目の前を、忍び足の茶色い帽子が横切った。
その帽子からはみでるちょっと長めの金髪。
誰ですか、と問い掛ける必要もない。

見間違うはずもない大好きなその人に、ライルはそっと声をかけた。

 

「母上」


 

「うわあぁぁぁぁ!!!」

 

母上と呼ばれた人、カガリは可愛い息子の声に飛びあがる。
そっと呼びかけたのも無駄になってしまうくらいの大声で叫んでしまい、
驚きのせいで前のめりになったその恰好はちょっとまぬけだ。
そのまぬけな恰好のまま、母親は言い切った。

「ちょ、ちょ、ちょっと庭を散歩しにいってくるだけだぞ…っ!や、屋敷を抜け出すわけじゃないぞ…っ」
「……」

どもりながら言う言葉は、純粋な子供でも嘘だとわかる。
そもそもその服装は母親のお忍びセット一式だ。ばれないほうがおかしい。

「…今日はどちらに?」
「…う」

息子の鋭い問いかけに、カガリは言葉を失う。
ばれてしまっていることは、実はカガリにもちゃんとわかっていた。
この次男坊は実に夫そっくりで、見た目はもちろんんこと年齢にそぐわないしっかりしたところも備えられている。
まさしく背水の陣。カガリは最終手段に打って出た。

「…行くぞ!」
「え?!」

息子の手を引っ張った。
驚きに目を見開いてその手を引っ張られたライルは、今はまだ母親の力に適わないせいかされるがままだ。
それでも必死に言葉だけでも引き止めなくてはならない。

「ちょ…母上!」
「いいか!子供ってのは、親の目を盗んで屋敷を飛び出るくらいしなきゃダメなんだぞ!」
「……」

見事な論法だ。
そもそも貴方がその母親ですよ、と言ってあげるべきだろうか。
まだまだ子供のライルにとってそんなことを言う度胸はない。
あぁ、帰ってきたらマーナにこってり絞られて、そのあと兄に罵られて、父親にまで説教だ。

そんなことを思えばさらにユウウツになるというのに・・・

 

「おまえと一緒にお出かけなんて…嬉しいな!」

 

大好きな母親の一言で、そんな気持ちは吹っ飛んでしまったから、
これまた兄にバカにされるんだろうと、覚悟を決めてカガリについていった。

 

 

 

 

 

 

未来予想図

 


 

 

 

 

どこから用意したのか、変装セットBとでも言うべきか…
もう1つ帽子を用意されていて、それを無理やり被らされた。
そうして今、2人きり。
街中をびくびくしながら歩いている。…尤、びくびくしてるのは1人だけ、だが。

「ライル!バニラとチョコとストロベリーとマロン、どれがいい?」
「…バニラで」

露天のアイスクリーム屋の前で立ち止まった。
ライルの目がアイスを売ってるおじさんを見つけた時から、絶対母親は足を止めるだろうと予想したのだが…
見事なまでに大当たりだ。
財布から小銭をちゃりんと取り出して、どのアイスがいいか尋ねてくる。
甘いものは嫌いではないが特に好きというわけでもなくて…一番無難なバニラを選んだ。

「はい、おまたせ!お嬢さん!」
「ありがとう!」

カガリが2つアイスを受け取った。
その片方をライルに手渡す。
バニラ1つを頼んだはずなのに、バニラの上にもう1つ、マロンらしきアイスがのっかっている。
ぱっと母親のアイスを見たら、チョコとストロベリーの2段アイスだ。

言われる、絶対言われる…!

 

「少し、ちょうだい?」

 

ほら!

