第10話:LOVELOVELOVE

 

 

 

 

 

 

ソファーでごろごろ寝転がりながら、新しくコンビニで発売されたお菓子を食べる。
ちょっとした贅沢。
喉が乾いてテーブルの上に置いてあったジュースの入ったグラスを手に取ろうと1度身体を起こした。
いつもはマーナが居てお行儀良く!といわれちゃうからあんまりこういうことはできないけれど、
彼女はちょっと遠くの百貨店で買い物がしたいと今しがた家を出たところだ。


「1人で何しよう〜」


お喋りの相手もいないし、休日のお昼の番組はあんまり自分好みの面白いものはないと、
グラスに口をつけてジュースを飲んで喉を潤すと、またソファーで横になる。


「アスラン〜、どうしてるかなぁ」


1人でいると最近いつも思い出してしまうのは長い付き合いの友人たちでも、大切な兄弟でもない。
大好きな人と自覚してしまったアスランのことばかり考えてしまう。
こんなこと知られたら、親友と弟には薄情者め〜!と怒られてしまいそうだけれど。
でもどうしようもないんだ。


ドキドキ、止められるならとっくに止めてる。狭いソファーで寝返りを打った。
アスランに会いたいな・・・。

 

その時、私の携帯が鳴った。メールの着信音だ。
「アスラン!?」
がばっと置きあがり、グラスのすぐ傍においてあった携帯電話を手にする。
高揚している気持ちを必死に抑えつつ携帯画面を覗いてみれば
「なんだ・・・キラか・・・」
これまたキラに知られたら泣かれてしまいそうな台詞がぽろりと出てきてしまった。
ごめん、キラ。
おまえのことも大好きなんだぞっ。

弟に謝りつつも期待していた心は寂しさを隠し切れない。
会いたい、話したい。
そう言えばここ最近、電話とメールはほぼ毎日だけれど、
受話器を通さないあいつの声はしばらく聞いてない気がする。
自覚してしまえば会いたい気持ちばかりが大きくなって、どうしようもなくなる。
あぁ、もう!


「えぇい!なるようになれっ!」


私は思い切って携帯であいつの番号を呼び出した。

 

 


コール音は私の心臓だ・・・と思いつつアスランは思ってたよりずっと早く電話に出た。


『もしもし・・・?カガリ・・・どうしたの?』


あまりにも彼が出るのが早かったから、心の準備が追いつかないで声が裏がえってしまう。


「あ、アスラ・・・ン!ひ、ひさしぶりっ」


もー!バカバカバカ!昨日も電話したばっかりだろう!
恥ずかしさでいっぱいになってしまった私は、前置きもなく唐突に告げる。


「い、いま!!」


『え?いま・・・?』


「〜〜〜!!今から会わないかっっ!会おう!!」


『・・・・・・・』


あーー!もー!バカバカバカバカ!!!
本当に突然すぎるだろう!しかも何だか尋ねるよりは命令のような強い口調になっちゃったし・・・!
もー!!バカバカバカバカバカ!!


『・・・・・いいよ。俺も会いたい』


「・・・・・え?」


『カガリに会いたい。どこで待ち合わせる?』


「え・・・あの・・・っ」


てっきり断られてしまうと思っていた私。
その嬉しい答えに面食らってしまい返事につまる。
嬉しい答えがこんなにすぐに返ってくるなんて思ってなかったから、
待ち合わせ場所を考えなくちゃいけないのに何も思いつかない。
何か言わなきゃ、と、私の口は勝手に動いた。


「じゃ、じゃ、じゃ・・・!うちに・・・来ないか!?」


『え?』


今度はアスランが面食らってるような返事。
あぁ!失敗しちゃったかな・・・?いきなり家に来いだなんて・・・
でも今なら二人きりで居られるし、誰もいないからアスランも気負わなくていいと思うし・・・


「家に遊びにこいよ・・・二人でゆっくりしよう?」


さっきの命令口調とは違って、今度はちゃんと可愛らしくお願いできたかな・・・?
「お手伝いさんもお父様も夜まで居ないんだ。だからゆっくりできると思うし・・・」
『そ、そうか・・・それじゃ何かお土産を・・・!』
相変わらずの律儀さに苦笑。
「いいよ!そんな気をつかわなくって!」
『でも・・・ペンダントのお礼まだちゃんとできてないような気が・・・』
アスランってば、私が前に送りつけたペンダントのことまだ気にしてる。
「あぁ、もう。何度も奢ってもらってるんだから、そんなの気にするなよな!」
『・・・カガリ・・・ありがとう』
「ペンダントはちゃーんと身につけてこいよ!」
『え?!』
「え?って・・・」
おかしな反応だ。
てっきりペンダントだから身につけてくれてる日もあったとおもってたんだけど・・・。
もしかして、気に入らなかったのかな?
やっぱり男の人はあんまり興味なかったのかな・・・?
と少し不安になっていたらアスランが、ゆっくり話し出す。


