終わるのを待てばいいのだろうか。
その場合は自分は相手を見ているだけなのだろうか。それからそれから・・・。

初めて、のあの時と同じく、困ったことに知識がない。
『夫婦のお風呂での過ごし方』なんて、自分が習ってきた教科書にもなかったことだし、
アスランに身をまかせていたあの時と違って、何もせずにここに突っ立ってればいいというわけでもなく、
カガリは頭の中の人生に必要な知識を総動員させて必死にこの場の過ごし方を導き出そうとしている。
とりあえずまずは身体を洗うべきだと、その答えに辿りついた時、旦那さまの背中を流すという図式が頭の中を駆け巡った。
答えがでれば、あとは実行に移すのみ。

「せ、背中・・・・洗おうか?」
「あ、あぁ」

カガリの言葉もアスランの言葉も、2人ともどこかぎこちない。
そもそも2人が結ばれてまだ2ヶ月ほどしかたってないのだ。
付き合いは3年近くにもなるけれど、身体が結ばれたのは今もまだ記憶に新しい時。
だから結婚する前からそういう関係だったのならば経験歴が長くなってお風呂ぐらいで騒いでなんかいなかったかもしれない。
けれど今の2人の経験値の低さは、2人が1番よくわかっていた。

・・・初めての・・あの時だって、二人ともよくわかんなかったっていうのに・・っ

初めての、あの時は、
本当に2人とも互いが初めてでどうしていいかわからないままで、あれが正しい繋がり方だったのかもよくわからない。
カガリは痛かっただけだし、アスランだって自分のことで精一杯なだけだったし・・・
もちろん、身体を気遣われて甘い言葉を囁かれて・・・心は気持ち良くてしょうがなかった。
大好きでたまらない人と裸で抱き合うことの喜びを知った日でもある。

そんなあの日の、生々しいまでの記憶が頭の中でフラッシュバックして、
カガリは煩悩を追い払うためにスポンジにボディソープを滲ませると、自分の手で勢いよく泡立てた。

「い、行くぞッ!!」
「よ、よしッ!」

自分でも何を言っているのかわからないが、緊張状態が極限なことだけはわかる。
そんな自分の言動に対するアスランも、いちいち聞かなくても緊張感で張り詰めていることがわかる。
ドキドキしながらその背中にスポンジとその手をあてた。

自分とは違う大きな背中。
泡立てたスポンジを上下するたびに、それを知る。
筋肉の付き方だって女の自分とは違って、男だと思い知らされる。

・・・・・・・・・・な、何をいまさら・・・・・・・

また頭の中を支配する、どこかイヤらしい考えにカガリは赤くなってしまった。

手を動かすたびに、広く逞しい背中が泡で包まれていく。
最初こそ恥ずかしさで視線を合わせるのも難しかったが、次第に気分がよくなってくる。
なんだかこういうのも楽しいのだ。
好きな人の、旦那様の背中を流すのは、幸せな気持ちになる。
こんな姿を見れるのも、妻だけの特権なのかもしれない。
それを伝えようか迷っていた時、先にアスランが口を開いた。

「・・・・・・・・・・こういうの・・・いいな」
「え?」
「奥さんに、背中流してもらうのって、幸せだなって」

思っていたことは同じだった。
嬉しくてキスで答えたかったけど、ここが何処なのか思い出して我慢した。

広い背中を全て洗い終えたところで、胸のほうはどうするのかとカガリは思う。
背中しか見えない今の状態では、どう考えても洗いにくい。
それとも洗う、というのは背中だけでいいのか。
胸板を洗うとなれば互いに向き合わなくてはいけない。
それだけは本当に恥ずかしくて・・・できれば勘弁したい。

そんなカガリが考えて辿りついた答え。

背中から洗えばいいんだ・・・・!

