午睡日和

 

 

 

 

 

 

小さな悪戯と、ほんのちょっとした遊びでも真剣になって楽しむ子供たちと妻。
疲れ果てて眠ってしまうまで付き合うのはアスランの譲れない役目。


昼食をとった後、いつもならお腹いっぱいになってお昼寝の時間に突入するはずの子供たちも、
両親がお休みの休日は眠りにつくことはない。
構ってほしいのか、昼食時からちらちらこちらを向いては恥ずかしそうに視線を逸らして…
その姿はあまりにもカガリに似ていて、アスランは笑うのをこっそり堪えるのに必死だった。


子供たちがあまり好きではない生野菜もきちんと食べさせた後、皿洗いを終えたカガリは濡れた手を拭きすぐさまエプロンを外した。

「よし・・・!遊ぶぞ!」

その一声に、息子二人がわぁっとカガリのもとへ集まる。
足元にしがみつくようにじゃれる姿は、まるで猫の親子。

その輪の中にアスランも加わりたくて、子供たちを蹴飛ばさないよう気を付けながらカガリを抱きしめる。

「こ、こら!子供たちの前で・・・!」

小さなお叱りの声があがるも気にせず耳にキスをすると、その耳を紅くさせ黙り込んだ。
なんだか子供たちのことを忘れてしまって、甘い雰囲気に飲みこまれそうになっていると・・・

 

「かくれんぼぉー!」

 

と、状況を察していない長男が大きな声をあげた。


カガリははっとなる。アスランによる耳元への攻撃にぼうっとなっていた頭の芯を奮い立たせ、自分の身からアスランを引き離す。
寂しそうな顔をしたアスランを見て・・・少しだけ罪悪感が生まれてしまったけれども、
隙を見せてしまえばまたキスの反撃にあってしまうことを経験上知らされているから、うまくごまかすことにした。
なんせ主導権を握られてしまえば、真昼間からはよろしくない展開に突入していしまいそうだ。

 

「かくれんぼだよな〜、よし、やるぞっ。まずアスランが鬼!」

「え?俺っ?」

いきなりカガリに指名されてアスランは戸惑う。
子供たちはカガリの声にわぁっと走り出した。すでに隠れる場所へそれぞれ向かっていったようだ。
今日は3時のおやつでも用意していて、カガリと子供たちの遊んでいる姿をのんびり眺めてでもいようと思っていたのだ。
おやつは確か冷蔵庫にシュークリームが3つ残っていたから、それはカガリとウィルとライルに。
紅茶とジュースを用意して・・・自分にはコーヒーを。と、そんなことまで事細かに考えていたのだ。


でもカガリのお願いに逆らう事ができるはずもなく・・・突然のご指名でもアスランは喜んで受け入れるつもりだ。

 

けれど、どうせなら・・・。

 

「それじゃ・・・見つけることができたらご褒美ちょうだい」


「おまえな〜・・・」


「ダメ?」

 

子供たちがすでに2人の前から姿を消したのをいいことに、アスランは擦り寄ってくる。
1度引き離してもめげないところは誉めるべきか否か・・・。
カガリはそんなことを思い浮かべたが、いつのまにかアスランの腕の中に捕まっていることに気付き、はっとなった。

 

「こ、こら〜っ」


「ね?ご褒美」


「う〜・・・」

 

うっとりするほど蕩ける瞳で見つめられた。
カガリの顔はみるみるうちに茹蛸状態になってゆき、なんだかマインドコントロールみたいにうんと頷いてしまう。
承諾を得て・・・アスランはこれでもかというほど嬉しそうな微笑を見せた。
その表情に、カガリはまたぼうっとなる。

 

「・・・ご、ご褒美って・・・?」

 

ドキドキしたのを悟られないように必死になりながらカガリは尋ねてみた。

 

 

「そうだなぁ・・・」

 

 

