親友談義 ラクス・クライン編

 

 

 

 

 


4月にやってくる行事はたくさんあります。
その中でもこれは人生の中でもとても大きなこと。

新しい制服に身を包むと気分が晴れやかになります。そう、入学式なのです。

 

校舎を賑わす生徒たちの1人のわたくし。
もっとも・・・わたくしは1人でこの桜並木を歩いてますが・・・。
ここから新しい生活が始まるのです。それは喜びとともに不安もある生活。
人付き合いが苦手なわたくしはここでうまくやっていけるのでしょうか・・・?

学園に続くここの桜並木はとても有名で、その美しい桜の花びらが舞っています。
見上げるそれと、同じ色をした自分の髪が嫌いでした。
男の方と視線があうと、ぱっとその視線を逸らされてしまいます。
先ほどからこちらに向けられる周りの方たちの視線の理由・・・それは問い掛けなくてもわかります。
それが悲しくて・・・だからわたくしの俯き癖ができてしまったのですから。

 

だって、珍しいんですもの。この桃色の髪が。

 

見られてしまうのは慣れっこなのです。が、やはりいい気分はしません。
けれどそれを口にする勇気もない、臆病者。
だからいつまでたっても心から大好きと、大切と思えるお友達を作ることも出来ないのです。

・・・なんだかこんなことを考えていたら、悲しい気持ちでもっと俯きたくなります。

 

 

ふと、目の前にいた男子生徒がじっとこちらを向いていることに気付きました。
どちら様でしょうか?会ったことはないと思うのですが・・・
まぁ・・・困りましたわ。
ここまでじっと、はっきりと見られてることがわかるのは初めてで・・・
でも、しっかりとこちらを捉えていて・・・それが逸れることはありませんでした。
けれど何故だか今回はわたくしが、かち合った視線を逸らしてしまいました。

 

そのまま、何事もなかったかのように通りすぎようとしたのですけれど・・・

 

「綺麗だね」

 

すれ違う時に声をかけられてしまいましたの。

 

「・・・え、えぇ、とても。・・・満開ですから・・・」

 

無視するのはいけないことです。傷ついてしまいます。だからわたくしもお返事をいたしました。
そうすると彼はにっこり笑ってこう言うのです。

 

「違うよ」
「え?」
「君の髪が、綺麗だねって」

 

一瞬、私は返す言葉に詰まりました。
それに気付かず微笑む、名前も知らない彼。

 

「あ・・・、珍しいだけです・・・」

 

はっと我にかえって、返事を待っている彼に、自分自身を卑下するかのように言ってしまいました。
自信なんてもの持てません。
ずっと、好奇の目で見られてきたのですもの・・・
でも誰もそれを認めないんです。
珍しいから、と言えば、そんなことはない、と。
絡まっている視線が物語っているというのに・・・認めてくれないのです。それがまた辛かったのです。
彼もきっと、そんなことはない、と気休めの言葉をくださるのでしょう。
そう言われたら、1度だけ微笑んですぐに立ち去ろうと思いました。
けれど彼がくれた言葉は、わたくしが思っていたものとは全く違うものでした。

 

「うん、そうだね。すごく珍しいよね?」


「え?」

 

微笑む準備をしていたのに、彼の予想していなかった台詞に、わたくしは微笑むことさえ忘れてしまいました。
ぽかんとしていたわたくし。そんな姿を見て、彼は笑いながら、また、言いました。

 

「でも、綺麗だよ」

 

裏表のある言葉、取り繕うような言葉・・・そんなものとは正反対の、響き。
まっすぐな、まっすぐな綺麗な瞳―――

 

同じ台詞でもこうも違うものでしょうか?
いつももらっている嘘の言葉と、初めてもらった本当の言葉。

わたくし人の瞳を見るのが苦手なくせに、人を見る瞳だけは持ってますの。
まっすぐに射抜くような綺麗な紫水晶の瞳に、私は言葉を失いました。

 

「あ、いけない。行かなくちゃ・・・それじゃ、またね」

 

彼はまた、ふわりと笑いました。
男の方にしてはとても可愛らしい笑い方に、わたくしも、微笑む準備なんて必要ないくらい自然に、
そっとふんわりと微笑み返す事ができたのです。

