急がば回れ:アスランに行く前にカガリ、ちゃん。

 

 

 

 

 

 

「ハイネ先輩、おはようございまぁす!」
「やぁやぁ、おはよう!」

 

女の子はみんな可愛い。
しかもこの学園の子は見事に粒ぞろいだ。
スカートをなびかせて、可愛らしくきゃっきゃ騒ぐ姿は疲れた目を癒してくれる。
なんだかこんなことばかり考えていると、俺はただの女好きみたいだけれども、
決してそうではないことを明言しておこう。
俺はフェミニストなのだ。生粋の。
どこかの誰かのように女の子の声を無視して我が道を行く無愛想男とは違うのだ。
女の子という、全てに分け隔てなく接することのできる、立派なフェミニストだ。

 

そんな俺の今日の予定はだいたい決まっている。
マジメに授業を受けた後の予定はびっしりうまっているのだ。
文化祭に向けての生徒会会議も、今日は珍しくお休みだし、思う存分時間をその予定にあてることができる。

 

昨日、兄貴に電話して今までの状況を話したら大笑いされた。
このままでは終われない。終わるつもりなんてないさ。
だからそのあと、睡眠を削って作戦を練った。

 

俺だってこの学園には感謝してるから、卒業後のことを何も考えてないわけじゃない。
立派な生徒会長を選出して、心置きなく卒業の日を迎えたい。
それが現生徒会長として最後にして最大の努めだ。
と言うのは建前で、本音はただ単にあいつをからかうのが面白くて仕方ないといったところかもしれない。
というわけで今日の授業はマジメに、このことについて考えていた。

 

まだかまだかとウキウキしながら1日を過ごし、ようやくその時を迎えた。
授業終了のチャイムが鳴ったと同時に俺の「アスラン捕獲作戦」は前哨戦が始まったのだ。

 


この作戦で1番のキーパーソンは、ある女の子。
昨日聞いたその子の名前は俺の頭の中にしっかり入っている。
カガリちゃん。
多分、アスランがストーカーしてた子。
片想いか両思いかは知らないが、それはまず間違いないだろう。

ただ困ったことに、そのカガリちゃんがあいつと同じクラスなのかもわからない。
もしかしたら1年生の可能性もある。

 

 

とりあえず何か手がかりを、と2年生の廊下に出たところで、歩いてる赤い髪の子に声をかけた。

「ねぇねぇ、君、ちょっといいかな?」
「は?え?生徒会長・・・!?」

振り向いた子は、勝気そうだがかなりの美人。
俺の中にある可愛い子リストに見事仲間入り。おめでとう!

「あの・・・アスランなら、今は教室にいませんよ?先生に呼ばれて職員室に・・・」
「いやいや、今日はアスランじゃなくって・・・」

 

どうも俺が用のあるのはアスランだけだと思われているらしい。
あながち間違っちゃいないのだが、今日は別の目的を果たしにきた。

 

「カガリちゃんって子、知ってるかな?」
「カガリ・・・ですか?何かしたんですか?あの子、そそっかしいから・・・!」
「そういうわけじゃないけど、ただちょっと話してみたいだけ」
「・・・・・同じクラスなんです。たしか教室にいると思いますよ」

おぉっと!
いきなりヒットだ!
日頃の行いのよすぎる俺に、神様は微笑んでくれたんだろう。
そうだ。きっと神様も応援してくれてるに違いない。
これは何としてでも絶対に成功させるべきだ!

 

赤い髪の女の子のあとを着いていきながら、2−Cに到着。
教室のドアを開けると、中にいたC組の生徒がみなこちらを向く。
さぁ、どの子がカガリちゃんだ・・・!

 

「あの子、ですよ。あの金髪の子」

 

赤い髪の子の視線の先には、この作戦の成功に関わる重要人物
俺が会いたくて会いたくて仕方なかった、カガリちゃん。
その他の生徒の視線を無視して、俺はカガリちゃんに近づいていった。

 

「・・・・・君がカガリ、ちゃん?」

「あ・・・は、はい」

 

目の前まで近づいたら彼女の姿がはっきりわかる。
この子も赤髪の子と同じく少し勝気そうな瞳をしていて、その瞳で少し俺を警戒していた。
気の強そうな子だ。だから正直、驚いた。
あの無愛想男のことだから、いかにも可愛らしい大人しそうな子がタイプそうだったのに、
今目の前に現れたこの子は失礼ながらそのイメージとは正反対。
けれど、その勝気な大きな瞳はくりくりとしていて、金髪の、とても綺麗な子だ。

・・・・・・・・・・・なるほど。あいつ面食いだったのか。

 

「アスランなら・・・」
「あ〜、違う違う。今日はアスランじゃなくって君に用があったの」
「え?」

 

2−Cの全員がこちらを注目している。
聞いてないふりをしてるもりだが、その耳がこちらの会話をしっかりと盗み聞きしているのが丸わかりだ。

ちょうどいい。利用できるものは全て利用させてもらおうか。
俺はわざとらしく大きめの声で彼女に言ってみた。

 

 

 

「カガリちゃん、俺とデートしよう!」

「はぁ?」

 

 

 

 

 

 

<急がば回れ>

 

 

 

昨日寝ずに考えた俺のアスラン捕獲作戦本番は、カガリちゃんの呆けた声で開始された。

 

 

 

 


 

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