 

ライルは少しだけ得意満面に心の中で胸を張ってみせた。
生まれた時から自分はカガリの息子なのだ。これくらい簡単に予測がつく。
くすくすと笑いながら、ライル手渡されたアイスをカガリの口元へ持っていった。

「いただきまーす」

ぱくりとカガリが被りつく。
大きな歯型がくっきりアイスについて、ちょっとドキリとしてしまった。
こういう場合・・・こっち側から食べていいのかな?なんて考えてしまう。
まるでデートだ。ドキドキしてきた。
若い頃は、父もこうやって母とデートしてきたのだろうか。
いや、若い頃といえど今だって十分に母親は若い。
今日の恰好は少し幼い雰囲気に見せてくれるせいもあってか、ギリギリ10代にも見ようと思えば見えるほどだ。
先ほどのアイスクリーム屋のおじさんも、カガリに対してお嬢さんなんて言葉を使ったのだから、
自分とカガリの関係は少し年の離れた兄弟くらいにしか思われていないかもしれない。

「いただきます」

ドキドキしながらカガリの歯型がついた側から、ライルも一口かじってみた。


 

 

アイスを食べながら、二人は歩き出す。
賑やかな雑踏。若いカップルたちが寄添いあってライルは目を逸らす。
じっと見てるのが失礼な気がしたから。
母親もきっと恥ずかしがって視線を逸らしているとばかり思っていたのに、今回だけは予測が外れてしまった。
若いカップルを見て微笑んでいるのだ。

 

「平和だよなぁ」

 

のんびりそう言ったカガリの声に、ライルは頷く。
母上が頑張ったからですよ、と言う事は恥ずかしくてできなかったけれど。

 

 

そのあとはてくてくと2人歩いて、ウインドウショッピングを楽しむ。
綺麗になくなったアイスのコーンに張り付いていた紙切れをカガリが道端のダストボックスに捨てた。
カガリが振り返れば、ライルの手にはまだアイスが残っていて、
母親の視線を感じたライルが慌ててそれをお腹の中に押しこもうとまた被りつく。
でも甘いものがそれほど得意ではないライルにはかなりの重労働だったらしく、
少しむせ返ったところでカガリがその背中をさすってから手を差し出す。
僕のアイス!なんて騒ぐはずもなく、ライルは大人しくカガリに残っていたアイスを渡した。

「いただきまーすっ」

悪戯するように言ってみせて、カガリがそれを食べ始める。
ライルもくすくすと笑い出す。
残り少しだったアイスは、あっという間にカガリのお腹の中へ。

「お腹、こわしちゃいますよ?」
「これくらいへーき!」

にっこり笑った大好きな母親の大好きな笑顔に、ライルも微笑み返した。
本当に、デートだ。
そう思えば思うほど、家でやきもきしながら母を探してるだろう父に申し訳なくなってくる。
と同時にちいさな優越感。
2人きりなんて、本当に久しぶりだ。
そしてこんなふうに外を歩くのなんて初めてだ。

にこにこ機嫌のいい母親を見てるととても幸せになってくる。
自分といっしょにいることを楽しんでくれているからだ。

「デートしてるみたいだなぁ!」
「…は、はいっ」

おんなじことを考えていてくれたのが嬉しくて、ライルははにかむように微笑み返した。

 


 

 

賑やかな表通りを抜け、人が少ない裏道を歩き始めた時、カガリが言い出す。
「アスランの小さい頃ってきっとこうだったんだろうな」
いつも聴いている台詞が、今はなぜか新鮮に感じる。

「男ってあっという間に背が伸びちゃうから…」

感慨深げにそう言う母親の言葉がなんだかすごく恥ずかしい。
自分の身長はまだ母親より20センチほど低い。

「おまえもすごく伸びたよな!…去年これくらい、か?」

1年ほど前の定期検診で測った時は140センチを超えたくらいだったが、今はまた少し伸びているだろう。
その、今のライルの身長よりさらに低い位置に手ををあててから、そこから上へ、
カガリは30センチ定規がぴったり当てはまるくらい大げさに手を動かしている。
1年でさすがに30センチは無理だ。ライルは苦笑した。

「そんなに伸びてませんよ?」
「でももうちょっとで私も追いぬかれちゃうぞ!」
「そうですか?」
「そうそう!子供の成長は気付いたら、すぐ、だもん」

寂しそうにそう言う母親の身体が、なんだか一回り小さく感じた。
何か言わなきゃと言葉を捜すも、この場にふさわしいようなそんな台詞が出てこない。
そんな自分が情けなくなって俯いていたら、さっきとは打って変わって母親の明るい声が耳に届く。