『勿体無くって・・・その・・・1度も付けたことないんだ・・・』


え!1度も?私は素直に驚く。
あれは身につけてこそ厄災から守ってもらえるんだけど・・・。
でも、勿体無いから身につけられないっていうの、ちょっとわかるかも。
そうだよな、私もハウメアを初めて見た時、綺麗だったから自分には勿体無い気がした。
でもアスランはとても綺麗だから似合うと思う。
「それじゃ、それ持ってこい!私が首にかけてあげるから」
『・・・・え、えぇ!?』
私の提案に、こっちが驚くくらい驚いてくれる。
まさか・・・と思うけど、
「イヤ・・・なのか?」
『!!いや!う、嬉しいから驚いて・・・!』
上擦った声に、アスランが今ものすごーく慌ててることに気付く。
ちょっといじめちゃったかな?ごめんな。大好きだぞ。
「ふふふ、じゃ、決まりな!待ってるから!あ、駅まで迎えに行ったほうがいいかな?」
『あ、いや、大丈夫。今から支度してすぐ出るよ』
「わかった。待ってる!」

 

 

ボタンを押して携帯をぱたりと閉じた。
数秒間の静寂後、私は部屋中に響く声で叫ぶ。


「う、わーーー!!!」


ぱたんとソファーに倒れこんで足をじたばた。
だってアスランが来るんだ!ここに、来るんだぞ!?

 

「あ!!い、いけない・・・!掃除・・・っ」

 

今からしたって間に合わないかもしれないのに、私は慌てて立ちあがり、掃除機に手をかけた。

 

 

 

 

 

部屋中を掃除機をかけてまわった。
ふぅっとため息をついて部屋の中を見渡す。
心持だが綺麗になった気が・・・うん。よかった。
まぁいつもマーナが綺麗に片付けていてくれているから、いつも綺麗な部屋なんだけど・・・。
そうこうしているうちに私の携帯メールの着信音が。
確認してみれば、アスラン。
『今から電車に乗るよ。寄り道せず行くから』と。
「道・・大丈夫かなぁ。駅、迎えに行ったほうがいいかな?」
そう思ってそれを文字にしてメールで送る。
そうしたら、道は覚えてるから大丈夫と返信が。
1度案内しただけなのに・・・アスランってすごい!
私はそのままアスランの言う通り迎えには行かない事にして、ちょっとお気に入りの部屋着に着替えに自室へ戻った。

 

 

 

かちこちと動く時計の針の音にそわそわしながらも、紅茶を淹れる準備を始める。
ティーカップはお気に入りの、エルメス。
・・・とは言っても私には食器の価値がわかんないから、マーナお気に入りの、だけど。
戸棚にあったちょっと高いクッキーの缶を開けて準備万端。
後は主役である彼が到着するのを今か今かと待つばかり。
ドキドキと気持ちは逸るばかり。

自分の落ちつきのなさに、先に少しだけ何か飲んで落ちつこうと冷蔵庫に向かったら、
その冷蔵庫のドアを開ける前に玄関のチャイムの音が鳴った。
「!」
落ちつこうとしていたところにいきなり鳴ったものだから、身体が少し飛びあがって驚いてしまう。
すぅっと息を吸いこんで、私は玄関へ通じるインターホンへ声をかけてみる。

「は、はーい!」
『あ、あの!アスラン・ザラです!』
「アスラン!待って、今開けるぞ!」
私の落ちつきのなさの理由が来てくれた。
インターフォン前の自動で動く門を開けてから深呼吸を浅く繰り返して、玄関先へ駆け出して行く。
踊りたい気分だ!そんな最高潮の胸の高鳴りのまま、扉をそっと開けた。
開いた扉の向こう側。大好きな彼が微笑んでそこに立っていた。

 

「ひ、久しぶりだな・・・っ」


「・・・・・・あぁ。会いたかったよ・・」


「・・・うん!私も・・・!」

 