答えが出れば、あとはもう行動に移すのみ。
アスランの両脇から手を差し入れ抱きつくように両手を彼の胸板へと当てた。

「え、え、え!?」

驚きで声をあげるアスラン。
カガリは洗うという目的のために自分がどれほどに大胆なことをしでかしているのか気付かない。

「ちょ・・・!カガ・・・・ッ」
「イヤ、なのか?」
「そうじゃなくって・・・!」
「じゃ、いいだろ・・・?」

洗うことに夢中なのか、どこか声が掠れていて色っぽい。
それが風呂場に響く上に、耳元に彼女の吐息とともに直接かかるものだからアスランはその快感に身をよじった。
バスタオル越しとはいえ、胸の柔らかさまで背中にあたるのだ。
カガリの指が動くたびに、恥ずかしい事に声をあげそうになるのを必死で堪える。

「カ・・・・!」
「なんだよ・・・痛い、のか?」
「ち、ち、違う・・・っけど・・っ」

アスランの興奮に気付くこともなく、カガリはその行動を止めることはなかった。
優しく喉元から、胸にスポンジをあててこすりあげている。

「・・・・・・気持ち、いい?」
「・・・・ッ!!」

他意はない。

他意がないから困る。耳元で囁かれた、この鈍感で純粋な妻の言葉には。
本人には全くその気がないのに、相手にはその気にさせてしまう。
いっそのこと、これが彼女なりの誘惑の仕方ならばどれほどよかったことか。

手を出さないと約束した手前、手を出してしまったら本当に機嫌を損ねてしまうだろう。
もう一生二人でお風呂はなくなってしまうかもしれない。

ど、どうすればいいんだよ・・・っ!!

アスランの心の叫び虚しく、カガリはそしてそのまま腹のほうへと手を下げていった。
そして、下がるカガリの手がそれ、に触れそうになった時、アスランは息を飲みこんで恥ずかしさに目を瞑ってしまった。

 

「・・・・・・・・・・・!!」

 

カガリは、彼の両脇から差しこんでいた手を勢いよく慌てて引っ込めた。
今、ほんのちょっと、スポンジと手にあたったあの固さは・・・・・

「・・・・・・・・・・!し、しないからな・・・!ここでは・・・っ」
「わ、わかってる・・・!ご、ごめん!!」

気まずい。
さっき触れてしまったアレで、今、自分がしていたことがどれほど大胆なことなのか初めて気付いた。
あんな状態になっているということは、少なくとも相手は・・・・

「ぜ、絶対!し、し、しないから・・・な!」
「だ、大丈夫・・・っ」

間を持たせるために、同じ言葉をしつこく繰り返す。
別にアスランを信じてないわけじゃないが、今はこうでも言っておかないと何だか落ちつかない自分がいる。

2人して視線を泳がせてると、アスランがシャワーからお湯を出し身体についた泡を落とした。
きゅっと、シャワーの蛇口をひねってお湯を止めると、カガリに声をかける。

「・・・・・・・次、カガリ、な」

バスルームに響いた、どこか甘い声。

カガリの身体が震えた。それが恥ずかしくて、ばれたくなくて、
何でもなかったかのように白いバスタオルをはだけさせると、前だけ隠すようにしている。
その姿が余計にそそる仕草で、アスランは白いうなじに噛みつきたくなった。
気付かれないように唾を飲みこむと、カガリと交代で受け取ったスポンジをそっとその肌へと当てた。

「・・・・・・・・痛くないか?」
「う、うん・・・・」

背中を動く手は、痛いどころか優しすぎる。
遠慮してるのだろうか。なんだかくすぐったいぐらいだ。
それにしても、今彼が言った台詞は・・・・

「カガリ?」
「あ!な、なんでもないっ」

ただ背中を流してもらっているだけなのに、頭に浮かんでしまったイヤらしい考え。
・・・・痛く・・ないか?
初めての時からずっと、毎夜耳元で囁いてくれる言葉と同じだなんて。

「な、なんでもない・・・からな・・・っ」

耳元がほんのりピンク色に染まったのをアスランは見逃さなかった。
もう1度ごくりと唾を飲みこむ。
今、目の前にいるのは、愛するカガリ。
白い背中が少しずつ泡に染まっていき、カガリの身体はほんのりと色づいている。
バスルームに響く声は、いつもよりずっと甘く感じて、一言一言、吐息さえもが自分を誘惑しているかのようだ。