「あ!こっちにな、公園があって、そこに美味しいケバブの屋台があるんだ!」

そう言って、出かけた時のように手を取られる。
顔をあげると、カガリは太陽みたいに笑っていた。
母親の笑顔はすごいと思う。
沈んでいた気持ちが浮上して、自分も笑顔になってしまう。
ドキドキしてることは秘密にして、引っ張られた手をしっかりと握り返して、ライルはカガリのあとをついていった。

 

 

カガリの言ったケバブ屋は、初老の夫婦が営んでいる小さな屋台だった。
カガリを見た途端に、笑顔になる。どうやら母親は常連らしい。

「いらっしゃいませ!お久しぶりですね!」
「うん、久しぶり!最近忙しくって来られなかったんだ〜」
「まぁ、まぁ!そうですわよね〜。お忙しいはずですわ!いつもありがとうございます!」
「うん!どういたしまして!」

柔らかに微笑みながら店主の奥さんらしき女性が言った。
カガリは元気よく答え返す。
そしてライルはふと、気付く。
なんだか高揚した奥さんの…彼女の喋り方に…気付いてしまった。

母上…ばれてるよ…。

いつもありがとうございます!なんて言われていても、
カガリはどうやら常連さんとしてこの店のケバブを食してることにありがとうと言われたとでも思っているのだろう。
でも、顔を赤くして興奮したようにまくしたてる奥さんの姿は、ちゃんとカガリの正体に気付いているようだ。
きっとずっと、カガリは秘密を隠しとおせてると思ってるのだろう。
そんなカガリに付き合ってくれてありがとう、とライルは思った。

「あのぉ…そちらは…?」

遠慮がちに尋ねてくる。
それが自分のことを尋ねてるのだとわかると、ライルは赤くなる。

「私の息子だ!…あーアレックスって言うんだ!可愛いだろう?」

10歳になるというのに可愛いだなんて紹介のされ方、ちょっと照れくさい。
でもそれ以上に、用意されていたかのようにアレックスという偽名がすらりとカガリの口から出てきてライルは驚く。
自分の母親は、こういった急な事態の対処が苦手だというのに珍しいことだ。
昔、アレックスという犬でも飼っていたのか。
いつもシロとかクロとか…そんな安直で可愛らしい名前しかつけない母親にしては、
アレックスだなんてかっこいい名前をつけるのも、やっぱり珍しいことだけれど。

「まぁまぁまぁ!お会いできるなんて…嬉しいですわ!初めまして!」
「は、初めまして…」

深くお辞儀をされて、ライルも同じように深いお辞儀で返す。
ただの子供にこの反応…やっぱりばれているはずだ。

「あ、いつもの、今日は2つちょうだい!」
「はい!」

カガリの言葉に屋台の店主が手際よくケバブを作り始める。

いい匂いがしてライルのお腹がきゅうっと鳴った。
ほとんどカガリの胃の中へ…とは言え、アイスだって食べたばかりなのに…。

「どうぞ、お待たせいたしました!」
「ありがとう!」

美味しそうなケバブが2つ、カガリに手渡される。
その1つがライルの手に渡り、あいた片手でカガリは小銭を取り出した。
お代はいいと言う店主の言葉を笑顔で断り、ちゃんと料金を差し出す。
それを受け取った奥さんと店主がまた深くお辞儀をしたので、ライルもつられてまたお辞儀をした。
紙コップに入った水を受けとると今度はカガリもお辞儀をする。

「ありがとうございましたー!」

元気な声で送り出されて、二人は店を後にした。

 

 

広い公園では、自分たちと同じように親子連れがたくさんいた。
でもみんな小さい子供ばかりで…今更ながらに母親と2人きりなのが恥ずかしくてたまらない。
それに気付いたのか、気付かないのか、
「あっち、座ろう?」
と、カガリはベンチを指差した。

