カガリ・ユラ・アスハの場合B

 

 

 

 

 

 

舞台上の袖からこっそり体育館の様子を覗ってみる。
がやがや騒ぎ出してきたから、お客さんも随分集まってるんじゃないかと思っていたが、
やはりたくさんの人が体育館の椅子に腰掛け楽しそうに談笑していたりする。

 

今更ながらに、この舞台にあがるというのがとてつもない緊張感をもたらしてくれる。
あの時はハイネ会長の見事な誘いに頷いてしまったが、やはり場違いなんじゃないだろうか?
出場してる女の子はみんな可愛い子だった。
なんせラクスだって出るんだぞ!私なんて絶対、客から缶を投げられそうだ・・・!
そうなったら立ち直れないかも・・・。


「カガリさん・・・あの・・・」


ぐたりと沈んでいた私に、声がかけられる。
このふわふわした可愛い声と、私のことを「さん」付けして呼ぶ子は一人だ。


「ん、どうしたんだ?ラクス」


振り向いて私に声をかけたラクスをみてみると、なんだか私以上に沈んだ表情だった。
あ、ラクス、私より緊張してるのかな・・・?
そうだよな。神経の図太さだけが取り柄!の私と違って、ラクスはもっと繊細なんだ。
私がしっかりしていなきゃ!
そう思い、ラクスにむかって笑いかけた。これで少しは安心してくれればいいんだけど・・・

「ヤマトさんが・・・わたくしに告白する方なのですか・・・?」
「・・・そうだぞ?」

手元にあるプログラム。
だいたいの段取りが掲載されているそれに目を通したのだろう。
もちろん私たちはイレギュラーな存在みたいなものだから、そのプログラムに名前こそ載ってはいなかった。
でもわからないことがあれば会長が丁寧に教えてくれたし、その辺に関しての不安はなかったのだけれど・・・

 

「・・・・」
「どうした?キラじゃ嫌か?」
「嫌・・ではありませんわ。でも・・・」
「なに?」
「そ、その・・あ!そう!同じ学年の方だと・・・なんだか断りにくくって・・・!」

 

・・・そうか。そうだよな。
私って本当にバカだなぁ。


会長とだとなんだか変に緊張させちゃうかなぁとか、
キラなら思いきりよく振ってもらってもよかったからと思って、ラクスにはキラでいいかなって思ったけど・・・
そうだよなぁ。同じ2年生なんだから、気をつけてあげなくちゃいけなかったんだ。

 

「わかった。会長に相談してみよう!」


「え、えぇ・・・」

 

私はラクスの白い手をとって、副会長と話し合い中の会長のもとへ。
私たちが声をかける前に、ハイネ会長は気付いてくれた。

「どうしたの?可愛らしく手、つないで?」
「あ、相談したいんですけど・・・今、いいですか?」
「いいよいいよ、どうせ大した話なんてしてないしー」

会長がとぼけるようにそう言ったが、そのすぐ横にいたダコスタが呆れたような・・・いや、
疲れたような表情をしたので、大した話、をしていたのだろう。
でも相変わらず会長は女の子優先だ。ここまでくるとスゴイと思うぞ。

「あの・・・会長がラクスに告白するのじゃダメですか・・・?」
「え?構わないけど・・・どうしたの?カガリちゃん俺じゃ嫌だった?」
「そういうわけじゃなくって・・・ただ、ラクスとキラだったら同じ2年生なんでこの後が顔会わせ辛くなっちゃうかなぁって・・・」

 

ラクスが俯いた。・・・本当にキラは嫌だったんだろう。

ごめんな、気付かなくって。

 

「俺はラクスちゃんでもいいよ?可愛い子は誰でも大歓迎!」
「もう!会長ってば!」

快く、引き受けてくれた会長に安堵する。
これでラクスも少しは気が楽になってくれればいいんだけれど・・・
ラクスは顔を俯かせたままだった。
私がどうしたのかと声をかけようとする前に顔をあげて、にこりと微笑む。
それに一応ほっとするものの・・・その表情は笑顔なのに冴えなかった。
本当にどうしたんだろう・・・

 

「ところでカガリちゃんは、キラくんでいいのか?カガリちゃんも2年生だろう?」
「はい。キラは私の弟なんですよ。・・・ラクスとか、一部の子しか知りませんけど、別に噂立てられても平気ですよ」
「へー、そうなんだ。じゃ、キラ君をお任せしちゃおうかな?」
「はい!任せてください!」

どうして苗字が違うのか?って聞かれなかった。
別に今更気にする事でもないし、聞かれても平気なことなんだけど・・・
そういえば会長も、前会長であるお兄さんとは苗字が違った。
だからということもあるんだろうけど、会長はこういうさり気ない優しさが溢れていてとてもステキな人だ。

 

あ、でもアスラン。
私はおまえが世界で一番大好きだからな!
あとでいっぱい誕生日のお祝い贈ってあげるから、これは人助けだと思って許してくれ!

「どうしたの?顔赤いよ?」
「な、な、なんでもないです・・・!」
「アスランのことでも考えてた〜?」
「!!ち、ちが・・ちがい・・まーーすっっ」
「はははは!」

あぁ・・・私のバカ。
これじゃ、そうですって言ってるようなもんだよ・・・。
見れば笑ってる会長の横でダコスタまでも笑ってるし・・・。
恥ずかしい・・・。でも緊張感は解けてくれたかな?しょうがない。これもハイネ会長のおかげだと思っておこう。

 

そうだよな、ラクス?って聞こうと思ってラクスを見たら、まだ沈んだ表情のままだった。

 

本当にどうしたんだろう?

 

ラクスとはずっと友達だったくせに、鈍感で、気遣いのできない自分には、
今この瞬間、彼女の沈んでいるその理由に気付く事もできない最低の友達だった。


 

 

 

 

 

 

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