アスランがとっても嬉しいことを言ってくれたから、私はとくに何も考えることなく同じ気持ちだったことを伝えた。
後々考えて見れば・・・すごーく恥ずかしいことをさらリと言っちゃった。
私を見て、笑っていてくれるアスラン。
気恥ずかしくて、まだ慣れない時間。
でも、すごく優しい幸せな時間。

「と、とりあえず・・・、中に入って!お茶いれるからさ!」
「うん、ありがとう」

ふんわり微笑んでからアスランが私に続いて家の中へ。
脱いだ靴をきちんと揃えてから上がる。
こういうところ、見習わなくちゃ・・・!
でも、辺りをきょろきょろ見まわして・・・緊張してるのかな?可愛いや!

「ソファーに座ってくつろいでてくれ。今、お茶もってくるな」
「あぁ」

アスランがソファーに座ったのを見て、私はキッチンへ行き、さっき用意していたお茶を淹れた。
温めたカップだとお茶はおいしいんだ!
クッキーもお皿に移して、完璧!
それをお盆の上に載せてアスランのいるリビングへ戻った。

「おまたせ!」
「いや・・・ありがとう」

ティーカップとポットとクッキーをいれた皿をテーブルの上に置く。

「あ、紅茶でよかったか?」
「あぁ。カガリが淹れてくれるなら何でも嬉しいよ」
「そ、そうか・・・!よかった!」

お父様も紅茶よりはコーヒーのほうをよく口にするから、
男の人は紅茶よりもコーヒーのほうがよかったかな、と思ったけれど、アスランの一言がすごく嬉しかった。
本当はコーヒーが好きだったとしても、その言葉をいったその瞳に嘘はなかったからすごくすごく嬉しかったんだ。

じっとこっちを見ている彼。
あ、また優しい時間だ。

「も、もう!こっちばっかり見るなよな!」
「ごめん・・・つい・・・」

あんまりアスランがじっと見ているから、私はその場を取り繕うようにポットに手を伸ばして紅茶を淹れる。
大好きな人にお茶を淹れてあげるなんて緊張で手が震えるかなとも思ったけれど、
なんとかいつものように上手く淹れることができた。
カップを渡そうとしたら、アスランがまだこっちを見ていることに気付いて、
恥ずかしさでちょっと声を大きく張り上げてしまう。


「・・・・・・ほ!ほら!お茶、淹れたぞ!」


「ありがとう」


ちょっと乱暴な言い方にも、アスランは優しく答え返してくれる。
彼の優しさは本当に温かい。あぁ、今、私が1人占めしちゃってるんだ・・・なんだか嬉しいなっ
今度は私がアスランをじっと見つめる番だった。
私の淹れた紅茶がアスランの喉を通ったのを見て、私は彼の第1声を待つ。


「美味しいな・・・!」


望んでいた彼の言葉に、私の身体は宙に浮いちゃったかもしれない!
だって、美味しいって!


「だろう?おまえのために淹れたんだからなっ」


絶対、美味しいはずだよ。こんなに心をこめたお茶なんて初めてなんだから!


「ありがとう・・・本当に美味しいよ。カガリの想いがこもってるからかな?」
「!!」

アスランのその言葉で私は気付く。

私・・・今、とんでもなく恥ずかしい発言をしちゃったかも・・・!

さっきの台詞って、私がアスランを好きで好きでたまらないからこのお茶は美味しいんだ!!
って言ってるようなもんじゃないか〜!
この恥ずかしさをごまかそうと、私は何か話題を必死に探す。
そういえば、と、
今日、彼が持ってくるはずの大切なものを思い出した。


「そ、そうだ!!ペンダント・・・ハウメア!持ってきたんだろう・・?」


そう尋ねるとアスランがゆっくり立ち上がる。
そうして送った時と同じ箱をそのまま取りだし、その箱をあけハウメアを手に取った。
私がアスランの傍によると、差し出していた私の手にハウメアをそっと置く。
少しだけ、長く綺麗なあったかい指が触れて・・・ドキっとした。

 

今の、ドキッとしちゃったの、気付かれちゃったかなとアスランを見上げる。
そうしたら、ばれていたのかはわからなかったけれど、アスランはにこりと微笑んでくれた。
男の癖にどこか儚げで、綺麗な笑み。これが大好きなんだ。

 


「おまえ・・・危なっかしい。護ってもらえ」

 