何かを思い立ったのか・・・にっこり微笑んでからアスランはそっとカガリの耳元に唇を寄せた。

 

 

 

 


「えっちなご褒美とか」

 

 


「!!」

 

 

 

カガリはばっとアスランから身体を離す。


カガリの目に飛び込んできたのは、嬉しそうに微笑んでいるアスランの顔。
その表情に、カガリは自分がいつのまにか追い込まれていることに気付いた。
あれほど主導権を握っていると思っていたのは間違いのようだった。

「お、お、おまえはなんで、そ、そういうことしか言えないんだ・・・!」


真っ赤になりながらもここできちんと断っておかなければ、本当に見つけられた後いろいろされそうだ、とカガリは必死になる。
けれどアスランは余裕の態度。
にっこり笑ったまま、部屋の壁にかけてある時計を見て言った。

 

「はいはい。それじゃ今から3分後に鬼は行動するから、カガリ隠れてね」


「!ちょ、ちょっと待てよ・・・!ご褒美の話はなしだ・・・!」


「あと2分30秒かな〜」


「ずるい!」


「あと2分ちょっと?」


「もうっ」

 

猶予さえ与えてくれそうもないアスランにカガリは仕方なく隠れ場所を思い出す。
要は見つけられなければいいのだ。


「じゅ、30分たっても見つからなかったら、私の勝ちだからな・・・っ」


最後に捨て台詞を残して走り出す。


30分なんてあっという間だろう・・・咄嗟に思いついたのだ。
ご褒美だなんていきなりの要求なのだ。これくらい許されてもいいだろうと、
カガリは部屋から逃げるように飛び出して思いついた隠れ場所へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「30分ね・・・」


その場に残されたアスランは、カガリの小さな抵抗に笑いを抑え切れなかった。
飛び出ていったカガリの後ろ姿まで真っ赤に染まっているような気がして、あまりの可愛さに後をついていきたくなった。
後をついていって、掴まえて、部屋に閉じ込めて、思いきりキスをして・・・怒られながらも甘い言葉を囁き続けたい。
そんなことを考えて、顔が綻んでしまう。
時計の針を何度も確認しながら、
絶対見つけて見せると意気込んでみては見つけた後のことを考えると、自然に口元も緩んでしまっていた。

 


一人妄想に深けこんでいると、時計はとっくに3分を過ぎたことに気付いた。
あまりにもいやらしいことを考えていた自分が恥ずかしくなるも、絶対叶えてやろうと思いながら
とりあえずはとこの部屋を出る。
30分という時間が短い気もしたが、カガリに1番近い人間としてこの勝負に負けるわけにはいかない。
もちろん、父親としてちゃんと子供たちも発見するつもりだ。
全員見つけることができたら、カガリも文句はないだろう。えっちなご褒美は、夜にでもたっぷり味わわせていただこう。

「まずは・・・リビング、かな?」

アスハ邸は広いが、家族4人で使っている部屋は限られている。
子供たちは危ないからと、許可がない限り一人で外には行かないし、
カガリはカガリで休日も出てきてくれているメイドたちやコックが何人かいる中、屋敷中を走り回りうろうろすることはない。
だから隠れる場所は4人で使用している数部屋だけだろう。
これは探すほうとしてはありがたいことにかなりハンデを与えられている。
興奮していたカガリは気付かなかったのだろうが・・・。少しぬけているところも、カガリの可愛いところだ。


時間が惜しいと早速リビングとして使用している部屋へ向かった。
大きなTVが置いてある部屋。が、きょろきょろ見まわせどそこには誰もいなかった。
置いてあるのはこのTVとテーブルとソファーと、センスのよいサイドボードくらいのみだった。
クローゼットもないこの場所で隠れるところはほとんどない。
子供たちが丸まってテーブルの下に隠れているかもとしゃがんで除き込んだが、その考えはハズレたようだった。