 

走り出した彼が、1度だけ振り返りました。
わたくしに向かって手を振ってます。
やはりそれは、男の方とは思えない、とても可愛らしい仕草で・・・
わたくしの心を優しく揺らしました。

 

 


それがきっと、わたくしの初めての恋でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A

 


新たな学生生活を始める場所はA組になりました。
クラス分けの掲示板にはそう書かれてあったので、早速そちらに向かったのです。


同じ中学からこちらの学園に来た子は1人もいなかったので、文字通り一からのスタートです。
もともとお友達が少ないわたくしには、たとえ同じ中学の方がいらしてもお友達だったのかはわかりませんが・・・
なんだか自分で言って悲しくなってきましたわ。
これから、頑張るんですもの!


それに・・・もしかしたら先ほどお会いした方にまた会えるかもしれないんですから。

 

 

そんな決意を胸に、A組へ。
教室の扉を最初に開けるのは緊張しますわね・・・。皆さんもそうなのかしら?
ゆっくり開けると、独特の音を鳴らしながら扉は開きました。
深呼吸をします。これから、どうぞ宜しくお願いします。
心の中でそう唱えます。・・・心の中で唱えたってどうなるものでもないのですが・・・
きょろきょろ教室内を見まわせば、ほとんどの生徒さんが椅子にもう座っていました。
どうやらわたくしはちょっと遅かったようです。
いくつか席は開いてますが、どこに座っていいのかがわかりませんでした。


「あ、あの・・・席はどこへ座ればよいのでしょうか・・・?」


扉に一番近かった赤毛の穏やかそうな男の方に聞いてみました。


「あ、今はどこでもいいと思いますよ」
「そうですか・・・ありがとうございます」


とても丁寧な方ですわ・・・同じ年のわたくしに敬語だなんて・・・
あら?わたくしも敬語ですわね・・・?
でもこの方とは・・・男の方ですが、よいお友達になれそうな気がします。
わたくしだけでなく、この方もそう思っていてくれれば本当に嬉しいです。

 


わたくしは言われたとおり、教卓に一番近い席に着きました。
みなさんどうやら1番前のこの辺りの席はお嫌のようです。
なぜならこの1番前の席に空席が多いんですもの。ここが一番お勉強しやすく、黒板が見やすいですのにね。
くすりと笑って私は、鞄の中から読みかけの小説を取り出しました。
読んでいたところにはさんでいた花の栞のあるページをひらき、文字を追っていきました。

本を読むのは大好きです。
お友達が・・・少なかったせいで好きになったというところも少しはありますが・・・
でも、それでも大好きです。
知らなかった世界をたくさん教えてくださいますもの。
この本はその中でも、五本の指に入るほどのお気に入りになりそうです。
他には何も見えずに読みふけろうとした時、残念なことにチャイムが鳴ってしまったので、
栞をページに挟みこんでから閉じ、また鞄の中にしまいました。
本を読んでいたのでわからなかったのですが、このクラスのほとんどの生徒さんがもうすでに着席していました。
今日はHRとご挨拶だけですが、やはり緊張します。
がやがやとしていた教室も少しずつ静かになっていきます。
どんな先生がいらっしゃるのでしょうか。
そう思いながら、扉のほうをじっと見ていました。


そんなわたくしの目と耳に、とても驚く出来事がおこったのです。

 


「間に合ったーーッッ!!!!!!」

 


がらり、ではなく、それはもう、どがーん、と怪獣映画に出てきそうなほどの大きな音。そして声。
一瞬で教室を賑やかに騒がしくする、女性の方の声でした。
制服を着てらっしゃいますので、このクラスの生徒さんですわ。
わたくしも心の底からびっくりして飛びあがってしまうかと思いましたの。

 

その、大きな声を出した方は、つかつかとこちらに歩み寄ります。

 

「ここ、空いてるか?」
「え、えぇ」
「じゃ、ここに決まりッ!」

 

そう言って、わたくしのすぐ隣に座ったのは、太陽のような金色の髪と琥珀の瞳をもった方。
こうやって見ると、先ほどの
あの大声を出したのが嘘のように華奢ですらりとしたすごく綺麗な人。
モデルさんみたいですわ。本当にお綺麗・・・。
驚きと憧れのような思いから、失礼ながらじっと見てしまっていました。
それに気付いた、この方が右手を差し出します。