やっぱり可愛い言い方なんてできずに、それでもたくさんの想いをこめた。
少し踵をあげて、背の高い彼の首に、私が送ったペンダントをかける。
これを送った時の私は、知らなかった。
彼をこんなにも好きになるなんて、誰が予想していただろうか?
でもわずかな時間だったとしても、彼と過ごした時が世界中で一番大切になってしまった。


好きだ、って、
そんな気持ちをこめた。


泣きそうになるほどの愛しい想い。
でも、ハウメアの赤い石が微笑んでるかのように輝いている。だから私も微笑んだ。

 

 

その瞬間、何かが私を包み込む。

 

 

 

「・・・え?」

 

 

 

一瞬、自分の身に何が起きたのかわからなかった。
けれど、その温かさに、気付く。
アスランが私を抱きしめているのだ。

 

 

 

「ありがとう・・・カガリ・・・」

 

 

「アスラ・・・!」

 

 

抱きしめられていると気付いてしまえば、不思議な混乱と興奮と、それでいて大きな感動が私を包み込む。
なんだかそこに、私とおなじ「好き」って気持ちがこめられているような気がして・・・泣きそうになった。

彼の腕がゆっくりと私の身体を離す。
けれど両肩だけはしっかりとその手で繋ぎ止められて・・・
アスランのまっすぐな瞳が私を捉えている。
なんだか吸いこまれそうなほどに、私を見ていてくれている。

 

「カガリ・・・」

 

アスランの、真摯な瞳が、私に何か伝えようとした・・・

 

 

 


「ま!まぁまぁまぁまぁ!!」

 


「「へ??」」

 

 

 

 

2人、見事にシンクロしたまぬけ声。
そしてそのまま振り返ると・・・

 

「お嬢さま、すみません〜!わたくし忘れ物しちゃいまして・・・」


「マ、マ、マーナ!!」

 

百貨店で楽しくお買い物中のはずの乳母がそこに立っていた。
申し訳なさそうにぺこりと頭を下げて、
私の肩を掴んでいたアスランも、癖なのか呆然としたままぺこりと頭を下げる。

「わたくしはすぐに家を出ますので・・・どうぞどうぞ、さ、続きを〜」
「え!?い、いや!!その・・・!!」

アスランが私の肩を慌てて離した。
私もばっと彼から身体を離す。
互いに何を言っていいのかわからずに、もじもじしているとマーナがまたお辞儀をして言う。

「それでは、ごゆっくり〜」

それにまたアスランもお辞儀し返していた。
・・・どこまで礼儀正しいんだ、おまえは。すごいぞ。
部屋を出ていったマーナの含み笑いが気になった。
あぁ、もう、絶対、絶対!帰ってきたらからかわれるよ!!
・・・今から覚悟しておかなくっちゃ。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

この場の雰囲気が甘酸っぱいのに別の意味で恥ずかしくてたまらなくって、
2人とも真っ赤になって黙り込んでしまった。
ぎこちない動きになってしまいそうで、動かずにその場に立ち尽くす。

 

「・・・・さ、さ、さっきはごめん・・・!」

アスランが先に切り出した。

「あ!・・・い、いや!大丈夫だ!」

「そ、そ、そうか・・・!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

2人とも、無言のまま。
恥ずかしさで俯いていたけれど、顔をそっと上げてアスランの表情を伺ったら、
偶然にもアスランも顔を上げて、ちょうど視線がぶつかった。
その、私の目に映った真っ赤な顔に、私は噴出してしまった。

「・・・・・っふふ!アスラン、真っ赤!」
「・・・・か、カガリだって!」
「アスランのほうが!」
「カガリが赤いって」

ぎこちない空気はどこかへ消え去った。
アスランと私は笑い合って、2階の部屋でゆっくりすることにした。
自然に、私はその手をとって、アスランに自分の部屋を案内した。

 

 

 

 

私の部屋での2人きりの時間は、とてもとても幸せだった。
時折、アスランが私の手をぎゅっと握ってきてくれる。
かと思えばすごく優しい瞳で見つめてくれて、髪に触れてきたり・・・
も、もう!恥ずかしいやつだな!・・でも嬉しいぞ?
アスランににっこり笑ってみせた。彼の瞳に可愛く映っていてくれればいいな。

