10月29日 文化祭


アスラン・ザラの場合

 

 

 

 

 

 


10月29日土曜日

 

雲1つない空。それはまるで今日この日を祝ってくれるかのような青空。

1つだけ我侭を言えば、毎年恒例の愛しい彼女の「おはようアスランおめでとう!」を聞けないのが残念だと、
そう思いながら俺は1人すがすがしい空の空気を吸いながら登校していた。
でもちゃんとに0時きっかり携帯に「おめでとう!」とメールがきていたから今年はそれで我慢する。
可愛い彼女の、カガリからのお祝いはなんだって嬉しい。

まだ時刻は6時半を過ぎたところ。
このままだと集合時間の7時には確実に間に合うんだろうと、俺がのんびりそんな事を考えていたら、

「おはようございます、アスラン先輩!」

元気な声が聞こえてきた。
ショートカットの赤毛の女子生徒。生徒会書記の一年生、

「ルナマリアか・・・おはよう」
「今日は彼女一緒じゃないんですね?」

悪気なくそんなことを聞いてくるところはカガリに似ていて俺は知らずに微笑んでしまった。

「あ、おめでとうございます〜!誕生日ですよね?」
「あ、うん。ありがとう」
「いえいえ。でも学祭と重なるなんてすごい!今日はいい想い出になりますね〜」
「そうだな・・・」

できればカガリといっしょに校内を周る時間がほしいけれど・・・
実はもう諦めてたりする。
それはカガリも予想していることらしく、今日は別の組にいる親友のラクスといっしょに遊んで周ると言っていた。
男の名前が出てこなかったことにほっとしつつ、たまにはカガリも友人達と騒ぎたいだろうと、ここは俺の意見は飲みこんでおいた。

ホントはやっぱりすごく・・・いっしょがいいのだけれど。

 

 

「ここの祭ってほんと楽しいですよねぇ!去年部外者として参加したけど楽しかった!
今年は妹と幼馴染がいっしょに遊びにくるんです!」

俺がそんなことを考えていることを知らないルナマリアは、畳みかけるように話しつづける。
余程今日が楽しみで興奮しているのだろう。
まるで小学生だなと笑いつつ彼女の話を静かに聞いてあげた。

「うちの妹ってまだ中学生なのにませてて!幼馴染も、まだまだガキなんですよね〜、ま、そこが可愛いかな?」

彼女は妹と、その幼馴染って子が好きなんだろうな・・・。
見ていてわかる。話をしているのがすごく楽しそうで幸せそうだ。
仲がいいんだろう。俺は一人っ子だったから、兄弟を大切にする気持ちっていうのは持ったことがないかもしれない。
羨ましいなと思ってしまった。

でも俺にも幼馴染はいる。この場合はキラ、かな。
今でも仲がいいし、何だかんだ言ってもやはり彼の事が大好きだ。
だから俺は同じ気持ちになって尋ねてみた。

「その幼馴染、好きなんだな?」
「えぇっ!?」
「え?」

あまりにも彼女の反応が予想外でこちらも驚いてしまった。まさか・・・本当は嫌い、とか?

「あ・・・えっとぉ・・・好き・・・です・・・はい」

あ・・・これはもしかして・・・

「幼馴染って・・・男だった・・・?」
「は、はい!」
「あ・・・そっか・・・」

てっきり幼馴染って言うから同性の子かと思ってしまった。
なんだ。俺にとってのカガリだったんだ。

「ごめんな。なんか変なこと聞いちゃって・・・」
「いえ!・・・先輩みたいな大人な素敵な人に聞いてもらえて嬉しいですよ」
「俺はそんなに大人じゃないぞ?」
「ふふふ!そんなことないですよ!」

ルナマリアは笑って俺の考えを否定してくれた。
なんだかくすぐったい気分だ。
誉められるのは・・・正直慣れていないわけではないが、女の子の評価はあり難くもむず痒くなってしまう。
こんな俺のどこが大人な人間だと言うのかはわからないけれど・・・。