居ないのなら長居は無用。
1分も無駄にしたくないと早速次の部屋へ。けれどそこにも誰もいなかった。

 

これは思っていた以上に見つけるのは難しいかも・・・とアスランは思う。
けれどその思いは次の部屋であっけなく崩れさった。

 

次に探す場所として選んだ子供部屋に入ったアスランがそこで見たものは・・・。

 

 

 

 

窓からさし込む緩やかな陽の光にちいさな寝息をたてている3人―――

 

 

 


アスランは忍び足のようにゆっくり3人に近づいてゆく。

3人の行動は簡単に予想がつく。
先に子供たち二人がこの部屋で隠れようとしていたけれど、温かくてうとうとしてしまい・・・
そこにカガリがやってきて、3人であっという間に眠ってしまったのだろう。
毎晩、身体を重ねた後にふっと倒れ込むように寝つきのいいカガリを思い出してアスランは苦笑した。

 

「カガリー・・・えっちなご褒美は?」

 

気持ち良さそうに眠っているカガリからはお叱りの言葉さえ聞こえてこない。
隣を陣取っている息子たちは、まるで「母さんを守るぞ!」と言わんばかりに寄添い寝息をたてている。
起こすのはあまりに可哀想だ。
30分以内に何とか見つけたからこそご褒美は欲しくてたまらないが、
だからといってこんなに幸せそうに眠っているカガリを起こしたくない。

ぽかぽかした陽射しが心地よくて・・・アスランもつい眠ってしまいそうだった。

 


自分まで眠ってしまってはダメだと、どこかに腰掛けていようかと思ったが、
生憎この部屋は子供の遊び場で、アスランが座れるような椅子はどこにもない。
唯一あるとすれば・・・
子供用のおもちゃのような小さなテーブルにおまけのようにそえられている、同じくおもちゃのような子供用の椅子。
さすがにこれに座るのは気が引ける。お尻がすっぽりはまってしまって恰好が悪い。

アスランは最悪の事態を想定して、その椅子は諦めた。
椅子を諦めたアスランは、3人の1番近くの壁にもたれかかるように座り込んだ。
行儀悪く片足だけ立て、そこに肘をつき、手の甲で頬杖をつく。
ここは、カガリたちの寝顔がしっかり見える、絶好のポイントだった。

 

時折口元が動いていて、夢の中で何か言っているのかもしれない。
それとも、もしかしたら何か食べているのかも・・・。
美味しい物に目がないカガリを思い出して、アスランはぷっと噴き出した。
子供たちまでふにゃっとした頬と唇を、カガリの動きに合わせたかのように動かしている。

 

カガリがいる幸せと、カガリが贈ってくれた幸せが今目の前にいてくれて―――

 

こうしていて、ただ3人を眺めているだけなのに、この時間が飽きることはなさそうだ。
ただ、ただ、愛しい。

 

緩やかに流れて行く時が、アスランを深く包み込んでいく。
瞬きするのが惜しいと思うほどに、3人を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

窓から指し込む陽の光と、何かに見守られているような温かな感覚にカガリは目を覚ました。
ぼんやりにじむ視界の先に、1番最初に目に飛び込んできたのは、深い蒼色。
重い瞼も、光に照らされてきらきらしている蒼の魅力には叶わなかった。
眠気もどこかに過ぎ去ってしまうほどに、その美しさに目を開く。
一体、何だろうと思うこともない。その蒼を放つ、自分を虜にする相手は一人だけだからだ。

 

そこには、何をするでもなく手の甲で頬杖をつきながら、ただじっとこちらを見つめているアスランの姿。
柔らかく目が細められていて、カガリと視線があうと微笑んだ。

 

