fortunate

 

 

 

 

 

 

 

 

 


甘い夜の訪れ

夫婦2人きりの時間

 

キスを交わしながらベッドに押し倒されたカガリは、
ボタンを外してくるアスランに抵抗する事もなくキスを受け続ける。

 

子供が生まれてから愛しい想いは増えたけれど、
こうやって2人でベッドに沈む時間は残念ながら確実に減った。
別に互いの熱が引いたからではなく、それだけは絶対にない。


あえて理由を探すとなれば、見つかるのは一つだけ。
増えた愛しい思いの、せいで、だ。


その時、コンコンと部屋の扉をノックする音が小さく聞こえた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

この時間にやってくるのは、二人、しかいない。

 

夫婦の甘い時間をまた、遮られたことに苦笑しながらも、
アスランは1人ベッドから抜け出し、ドアへと向かう。
その間に、カガリは2つ外されたパジャマのボタンを止め直した。

 

 

ドアをあければ、やはり
1人は枕をひきずって、1人は枕を抱え込んで、
仲良くこの部屋にやってきたのは、双子の息子たち。


「「えほんよんでー」」

ぴったり重なった声にアスランとカガリが互いに噴出すと、ベッドにいたカガリは双子を手招きした。
それは、こちらへおいで、という合図。
カガリが手招きをすると、嬉しそうに長男が駆け出していく。
次男坊は兄のように慌てず、自分達であけたドアを閉めようとしている。
それをアスランが手伝うと、にこりと笑って、長男と同じようにカガリのもとへと駆け出して行った。

 

少し・・・残念だが、嬉しくもある家族4人の時間だ。

 

カガリが長男を抱き上げてベッドに降ろす。
アスランもすぐに後ろからベッドによじ登ろうとしていた次男を抱き上げた。
ベッドの下に落とされた双子の枕もいっしょにベッドの上へと降ろしてやる。
その枕をもってベッドへ潜りこんでくる二人は、ベッドの真ん中を占領した。

 

1本多い川の字。


にこにこと嬉しそうにカガリと双子の息子たちは笑い合っていた。

 

「・・・・・・・我慢、か」
「ちちうえー。なにをがまんするの?」
「するのー?」
「あ・・・、いや、そのなんだ・・・」

つい口をついてでてしまったこの一言に、カガリから勢いよく睨みつけられた。
さすがのアスランもここではっきりは言わない。
子供たちの前で、色々、いちゃいちゃするのを我慢だなんて。

「・・・・・・・・・・カガリとキスするのを我慢、かな」
「きょうはしていいよー」
「いいよぉ」

 

可愛らしくキスのお許しが出たものの、
肝心のカガリは絶対子供たちの前でキスしちゃダメだと言わんばかりにいまだに睨みつづけている。
それがただの照れ隠しだということはわかってはいるものの、やっぱり寂しいものだ。

 

・・・・ところで、きょうは、という事は、明日はダメなのだろうか?

 


「ねぇ?ははうえ。おれもしていー?」
「ぼくもー!」
「おー、いいぞ」

 

アスランがカガリに手をだせないのに、双子はカガリの頬に唇を寄せる。
嬉しそうに双子の、頬にキス攻撃を受けるカガリ。

俺はダメで、子供たちはいいのか・・・とアスランが羨ましそうに見ていると
視線がかち合ったカガリが、頬を染めて慌てて顔を逸らす。

 

 

気持ちはアスランと一緒なのだ。

 

 

 


こうなったら、子供達を早く寝かせて、夫婦は隣の部屋にでも移動して
甘い時間を堪能しようかと、
アスランは枕元に置いてある本の中から一冊だけ手に取った。

 

こんな時のために、いつも枕元に用意している絵本たちはほとんどがオーブに昔から伝わるという古い本ばかりだ。
この間、マーナが何十冊も新しい絵本を双子のために購入してきたが、
長男の1番のお気に入りは今アスランが手にしたこの本だ。
これは昔カガリも気に入って読んでいたらしい。

ロビンの冒険というタイトルの本は、タイトルからしてわかるようにどちらかと言えば男の子向け。
カガリが好きだったというだけのことはある。

 

アスランは淡い絵の表紙をめくって、1ページ目を開いた。

 

 

 

 

 

本当に寝たい時はアスランが読む。
それはつい先日自然に決まったことだった。

 

カガリが読むと、喜怒哀楽がはっきりしていてそれはそれは大変おもしろい話になるのだが、
それに興奮してカガリも子供たちもいっしょに目が冴えてしまい結局夜更かしになるのだ。

自分でやってることなのに困ったカガリが、
アスランに甘えるように絵本を読んでと初めて頼んできたのはついこの間のこと。

 

本を声にだして読むことなんてなかったアスランが、戸惑いながらも
可愛い妻と子供たちのお願い事に対してイヤという2文字は浮かんでくるはずもなく
読み聞かせた結果、安眠の効果は抜群だった。

 

 

「アスラン読んで!」
「「よんでよんで!」」
「はいはい」

まるで雛鳥が餌を求めているようだ。
そのうちの1人は、もう雛鳥なんて呼ぶ年齢でもないけれど。
何より、さすがに雛には手を出せないんだから、彼女はできれば自分と番いでいて欲しい。

そう思うと、少し恥ずかしい自分の考えを振り払うように、アスランの目は絵本の中の文字を追った。

 

