「アスラーン!プール!プール!!」
「え?」
カガリの声に合わせたかのように、子供達もいっしょに騒ぎ出す。
「「プール!プール!!」」
小春日
泳ぎにでも行きたいのだろうか?
オーブは海に囲まれた国で、プールを経営しているところは少ない。
澄んだ海がそばにあるから、泳ぐといえばほとんどが海水浴だ。
「倉庫で見つけた・・・!私がちっちゃい時、お父様といっしょに遊んだやつ!」
ちょっと大きくて持ち出せない、と興奮気味に話すカガリに案内されながら、
アスランは子供たちと3人でその後をついていった。
意味がわかっているのかいないのか、カガリと同じようにはしゃぐ子供たちは本当にカガリにそっくりだ。
倉庫につくと、少しだけ埃をかぶった大き目のビニールプールが目に入る。
無理やり倉庫から引きずりだそうとしたカガリの手を制し、アスランは空気の入っていないプールを持ち上げた。
外に持ち出すと、埃が空へ舞い上がり、やはり少し煙たい。
カガリはそれを軽く手で払うと、おなじく倉庫から取り出したらしき空気入れをアスランの目の前に置いた。
「私は水入れるホース探してくる!それと、水着だな!」
後はよろしく、ということだろうか。
それだけ言うと、先程と同じくぱたぱたと走り去っていった。
まだこれで遊ぼうなんて一言も言っていないのだが・・・
しかしカガリの喜ぶ姿を見たら逆らう気なんて起きやしない。
アスランの隣では、子供達がまだ同じように嬉しそうに騒いでいる。
これで反対できるものだろうか?
くすりと1度笑うと、アスランはシャツの袖をまくって空気入れに手をかけた。
「アスラーン!どうだ?膨らませれたか!?」
15分ほどしてカガリが大きな声を発しながらこちらへ戻ってきた。
「なんとか。けっこう大きいな。」
限界まで膨らませたビニールプールは、アスランが想像していたものよりもずっと大きく深かった。
その大きさを見て、子供達よりも先に懐かしい、とカガリがはしゃぐ。
そしてその姿を見て子供達もはしゃぐ。
長男を捕まえて、カガリは服を脱がせ始めた。
ここで着替えるのだろうか?という疑問を抱きつつ、同じようにアスランは自分で脱ごうとしていた次男の服を脱がせた。
大人しくされるがままの子供たちに、カガリが持ってきたという水着を穿かせてあげる。
2人が着替え終わったのを見て、カガリは蛇口からホースを繋いで水を張った。
時折、わざと子供達へ水をひっかけて、庭中に楽しそうな笑い声が響いた。
「まったく。一番子供なのはカガリだよな」
とは言っても、そんな妻と子供の姿を見ると、アスランも嬉しくなるのだから、
あまりとやかくは言えない。
「よし!私も着替えるか!」
そう言うと、さっきまで子供たちへ水かけ攻撃で楽しんでいたカガリが勢いよく着ていた赤いTシャツを脱ぎ始める。
「お、おいおい・・!」
「なんだよ」
「なんだよって・・・」
ここは外だ。部屋の中じゃない。誰が見てるかもわからないのだ。
子供たちを真っ裸にさせるのとは違う。人妻の、カガリの裸だなんて、そんな刺激的なものを他の男にでも見られたら・・・
そんな思いをうまく口にすることにできず、ただわたわたするアスランを無視して、カガリはシャツを脱ぐ。
赤いシャツの下からオレンジ色のビキニが見えた。
「あ・・・・着てたん・・だ・・・?」
なんともまぬけな声を出せば、カガリが噴出して睨みつける。
「おまえ、私だってさすがに外で裸にはならないぞ!」
「あ・・・・うん・・・・・・」
それでも服の下に水着を着てくること自体が幼い証拠のようでもない気がしないでもないが・・・
あえてそれは口にしなかった。
そんなところも可愛く思えてしまう自分、久しぶりに見た水着姿にも胸が鳴ってしまうほど重症なのだから。
「おまえは?着る?一応もってきたけど・・・」
「いや・・・俺はいいよ。このままで」