「あ、私カガリって言うんだ!よろしくな!」
「あ、わ、わたくしはラクス・クラインと申します。宜しくお願いいたしますわ・・・っ」


慌ててその手を握り返しました。
ぎゅっと、ちょっと痛いくらいにしっかりと握られたわたくしの右手。
でもとても温かかったのです。

気付けばわたくしは、顔をあげて、彼女の瞳に魅入っていました。

 

 

 

 

 


担任の先生の挨拶と、生徒同士の挨拶が終わった頃、カガリさんはすでに人気者でした。
わたくしにはない魅力が羨ましくも思いつつ、帰り支度をしていたわたくしにカガリさんが声をかけてくださいます。

「綺麗な髪だよな!」
「え?」

今日は不思議な日です。
一日に2度も同じことを言われるなんて・・・
嬉しいはずなのに、つい癖でわたくしはまた言ってしまいました。

「珍しいだけです・・・」
「そうだよな〜!すごく珍しい!見たことないぞー」

彼女はお世辞が苦手のようです。はっきり言われてわたくしは苦笑しました。
けれども、苦い気持ちが心を支配する事はありませんでした。
本当に不思議な日です。こんなことが2度も起こるなんて。

「・・・触ってもいいか?」
「え、えぇ・・・」

わたくしが頷くと、カガリさんはぱぁっと笑顔になってそっとわたくしの髪に触れてきました。
まるで壊れ物に触れるかのように・・・それがちょっとくすぐったかったです。

「いいなぁ、ふわふわ!きれーい!」

にこにこ、その笑顔はまるで本物の太陽。
あまりにも直球のその言葉に、わたくしは紅くなるばかりです。
お世辞なんて何一つもないと言う事がわかる分、それがくすぐったくてたまりません。
わたくしの心は踊りました。

本当に、本当に不思議な日。

 


それがわたくしの、カガリさんとの初めての出会い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


B

 

ほんの短い間にわたくしはカガリさんの温かい心に引っ張られるかのように心からの笑顔を覚え、
勝手ながらカガリさんを大好きになり、カガリさんがわたくしの大切な人になりました。

学園生活にいい意味で緊張が抜け切る4日目。
お昼休みも終わる頃、カガリさんのもとにある方がやってきたのです。

 

「あらあら、アスランでしたのね・・・!」

 

ちょっとした驚きがあったとき、頬に手をあてるのはわたくしの癖の1つです。
今がまさにそれです。
カガリさんの話題によく出てくる幼馴染の男性。
今、「こいつだ!」と元気よく幼馴染さんを紹介されたのですが・・・その方は、わたくしも知っている方でした。


アスラン・ザラさん。
お父様のお仕事の関係で、家族を連れてのパーティの時に何度かお会いしたことがある方でした。
一方のアスランも驚いた顔をしてこちらを見ています。
それはそうかもしれません。
小さい時から顔を合わせていても、話したことはほんのわずか。
互いにどこの学校に行っているとか、どこの高校に行く事になった、なんてお話はしたこともありませんでしたもの。
こう言っては失礼ですが・・・アスランもわたくしと同じく人に対して壁を作ってしまわれる方だと思います。

「な、なんだよ・・・知り合いだったのか、アスランっ」
「あ、あぁ・・・ご、ごめん・・・っ」

カガリさんのその言い方と、アスランのその返事の仕方が・・・
まるで夫婦のようでしたの。
例えて言うなら・・・はしたないですが妻に内緒で他の女性とお食事をした夫のいいわけ、みたいな・・・
でも夫は妻一筋で怒られることをした自覚がない感じがしますわ。
どちらにせよ熱々カップル・・・とでもいうのかしら?
・・・今度、こんなほのぼのしたお話の小説を探してみたいですわね。

 

「な、なぁ・・・どういう知り合いなんだ・・・っ」

 

カガリさんがわたくしの顔色を覗っております。
・・・珍しいことですわ。
わたくしがカガリさんと知り合ってまだほんのわずかですから、
わたくしがカガリさんのことを何でも知っているような口を聞くのはよくありませんが・・・
それでも珍しいと感じました。