ケバブに口をつけずにいたら、座ってゆっくり食べたいのだと思われてしまったみたいだ。
断る理由もなくて、頷いたあと言われたとおりベンチに行きそこに並んで腰掛けた。
そして一口食べてみる。すごくすごく美味しいけれど…ケバブは少し辛かった。
アイスを食べた後だから余計にそう感じる。
上目で母親を見ると、美味しそうにケバブを頬張っていて、
母親にはこの辛さは気にするほどでもなく、むしろちょうどいいみたいだ。
そのままじぃっとその食べる姿を見ていたら、その視線に気付いたのか紙コップを手渡される。
「辛かったか?」
「う、うん…っ」
差し出された紙コップを受けとって水を飲む。
「ごめんごめん」
勢いよく水を飲む姿を見て、笑いながらカガリは謝った。

 

それから2人、何をするでもなく公園が夕暮れに染まり始めるまで空を見上げていた。
他愛もない話に花を咲かせる。
ほとんど、全て言っていいほど話題を提供するのはカガリだ。

食べたばかりだというのに食べ物の話題を持ってこられたときは、笑いをこらえるのに必死だったけれど。

 

何時の間にか公園ではしゃぐ賑やかな幼い子供達の声が聞こえなくなっていた。
夜風がひゅうっと身体に吹きつけて、そろそろ夜が訪れるということを教えてくれる。
南国のオーブといえど、夜風は少し冷たく感じる。

そろそろ帰りましょうと、そう言おうとした矢先、ライルの肩に何かがのしかかってきた。
それは、母親の金色の髪。帽子からはみ出たちょっと硬質の髪が自分の肩にある。
お腹がいっぱいになったのか、カガリがウトウトし始めていたのだ。
まるで子供のような行動に、ライルは心が温かくなったが、同時に困ることとなる。

 

「は、母上…ここで眠っちゃだめですよ…」

「ン…ちょっとだけ……」

「は、母上…っ」

 

そう言えば…ここ最近ゆっくり休む間もなく働き詰だったのを思い出す。
自分はまだ子供で何もできないことが歯がゆかった。
早く大人になって、負担を減らしてあげたい。
将来この国を継ぐのは第1後継者である兄だ。
自分は補佐的な立場で落ちつくことだろう。
双子の兄は向こう見ずなところもあるが、実は自分よりもずっと大人の考えを持っていて頼りになる。
だから彼に任せておけば絶対安心だ。

けれど…そんな兄と違って、意見1つ言うにも度胸が必要な自分はできることが限られているような気がする。
それがずっと悩みだった。
10歳の子供が持つ悩みではないといわれるのだろう。
でも、早く、母親の負担を減らしてあげたいのだ。

そう、本当はこんなふうに激務の合間を抜け出してどこかへ出かけるんじゃなくって、
もっと父親と、母親の、ゆっくりする時間を作ってあげたい。

 

「母上…起きて…」

 

ゆっくり眠っていてほしいのに、起こさなくていけないという気持ちが急かす。
こんなところで寝てしまうのはいけない。

 

自分がもっと大人だったら、母親を抱き上げて帰れるくらいの力があったら…

 

「母上…起きてください…っ」

 

そんな力もなくって、頼りないただの子供で、
肩に寄りかかる重みを起きあがらせることさえできず、泣けてくる。

 

 

ごめんなさい。
僕がまだ子供で。

ごめんなさい。
ちっぽけな自分にはまだ何もできなくって。

 

 

ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここに居た…」

「!」

 

夕暮れの公園に染まる、背の高い男の人。
沈む太陽のオレンジ色の光が当たるのを遮っているせいか、暗くて顔が見えない。
けれど、誰だかすぐにわかった。
低い声が静かな公園の中の自分の耳に反響して、わずかしか離れていなかったくせに懐かしく感じて涙がまたこぼれる。
ぽろりぽろりと涙が零れた。

「探したぞ?」
「…父…う…え…っ」

柔らかな声が、すごく懐かしいのだ。
父親の前で泣くなんて、恥ずかしいとわかっていても、ライルはぽろぽろ涙を零した。

「おまえ、なんで泣いてるんだ…?」
「泣いて…ない、です…っ」

ごしごしと服の袖で涙をこすった。
自分でもどうして泣いているのかわからなくって…
目が赤くなると思ったけれど、ライルはそんなことは忘れてこすりつける。
それを見てアスランが止めに入った。