「そっか。よしっ!ウィリー、ライル!ほら、泳ぐぞー!」
カガリの声にすぐさま反応したのは長男のウィリ。
カガリそっくりなこの息子は、カガリのあとに続いてビニールプールの中へ飛びこんだ。
ばしゃばしゃと、親子そろって水を掛け合う。
その姿は、誰がどう見ても微笑ましい光景だ。
緩む頬を気にもせずその光景に魅入っていたアスランが、ふと足に重みを感じて下を見下ろした。
「やー!!」
そこに居たのは次男坊。
アスランの足にしがみついて離れようとしないライル。
さっきまではホースからのカガリの水攻撃に喜んでいたのに、たかがビニールプールの水が怖いみたいだ。
その一方で、兄は早速プールのふちに手をかけバタ足を楽しんでいる。
双子の兄弟でもこうも違うものか。
しがみつかれた足を動かすこともできず立ち尽くすアスランを見ながらカガリは笑い声をあげた。
「全く。ライルはほんっとアスランに似たよな!」
「どういう意味だよ・・・」
プールの中からカガリはまだ呆れたように笑っている。
このままじゃ、男親としての威厳が保たれない。
そう思ったアスランは、なんとかして次男坊をこのプールにつからせたくなった。
「ライル、プールは楽しいぞー」
「やー!きらいー!」
「ほぉら!俺は大好きだぞー」
「やーー!!きらぃぃーーー!」
アスランの作ったような楽しそうな声を聞いてしまってはカガリの笑い声は止まない。
けらけらと笑い続ける妻を横目にアスランは必死だ。
カガリの笑い声が一通り治まったとき、泣き叫んでいたライルも落ち着きを取り戻したのか、
おどおどとカガリの様子を伺っている。
そして、まだ目を真っ赤にしたままカガリに問い掛けた。
「ははうえは?」
「ん?」
「およぐのすき・・・?およげないのはきらい・・・?」
アスランの足にしがみついたまま、小さな声で呟いた。
それを見たカガリは、そんなことはないと言おうとしたがすぐにその言葉を引っ込める。
かわりに小さく笑うと、まだ怯えている次男に優しく言い聞かせる。
「そうだなぁ。・・・・どっちかって言うと、やっぱり泳げる男のほうが好きだな、うん」
その言葉を聞いた途端に、次男坊の手はアスランの足から離れた。
ゆっくり、恐る恐る、兄がバタ足を続けるすぐ横からビニールプールをまたぐ。
ぽちゃんと小さな足が水につかった。
まだ泣きながら、それでも男の意地を見せた可愛い息子を見てアスランは不思議な感動に胸が支配される。
たかがビニールプールに足を入れただけなのだが・・・
「それにしても・・・・」
アスランは率直に自分の意見を述べてみる。
「ほんとに、こいつはカガリの言うことをよく聞くな」
「おまえに似たんだろ?」
「どういう意味だよ」
「わかってるくせに」
あぁ、そうだよ。わかってるさ。
悔しいけれど、
「負けたな。カガリには」
「どうだか」
また笑い始めたカガリの笑顔が眩しくて、プールに歩みより、顔を近づける。
兄と同じくバタ足を始めた弟がちらりと見えた。
あれほど怖がっていたのに、今ではもう夢中になって楽しんでいるみたいだ。
夢中になっているから、きっと気付かれないはず。
今から少しだけ、ほんの短い夫婦の甘い時間を。
カガリの唇へ、自分の唇を落とそうとしたその瞬間
「とうさん」「ちちうえ」
「「ずるーい!!」」
息子二人の幼い可愛い声に、夫婦の甘い時間が遮られててしまったことは・・・・言うまでもない。
END
なんとも季節はずれなお話で・・・そしてタイトル適当です。一応小春日って冬のことらしいけど・・・。
タイトルセンスがないのはいつものことだ(泣)
そしてやっぱりうちのアスカガ双子は、カガリ大好きッ子です。アスランそっくりー。わー。
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