カガリ・ユラ・アスハの場合C

 

 

 

 

 

 

「お、おぉっとーーー!!こ、これは思ってもみない展開ですーーー!!」

 


ダコスタが騒ぎ出す。
会場も騒ぎ出す。

 

私は呆然唖然と椅子に座ったまま動けなくなる。
えっと・・・今、何が起きた?
会長が立ち上がってラクスに告白・・・ここまでは予定通りだよな?
そこでラクスが会長をふって、次に私の番だった。
キラがやってきたら、最後だし思いきり平手つきで決着つけてやろうかなぁとか思ってたんだけど・・・

 

あれ?どうなってるんだ?


キラがラクスに告白して・・・
ラクスがそれを受けとって・・・

2人は・・・恋人・・・?

 


「え、えーーーーーーー!!??」

 

私の大声に、先ほどまでキラとラクスに向かっていた客の視線がこちらに向けられる。
私は慌てて口元をおさえ、真っ赤になって黙り込んだ。

 

だって、だって、だってだってだって!!!

 

キラがラクスに告白しちゃったんだぞ!
それをラクスが受けちゃったんだぞ!?
2人は両思いだったのかよ・・・っ
わ、私・・・気付かなかった・・・!!

なんだかすごくショックだった。知らなかった自分が悔しい。
だって、大好きな友達と大好きな弟のことだったから・・・。
あぁ・・・だから、ラクス、あんなにキラに告白されるのイヤがってたのかな・・・?

 


「と、とにかく、おめでとうございますーーー!!」

 


会場はお祝い・・・というよりも、会長がふられたことの衝撃のほうが大きかったらしい。
しかも相手はラクスだ。2年生で一番可愛いんだぞ!
そのせいか拍手で祝いはなく、がやがやした雰囲気になっていた。
ダコスタが必死になって盛り上げようとはしているものの・・・これを治めるのは難しいんじゃないか?

だって、あの会長がふられちゃったんだもん。
そして・・・言っちゃ悪いけど・・キラが選ばれちゃったんだもんなぁ・・・。
世の中って不思議だよな。うん。

 

そういえば・・・私ってこのまま一人?
・・・どうせ私みたいなやつに告白する人間なんていないから、こういうオチがついてもしょうがないけどさ。
キラは約束破ったってことで、特大パフェ奢ってもらおう!それで許すぞ!


そんな私はともかくとして・・・予定が大きく狂ってしまったせいで、ダコスタが慌てふためいていた。
こういう予想外のことに弱そうだもんなーダコスタって。

「え、えっと・・・」

司会進行表でこういう時どうすればいいのか確認しているが・・・
まさか、こんなことになるだなんて誰も予想してなかったんだろう。
言葉につまるだけで、実に頼りない。

 

そんなダコスタのもとに、ある人物が近づいてくる。
堂々と、今、振られたことが嘘のように、それはもう胸をはって・・・
ダコスタのマイクを奪ってその人物は叫んだ。

 

「おまえら、よく聞けーーー!!!!」

 

よく通る声が、マイクを通じてこの体育館内に響き渡る。
その声はまさしく鶴の一声・・・?ざわざわがやがや騒いでいた会場内が静まり返る。
すぅっと息を吸った会長、今度は打って変わって憂いを帯びた表情にかわった。
あ、この人って俳優にもなれるんじゃないのか?

 

「人生、ふられて人は成長していくんだ・・・」

 

客席に座っていた女の子から「きゃー、ステキー!」という黄色い声援が掛けられる。
それに手をふって答えて、話は続けられる。

 

「今、たった今、辛い恋をしてるカワイ子ちゃんたち・・・諦めるんじゃない!」

 

妙に説得力のある素晴らしいマイクパフォーマンスに、自然に拍手が漏れてくる。
私の両手も気付けばぱちぱちと重ね合わせていた。

 

「俺は諦めない・・・!!」

 

マイクを握り締めたまま、堂々としたその人・・・ハイネ会長はある一点を見据えた。
その、ある一点というのが・・・私だということにはすぐ気付いてしまう。

 

 

「え?え?え?」

 

 

そのまま彼はこちらへ向かってやってきた。
赤い薔薇の花が、歩くたびに揺れている。
私の心も揺れている。

 

 

 

 

「カガリちゃん・・・俺と真剣にお付き合いしてください!!」

 

 

 

 

 


ピーーーーーーーィィィ・・・・

 


と、ハウリング。


アスラン、まだ居たんだな・・・。
ばっと耳を塞いだ私。けれど、会長はこの音にも負けず真剣な目でこちらを見ている。

 

 

「ア、あの・・・あの・・・ッ」


「・・・俺じゃダメかな・・・?」

 

憂いを帯びた目が、まっすぐこちらに。
そ、そうだ・・・っ
これは1人だけ告白されずにいた私のためを思って言ってくれてるんだ・・・!
客席の女の子たちから悲鳴とも思える声が上がり続ける。
私の心拍数も上がり続ける。

 

ステキな人だ。私にはもったいないくらい、優しくて男前で・・・ステキな人なんだ。

 

 

 

 

でも・・・


私にはもっとステキな人がいるんだ。
ごめんなさい。

 

 

 

 

椅子から立ち上がり、断ろうとしたら、それより先に会長の手が伸びてくる。
え?と思う間もなく顎にその手がかかり、上を向かされる。

きゃー、と言う甲高い声がした。客席の女の子の声だ。
でももう、今は、そんなものどうでもいい。問題はそんなところにあるんじゃない。

 

近づいてくる、端整な顔。
女の子なら誰もが1度は憧れる、その人の顔―――

 


―――キ、キスされる・・・!?

 


そう思った時、私の拳は勝手に動いてしまった。

 

 

 

 

 

 


「わ、わたしのファーストキスはアスランって決めてるんだッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

ガッツーンと音を立てて、私の右ストレートが見事会長の左頬に炸裂した。
そして次には・・・・

 


<<か、カガリィィィィィ!!!今そっちに・・・ッ>>


<<お、落ちついて・・・こら、バカッ!!だ、誰か掴まえてーッ>>

 


・・・・・・・・・・・・。

 

「「「「「あははははははは!!!!!」」」」」

 

3拍置いたところで会場、爆笑。

 


「もーいやぁぁぁぁぁ!!!!」

 


私は舞台袖へ恥ずかしさにより逃げ去り体育館から逃亡。

 

 

 

 

走り去った体育館から、
「と、とにかく、アスランさんおめでとうございまーすーー!」
なんて、予備のマイクから聞こえるダコスタの慌てた声が。
あぁ、ごめん、ダコスタ!一番の予定外は私だった!

 

 

そして会長ごめんなさい!!!

 

 

 

 

 

 

 

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