「あ〜あ!シンもアスラン先輩みたく少しは大人だったらいいのになぁ!」
「シンっていうのか?」
「はい!」

嬉しそうに答え返す彼女。本当に彼、シン君が好きなんだろう。
俺もカガリを好きか?と聞かれたら、きっとこんなふうに笑っているんだろうな。
そう思うと恥ずかしくなってくる。あぁ、カガリに会いたい。

無意識に歩くスピードが速くなっていたみたいで、それをルナマリアが必死でついてきてくれていたみたいだ。

 

俺とルナマリアは6時40分、見事生徒会メンバー一番乗りで集合場所に辿りついた。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


メイリン・ホークの場合

 

 

 

 

 


「シンー!おーきーてぇぇ!」


「いっってぇ!!!」

 

今日はお姉ちゃんの学校の文化祭!
1ヶ月前からずっとずっとずーーっと楽しみにしてたんだから何が何でもシンには付き合ってもらわなきゃ!

 

寒さに布団を頭までかぶってベッドから意地でも出ないぞと意思表示している幼馴染のシン。
だから私は意地でもつれてく!とその布団を引っぺがして2度目のゲンコツを見舞おうとするんだけれど・・・

「こぉらーー!シンのばか!起きてって言ってるでしょ!」
「い・・・やーー!だっ」

シンってば猫みたい!布団の中でくるまって、本当子供なんだから!!
お姉ちゃんってばどうしてこんなガキっぽいシンが好きなんだろう?
私の理想は背が高くって瞳が優しくってちょっと強気ででも優しくて、りりししくて真面目でかっこよくってetc...
とにかく!シンは残念ながら私のオメガネにはほんのちょびっとも適ってない!

「・・・お姉ちゃんってばどうして・・・」

姉の好みのタイプというか・・・趣味を疑ってしまう。
丸まったままのシンの、布団に包まれた身体の上から体当たりしてみた。

「ぐぇ!!」

「おきろーーー!」

私の体当たり攻撃がきいたのか、酸素を求めて自分から布団を引き剥がしたシン。
スキをついて私はシンの腕を引っ張ってベッドからその身体を叩き落した。


「いって!!!」


ドスンという音とともにシンの大きな声。
・・・ちょーっとやりすぎちゃったかな?

「大丈夫〜?怪我してない?」
「おまえがやったんだろ!メイリン!」
「ごめん〜!ごめんね、シン?」

こういう時のシンはすぐに拗ねちゃう。だから先に謝るのが一番いいの。

「・・・・・・・」

ほら、シンは口は悪いけど本当は優しいから、ぶうたれながらも許してくれている。
あ、これは打算的じゃないの。計画性があるっていうの。
だからおまけでもう1つ。

「でもシンだって今日は付き合ってくれるって言ったのに・・・約束破ろうとしてるからいけないんだよ!」

シンが先に約束を破ろうとしてることもちゃんと伝えておかなきゃ!
昨日の夜はお姉ちゃんといっしょに、絶対行くから!なーんて言ってたくせに!
おばさんたちから今日の分のお小遣いもちゃっかりもらってるくせに!
それを年末ほしいゲームソフトを買うお金の足しになんかさせないんだからっ。

 

「来年受験するところなんだから、しっかり見ておかなきゃね!」

 

もっともらしい意見を述べてみる。

そうなんだ。
私とシンは受験生。
本当はお祭どころじゃないのかもしれないけれど・・・
でもやっぱり長い受験生活、息抜きだって必要だもん!
シンもわたしも成績悪いわけじゃないから、一日思いきり遊びほうけても落ちないしバチも中らないもんね!

 

そして私には叶えたいある決意があるんだ・・・!

 

「絶対絶対、ぜーーったい!かっこいい先輩見つけちゃうんだからぁっ」
「・・・・・・めし、食いたい」
「〜〜〜!もう!シンのバカっ!この熱い想いを覚ますようなこと言わないでッ」
「たこ焼き、いか焼き、ヤキソバ・・・」
「もーー!!バカシン!!!」

 

ゲンコツ、体当たりに続いてわたしの最後の一発は右平手ストレートだった。

 

バッチーーーン!!!

 

「いってぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

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