「あぁ、ほら…男が泣くな」
「…っ」

大きな手が、頭を撫でた。
自分とは違う、その手の大きさに、またなんだか情けなくなる。
でも、ほんわり、心はあったかくなるから不思議でしょうがない。

「ン…アスラン…?」

カガリがぼうっと薄目をあけた。

「こら、カガリ、起きろ…」
「あと…5分…」

そう言ってまた目を瞑る。次に聞こえてきたのは可愛らしい寝息だ。

「全く…うちのお姫様は…」

そう言いながら、アスランの頬は緩む。
しゃがんでベンチに腰掛けたままのカガリの身体を、
まるで壊れ物を扱うかのように優しく抱き上げたその姿を見て…ライルは思った。

 

やっぱり、母上には父上がお似合いだ…。

 

「カガリは…しょうがないな」

 

口ではそんなことを言ってるくせに、その顔がとっても幸せそうで、ライルも微笑んだ。
いつのまにか涙は止まっていた。

 

 

公園の外に車を止めてあると、カガリを抱き上げたアスランとベンチから立ち上がったライルは公園を出た。
アスランが助手席にカガリの身体を下ろしてもなお、カガリは夢の中だ。
ライルは大人しく車の後ろの扉をあけそこに座り、言われる前にシートベルトを着用した。
アスランも運転席に乗りこんだところで尋ねてみる。

「どうして、ここに居るってわかったんですか?」
「…なんとなく」
「え!すごい!」

素直に驚く息子に、アスランは悪い気がして正直に告白する。

「本当は、俺とカガリのデートコースだからな」
「え!」

また素直に驚いてみせたら、父親はそんなに意外かと苦笑い。
そうだ。2人だってデートしたことがあるんだ。
きっとこっそり、母親といっしょに屋敷を抜け出したんだ。

「露天のアイスを食べながら街をぶらぶらして」
「ウィンドウショッピング、おもしろそうなものに目を輝かせて、ですか?」
「ははは!やっぱりそのルートか!」

声をだして笑い出した。母親の行動なんてお見通しだったんだろう。
もしかしたら、今日、オフになるってわかっていて抜け出すことも見透かされていたんじゃないかとさえ思う。
それは聞かないでおこうと、そう思った。
父親は柔らかく言葉を続ける。

「で、最後はケバブでお腹いっぱいになって…あの公園でカガリが疲れて眠った、だろう?」

それでいつも俺が抱き上げて帰ったんだぞ?と、言われてしまって今度はライルが笑い出す。

そして2人で笑い合ったあと、アスランが優しく言った。

 

 

「楽しかったんだろうな、ほら」

 

 

カガリが被っていた帽子をそっと取り上げる。
そっと、その額を一撫でして…

 

 

「幸せそうに眠ってる」

 

 

そう、幸せそうに言った。


 

その言葉に、1度シートベルトを外して後ろの席から助手席に座って眠っている母親の顔を覗きこむと、
夢の中だというのに、むにゃむにゃと口元を動かしながら、にっこり笑っている。

 

あぁ、可愛いなぁ、とそう思った。

 

こんなふうに思ってるって、また兄に知られたらばかにされちゃうけれど。

 

「車、出すぞ」
「あ、はい」

アスランのその声に、ライルはまた後ろの席へときちんと座りなおす。
シートベルトも忘れない。
動き出した車の中から、夕暮れから夜にかわっていく町並みを見ていた。

 

幸せそうに家路を急ぐ人たちを見て、これが2人の守ってきたものだと誇らしく思う。

いつかちっぽけな自分が、今度はこの街を守っていけたらいい。

 

 

 


そう、僕が大人になったら、ゆっくりできる時間をあげる。

屋敷を抜け出した父上と母上を笑顔で送り出してあげて、
そうして、夕方になったら車であの公園に迎えに行くんだ。

 

 

 

僕が大人になったら。

 

 

 

―――それは、きっと叶う、そう、幸せな僕の未来予想図

 

 

 

 

 

 

 

 

END

2006年1発目の更新でした!
久しぶりの家族〜。でも今回はお兄ちゃんは出番なし。
カガリ大好きっコの次男坊の物語でした!
絶対このコはカガリに似た子を好きになるでしょう!(笑)

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