時間が来てアスランが帰ることになった時、すごく寂しかったけど・・・
「また、遊びにきてもいい?」
って聞いてくれて、私の寂しいっていう不機嫌は直っちゃった!
もちろん、いつでも!と答えたら、アスランも嬉しそうに笑ってくれる。
そんなアスランに私は駅まで送ると言ったけれど、帰りが危なくなるからここでいい、と。
私のことを思っていてくれている彼の言葉に、今回は素直に頷く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランが帰ってから1時間半ほど後、マーナが帰ってきた。
静かに遠慮がちに「ただいま戻りました〜」と言ったところを見ると、
まだ私がアスランといっしょにいると思っていたのだろう。
アスランが帰ったということを知ると、次に好奇心旺盛な彼女は私に質問を投げかけてくる。
変なことを聞かれる前に、私は自室へ避難した。

部屋に戻って携帯をいじってみる。
アスラン、もう帰ったかな?無事、家についたかな?と心配になって電話をかけてみた。
コール音5回目で彼が出た。

 

『もしもし、カガリ?』


ふわりと優しい彼の声に、さっき会ったばかりだというのに会えない時間が随分長い気がした。
それほど彼の声を聞いていたいと思うんだ。


「もしもし!アスラン、もう家にいるのか?」
『あぁ、今日はありがとう。すごく楽しかった』
「へへへ、私もだ!」


楽しかったといってもらえて、ほっとした。
自分だけはしゃいじゃってたかな?ってそう思ったりもしたから。
そんな不安をよそに・・・いつも義理堅い彼はこう言い出す。


『よかったら今日のお礼に・・・来週末はどこかで会わないか?』
「え!お礼なんていいよ・・・!」
『そ、そうか・・・』


なんだかいつものパターンになりそうだ。
きっと彼はしょんぼりと寂しそうにしている。自惚れやの私。アスランが大好きな私。


「で、でも!会いたいな!・・・いいか?」
『も、もちろん!』


会いたい、と伝えれば喜んでくれる。
会いたい、と返してくれる。
そんな小さな問いかけと答えが、胸を弾ませてくれる。
私の心を見透かしたのか、アスランの声のトーンが少しあがったまま、


『それじゃ来週の日曜日に出かけよう。どこに行きたい?』


と尋ねてくれた。
行きたい場所はたくさんありすぎて・・・1つに決めるのがとっても難しい。
ぶらぶら街中を散歩するだけでもすごく楽しいけど・・・たしかアスランって・・・


「どこでもいいけど・・・アスラン、パソコン詳しいよな?」
『うん・・・すごく、ではないけど』
「私、パソコン見てみたいんだ!いいか?」
『あぁ、じゃあいい店探しておくよ』


私の提案に即答してくれた彼。優しいな、とっても。
日曜日が楽しみだ!すごく!!


「ありがと!楽しみだなぁ・・・私、男の人と出かけるのってアスランと初めてだけど、すごく楽しいから!」
『え!?』
「・・・え?」
アスランの不思議な返答。
私、何か変なこと言ったかな・・・?と思ってると、アスランが口篭もりながら切り出す。
『あ・・・いや、その・・・、俺とが・・・初めて?出かけるの・・・って』
「あ、うん。キラとは遊びに行った事あるけど・・・あとはみーんな女友達!」
『そ、そうか!!』
随分、輝いたような声色になったから、ちょっと意地悪。
「あ、なんだよぉ〜、おまえバカにしてる?」
『ち、違う!』
「ふふふ!冗談だよっ」
知ってるよ。喜んでくれたんだろう?私ってやっぱり自惚れやかな?
だって、わかるんだ。


私がアスランのこと、大好きだから、アスランの気持ちもわかる気がするんだ。

 

 

ちょっと早い「おやすみ」を言い合って電話を切った後も、胸がドキドキ鳴っている。

アスランみたいな素敵な人に私が似合うかどうかはわからない・・・
むしろ、似合わない、って言われそう。
それでも大好きなんだ。

 

 

彼に、想いを伝えたい。

 

 

こんなこと初めてで、だからこそどうしていいのかわからないけど、
それでも今ある想いが爆発しそうで黙っていられないんだ。

「・・・日曜日・・・か」

とびきりおしゃれしてびっくりさせて、そうして「好きだ!」って伝えよう。

もしこの恋が叶ったら・・・私はアスランを世界一大切にしてあげるんだ。

「日曜・・・早く・・・こないかな?」

ちょっと怖い気もするけど、その日に想いを馳せる。
楽しみでしょうがない。幸せでしょうがない。

 

 

 

次に会う時、私はアスランに想いを伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

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