「・・・・――、あれぇ?アスランー・・・」

「起きた?おはよう」

「えーー・・・寝てた?なんじ?」

目をごしごしこすりながらカガリはむくっと上半身を起こす。


「まだ2時間くらいしかたってない。寝てていいよ。昨日、寝かせてあげるの遅かっただろう?」

「んーー・・・へいき」

瞬きと小さな欠伸で眠気と格闘しているらしい。
ちょっとだけ髪がくしゃくしゃになっていたから、アスランはカガリの傍に行って
そっと寝癖のようになっていた部分を撫でて、元通りの髪の流れにしてあげた。
さらさらとした感触が気持ちよくて、あまり意味もないのに何度も髪をなでていると、カガリが顔をあげた。

「なに?」

「いや、気持ちいいなと思って。・・・あ、おはよう」

そう言って、毎朝のようにしているおはようのキスと同じ軽いキスをする。
寝起きのカガリは大人しい。されるがまま、だ。

「子供たち、べッドに運ぶか」

「うん」

アスランの提案にカガリは頷いた。
立ちあがったアスランがそっと長男を抱き上げる。
抱き上げた瞬間むにゃむにゃと「けばぶ」と言ったのが聞こえてアスランは笑ってしまった。
子供部屋となっているすぐ隣の部屋が双子たちが眠っているベッドが置いてある部屋で、
一人ずつアスランがだきあげて部屋に連れて行った。

 


「ありがとう〜アスラン」

まだぼうっとしているカガリ。
大人しいとはいえ寝起きはけっして悪くはないカガリにしては、
呆けている時間が長い気もするが、きっと中途半端に起きてしまったからだろう。

「じゃ、最後の一人も連れてかないとな」

「え・・・?きゃ!」

子供たちの時とは違い、今度はカガリの承諾を得ないままその身体を抱き上げた。
驚いたカガリがしっかり目を覚ます。
ぱちくり瞬きをして、ようやく事態を飲み込んでから声をあげた。

 

「あ、アスラン!私は歩けるぞっ」

 

「いいからいいから」

 

「こ、こらぁ!」

 

動かずに運んでもらえるのは楽でいいのだが、どう考えてもこのルートではベッド行きだろう。
それはイヤなのだ。恥ずかしいのか、まだ明るいからダメなのかはわからないけど。
でも「そんなこと事態がイヤ」なわけではないから本気で抵抗できないのが悔しい。

そんなカガリの考えに気付いたのかアスランは言う。

 

「それに・・・ちゃんと30分以内で見つけたからご褒美をもらわないといけないしな」

 

「え!?」

 

カガリは思い出した。
かくれんぼをする前の、アスランとの約束事を。

真っ青になったか真っ赤になったのか今の自分がわからないまま、言葉を失う。
くすくす笑い出したアスランの腕を軽くひっかく。

それでもめげずにアスランは言った。

 


「楽しみにしてるよ?」

 


「〜〜〜!ばかっ!!」

 


今度はぎゅうっと自分の腕をアスランの首に絡めて抱きついた。
覚悟を決めたのかもしれない。それは幸せなことだけれど。
でも自分の顔が見えないようにして抱きついたのは最後の抵抗。
アスランにはカガリの可愛い表情を思い浮かべることができたけれども。

 

可愛くて可愛くて、それだけでどうにかなってしまいそうだ・・・。

 

 

 


辿りついたベッドで、その表情をアスランが堪能できたのは言うまでもなく、
その後カガリは、疲れによりたっぷり眠りについてしまうのも・・・
やっぱり言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

END

 


アスランがカガリ激ラブなのとカガリがアスラン甘ラブなのがわかるだけで
子供たちの出番があんまりないっすね〜。
「えっちなご褒美編」は書けたら書きますが多分書けないので書きません(笑)。

 

・・・どーせうちのアスランは大したことさせられないんだよ(笑)。
むしろアスがカガリンにたくさんしてあげるんですよ。
でもやられっぱなしは悔しいからカガリもひっしにやりかえすのです。
まっかかの涙目になりながらもがんばるのです。
そしてそんなカガリを見てアスランは 日 々 も え も え し て る の で す (爆)。

 

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