ちゃんと説明してさしあげようと、わたくしが口を開こうとしたら困ったことにチャイムが鳴ったのです。

「あ!俺戻らないと・・・!」
「そ、そうか・・・じゃ、またな、アスラン」
「ごきげんよう、アスラン」

手をふったカガリさんと、お辞儀をしたわたくし。
アスランは駆け出すようにA組の教室を出て行きました。
そのすぐ後に先生がいらっしゃって・・・わたくしはさっきのこと説明するタイミングを逃してしまったのです。

 

 

 

そして放課後になりました。
掃除当番のわたくしは、床を箒で掃いていました。
当番でなければカガリさんにゆっくりお話する時間もできたかもしれませんが・・・
我侭をいってやらなくてはいけないことをさぼってしまうのはよくありません。

それでもやっぱりカガリさんのことが気になります・・・
掃除が終わるまで待っていてもらおうとも思いましたが・・・
わたくしからそんなお願い事されてもカガリさんにはきっと迷惑で面倒なだけでしょう。

 

「はぁ・・・」

 

こういう時、世の中のお友達同士の方はどうするのでしょうか?
待っていて、と一言言えば済む事なのに、お友達なのかもどうかわからないわたくしとしては・・・
いえ、わたくしはカガリさんのことを大切な大切なお友達だと思っています。
けれど相手もそうだとは限らないのです。
そのことがわたくしの心の中を重くしていました。

 

箒掛けを終えると、わたくしは掃除道具をもとあった場所へと戻しました。
机を男子生徒が運んでくださって、掃除はきちんと終えることができました。

わたくしも帰らなくては、と鞄に手をかけて廊下に出ると、そこに見知った方が立っていらっしゃったのです。

「あ、ラクス・・・」
「カガリさん・・・?」

カガリさんが廊下にいたのです。
わたくしは駆け寄りました。
掃除の間、ずっとここにいたようです。

「ラクスを待ってたんだ」
「わたくしを?まぁ、なんでしょう?」

カガリさんがわたくしに用事があるようで・・・わたくしは嬉しくなってしまいました。
けれど・・・カガリさんのお顔は暗く、ご気分が優れないようなようで・・・
何かあったのでしょうか・・・?心配です・・・。

「どうかされましたか・・・?」
「えと・・・ここじゃなんだから・・・ちょっと、こっちに」

そう言われてカガリさんに誰もいない階段のところまで連れていってもらいました。


立ち止まった2人。
カガリさんはわたくしの顔を見ながら、あれでもない、これでもないと呟いています。
もしかして・・・わたくしに何か言いたいことがあるんでしょうか・・・?
・・・わたくしに、何か至らないところでもあったのですか?
不安になります。だってわたくしには、自慢できるところなんてありませんもの・・・。
知らずにカガリさんに対してひどい事をしてしまっていたかもしれません。
傷つけてしまったかも・・・
わたくしの心臓が怖くてドキドキと鳴ります。

 

「カガリさん・・・」


「ごめん!単刀直入に言うぞ・・・っ」

 

あぁ・・・わたくしとは友達なんてやっていられない、ときっとそう言われるのでしょう。
覚悟をしつつも、どうしてもこれだけは素直に認めたくありませんでした。

だから、わたくしは叫んだのです。そして同時にカガリさんも叫んだのです。

 

 

「わ、わたくしはカガリさんとお友達になりたいのです!!」

 


「ラクスはアスランのことが好きなのか!?」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「え?」

 

「え?」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 


気まずいような、むず痒いような、ちょっとおかしな空気が2人の間に流れました。
だって、カガリさんが言ったこと、絶対あり得ないことだったんですもの。
でもカガリさんもわたくしと同じような反応です。
・・・カガリさんにとっても・・・わたくしとお友達になるのは・・・ありえない事、なのでしょうか・・・。
とても寂しくて、それに気付いたわたくしはまた俯き癖が復活してしまいそうでした。

けれど、カガリさんは、声を荒げて言います。

 

「私たち、もう友達だぞ!!」


「・・・!ま、まぁ・・・!」

 