気付けば自分の下半身が限界を訴えてるではないか。

 

しない、と約束したばかりだ。
先ほども思った。
ここで約束をやぶってしまえば、もう2度とカガリはいっしょにはお風呂に入ってくれないかもしれない。
そんなことちゃんとわかっている。

 

けれど、限界、だったのだ。

 

「・・・・ごめ・・っ・・・・カガリッ」
「・・・え?うわ!・・・あ!」

泡がついていない、けれどピンク色に染まっている彼女の耳朶に唇でかみついた。

「・・・・ふぁ!や・・・アスラ・・・!」

前だけ隠していたバスタオルを無理やり剥がす。
カガリがそれを慌てて止めようとしたが、遅かった。
はらりとアスランの手によって落ちたバスタオルを拾い上げ様とするカガリの手を掴んで止め、
そのまま先程カガリがしたように両脇に手を入れてカガリのふくよかな胸に手をあてる。

「え・・・!ちょ!」

スポンジはもう足元に落とした。
今は手の平の泡で十分だ。
包み込むように、ただ当てていただけの手に力を入れてみる

「・・・・・あぁ!も・・ぉ!・・・や!あすら・・・っ」
「・・・・・だめ・・・」
「はぁ・・・んっ」

柔らかい感触を優しく、時折強くその両手で揉むと、カガリの嬌声が響き渡る。

 

それに興奮して、もうアスランは止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火照った身体は湯上りだからじゃない。
白い大きなバスタオルでその赤くなった身体をふく彼女は無言だ。
最初はアスランがその身体をふいてあげようとしたが、そうする前にバスタオルを奪われてしまった。
それならば、せめてふらついている身体を支えてあげようと手をのばすが、それさえも拒否された。
アスランはどうしていいかわからず、懇願するようにカガリに言う。

「・・・・・・何度もいっしょに入れば、俺も我慢できるようになる・・・よ?な?」
「・・・・・・・・・」

呆れた言い訳だとわかっている。言ってすぐに後悔した。
カガリの返事がないのだ。
それどころか、出てきた時より機嫌が悪くなってしまったような気がする。
さすがにまずかったか。

少しでもカガリの機嫌をなおしたかった。これからベッドで幸せな時間が待っているというのに。
無理やり抱くことはしようと思えばいくらでもできる。
でもそんなの愛情ではないから、カガリも笑顔で受け入れてほしい。
アスランが、彼女の機嫌がなおるならなんでもすると決意しながらその顔を覗き込めば、
カガリは真っ赤になっているではないか。
これは湯上りの時の顔だからじゃない。ましてや怒った時の表情でもない。

「カガリ?」

一体どうしたのかと、アスランが尋ねてみると、
頬を膨らませていたカガリは覗きこんだ瞳に視線を合わせて、アスランに言った。

「・・・・・・・・・・・・我慢できるようになんて・・なるなよな・・っ」

恥ずかしがって赤いまま、怒ったように言う可愛い可愛い妻。
あまりの可愛さと、彼女の言った大胆発言に、アスランの頬が赤く染まる。
なぜなら、それは、つまり、

「・・・また、してくれる?」
「ばか!」

怒られたけれど、そういうことなのだろう。
本当は我慢なんてできるほどできた人間じゃない。
それは愛するカガリの前でだけ、だけれども。

 

とりあえず今は何よりやっぱり機嫌を直してもらおう。これから訪れる甘い夜のためにも。


「・・・・・・・・本当は・・・我慢なんてできない」


そう言いながら、アスランは優しく深く甘いキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

END

 

我 慢 で き る よ う に な ら な き ゃ ダ メ だ ろ 。 (笑)
望月の最終兵器お風呂でした〜。いちゃラブ〜このこのっ!
久々に裏とセットで書いたのでドキドキしました。
うちのアスカガはやっとお風呂に入ることができました。
おめでとう!アスラン!大人になったね!カガリ!(笑)

第二裏アドレスご存知の方は
ぜひ2人のお風呂いちゃラブタイムをどうぞ!


 

BACK

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送