 

 

 

 

「昔、昔、あるところに、ロビンという少年がいました」
「「それでそれで?」」

 

何度も読み聞かせているのだから、先の展開だってわかりきっているはずなのに、
子供達は好奇心に目を輝かせて続きを催促する。
こういうところはカガリ似、だ。

「えっと・・・、ロビンの国には恐ろしい魔物がいて・・・・」

 

カガリの読み聞かせと違って、うまく感情を出せていないのだから面白くもなんともないかもしれない。
しかし、すでにカガリがうとうとしているのだから、やはり彼女が言った安眠効果はあるみたいだ。
というよりも、カガリが寝てしまっては意味がないのだが。

「そこでロビンは、勇敢に魔物に立ち向かっていきました」
「「きゃーー」」

本当に怖がっているのかはともかく、可愛らしい悲鳴をあげる双子。
今日は2人とも、すぐには寝てはくれない。
なんとしても早く寝かしつけて夫婦2人の時間へと移行したいアスランにとって、
穏やかに読み進めるその声とは裏腹に、心の中では焦っていた。

ふと、カガリの声だけがまったく聞こえなくなったことに気付く。

まさか、と思って見てみれば、愛する妻だけが瞳を閉じて安らかな寝息をたてているではないか。
まだ冒頭部分だというのに、
これから2人の時間が始まるというのに。

「か、カガリ・・・っ」
「ちちうえーつづきー」
「つづきぃ」
「あ・・・あぁ・・・」

 

がっかりした気持ちを悟られないように、また絵本を読み始める。
カガリが起きる事を心の何処かで期待しながら、子供達を寝かせる事に無理やりにでも意識を集中させる。

物語がすすめばすすむほどに、子供達の賑やかな声は落ちついてゆき、
時折、寝言のような何て言っているのかわからない不思議な声が聞こえてくる。

「そこに居たのはお姫様でした・・・」

魔物を倒し、ロビンがお姫様を見つけたシーンに載っている絵は、金髪の可愛らしい姫君の絵。

世の中のお姫様というものは皆、金色の髪なのだろうか。
自分にとってのお姫様も金髪だったのだから、絵本とはいえ侮れない。

 

読み進めていく中で、続きを催促してくる声が聞こえなくなるのを不思議に思って子供に視線を合わせると、
案の定、妻と同じように子供たちはすでに夢の中。いつのまに眠ったのだろうか。

同じような寝息をたてて、ほんのわずか口をあけている
少しまぬけで可愛らしい顔にアスランは笑った。

 

ぱたりと絵本を閉じる。
ベッドサイドのテーブルにその本を置くと子供たちの頭を撫でてやった。

 

 

 

 

 

最後まで読むことはなかったが、この物語の最後は、お姫様と出会ったロビンは、
彼女にとっての王子様となって、幸せに暮らすのだ。

絵本にはそう書いてある。
けれど、楽しいことばかりではないはずだ。

泣いて泣かせて、傷つけたこともたくさんあっただろう。
幼ければなおさらだ。
何も知らずに傷つけて、そして後でひどく後悔して・・・・

 

それでも、最後はどんな思い出も、笑って振り返れるくらいに、幸せになるのだ。
いつまでもいつまでも、笑って幸せに暮らすのだ。

 

 

そう、それはまるで自分達のように。

 

 

それならば、このお姫様もその王子様との間には双子の男の子を産んだのだろうか?
自分で思ったことなのになんだかむず痒く恥ずかしい気持ちになる。

 


「次は・・・女の子、ほしいな」
「産むのは私だぞ・・・」

 

独り言になるはずだった言葉に、返事が返ってきた。
びっくりしてその声の主に目をやれば、口元に人差し指をあてている。
どうやら、静かにしろと言いたいらしい。

「・・・作るのは俺・・・」
「ばかっ」

カガリに従って小さな声で喋ったのに、
静かに、と訴えたカガリのほうがつい大きな声を出してしまって、慌てて両手で口を防ぐ。
その姿を見てあまりにもおかしくて、アスランが笑うのを必死に堪えていたら、
カガリにはまた睨まれる。

 

けれど、甘く見つめ返せば、むっとしたままの彼女の表情も次第に優しくなり、頬を染めて微笑んでくれた。

 


ベッドにいる子供たちを起こさないように、そっと降りて、カガリの方へと歩み寄る。
両手を伸ばしてきたカガリの身体を、ベッドから抱き上げると、
その両手はアスランの首に柔らかく絡まった。

 

「作るのは・・・2人で、だ」

「了解」

 

抱き上げた身体が嬉しそうに擦り寄ってくる。
アスランの耳元で、さっきの、と囁いてその頬にキスをした。
それほど子供達に羨ましそうな顔を向けていただろうか。

きっとそうなんだろう。

 

 

 

ごめんな。
カガリを今から1人占めするから。

 

心の中で、可愛い息子2人に謝罪する。

 

 

 

 

とりあえず、今のキスのお返しは、隣の部屋にてたっぷり贈ろうと心に決めたアスランは、
甘い時間の待つ隣の部屋へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

END

 

 


どんなことになろうと幸せを見つけるアスカガ。
子供たちとラブラブなカガリ。ライバルは父上。この家族のお姫様はカガリ。
アスランの永遠のお姫様。
(・・・・・恥ずかしい後書き(笑))

 

 

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