カガリさんが仰ってくださった言葉、それは本当に本当に私が望んでいた言葉。
嬉しさでわたくしはほうけてしまいます。
ぼうっと口をあけて、多分、とてもおかしな顔をしていたと思いますわ。

 

「・・・嬉しいですわ・・・!」

 

やっとのことで、わたくしの口から素直な感想が出てきてくれました。
カガリさんはにこっと笑って、わたくしも微笑み返します。

 

わたくしは知りませんでした。
お友達とはこうやってできるもの・・・いいえ、きっと握手をしたあの時から、
カガリさんとはお友達になることができていたのですね。
それなのに、それさえも気付かなかった自分が恥ずかしくて・・・もう1度、カガリさんに向けて微笑み返しました。

するとカガリさんは真剣な顔になって・・・おずおずと尋ねてきました。

「その・・・さっきの、質問、答えてもらってもいい・・かな?」
「え?先ほどの・・・?」

あら?何か尋ねられましたでしょうか?
お友達と言われて舞いあがっていましたが・・・ちゃんと思い出さなくては。
先ほど・・・先ほど・・・カガリさんがわたくしに尋ねてきたこと・・・

 

・・・・・・・・。

 

―――ラクスはアスランのことが好きなのか!?―――

 

 

「まぁ!あり得ませんわ!」

 

 

わたくしの大声に、カガリさんがびっくりされたようです。
目を見開いてこちらを見ています。
わたくしは自分自信を落ちつかせて、カガリさんに伝えました。

「あり得ないことですわ。わたくし、アスランとは父親同士が知り合いなだけですもの」
「そ、そうなのか・・・!?」
「えぇ」

しっかり頷くと、カガリさんがやっと笑顔になってくれました。
けれどまたすぐに真剣なお顔に戻って、

「・・・ラクスが男の名前を呼び捨てで言ってるのって初めて聞いたからさ〜・・・てっきり・・・」と。

どうやら、てっきり誤解されてしまっていたようですわね。
わたくしとしたことが・・・いけませんでした。
カガリさんが幼馴染さんのことを好きだというのは、それを言葉にしなくてもお話を聞いていくうちに気付いていたことです。
だからこそわたくしとアスランが知り合いだったことも気になさることのはずなのに、
そんなことにさえ気付けずにいた自分が情けないです。


それなら今はせめて、カガリさんをちゃんと安心させてあげたいです。

「アスランとは小さい頃にお会いしたのでわたくしも考えなしに呼び捨てで呼んだのが今も続いてるだけで」
「・・・そ、そうなのか?」
「えぇ。・・・そうですわね・・・癖?ですか?あんまり考えないですわ」
「癖!?・・・っぷ!!あははははは!」

カガリさんが大声で笑い出しました。
あぁ・・・よかった。笑ってくれて。こんなカガリさんが大好きです。
元気よく笑って、はしゃぐ、彼女に憧れます。

 

これはまるで初恋でしょうか?
そういえば女子というものは、淡い恋心を憧れの人に重ねるとも聞いた事があります。
まさしく、それ、でしょうか?

 

「じゃあさ!私も呼び捨てで呼べよ?」
「え!?」
「ほら!」
「あ・・・はいっ」

カガリさんがわたくしを急かします。
ちらりと表情をお伺いすると・・・まっすぐで綺麗な琥珀の瞳がこちらに向いていてーーー

「・・・か、か、か、か、かが・・・」
「ん」
「かが・・・かが・・・カガリ・・・・・・・・・・・・・・・さん」
「もぉ!」

だってすごくすごく恥ずかしいんですもの・・・!
カガリさんに見られていると思うと・・・!!
アスラン、と呼ぶのと比ではありませんわ!

 

それをまた口にすると、カガリさんはまた笑い出しました。

校内に響く、わたくしの耳に響くここちよいアルトの声。

わたくしを惹き付けてやまない方。

 

 


この方と、わたくしの本当の初恋の方が同じ血をわけていたと知るのはもう少しだけ後のこと。
けれど、気付いていたのかもしれませんわ。


だって、お二人ともとても温かい、まっすぐで綺麗な瞳だったんですもの!

 

 

 

 

 

 

 

END

BACK

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送