もうすぐやってくる平穏な未来に胸を躍らせた・・・

いつものように結婚なんて考えないで普通に学校いって、帰ってきたら上手い飯食って・・・

あぁ、なんて幸せなんだろう。ビバ平凡!!



俺は、こんなごたごたに巻き込まれる前の生活を思い出し、その幸せに浸っていた・・・



 


・・・俺の背後に、人影に気付くことなく。

 







「シン・・・」




「うわぁぁぁあ!!??」




想像の中のそのなんと平凡でいて幸せな時間に俺は油断してしまっていたのか、いきなり声をかけられひっくり返りそうになってしまった。

振り向けば、頬はこけすっかりヤツれ細くなった兄貴。
ただでさえ雪のように白い頬はさらに青白くなっていた。
俺も肌の色は白いほうだが・・・今の兄貴はまさしく病人そのものである。

これはヤバイ。

早くカガリさんがこの家にやってくることを知らせてやらねば。


「・・・シン・・・今まで済まなかった。俺、自分のことばかり考えて・・・」



「い、いや、もういいんだ・・・それより明日っ」



「ホントはおまえに幸せになってほしい・・・だから俺は、耐えてみせるよ」



「い、いや・・・それはいいから・・・あの、明日っ」




「俺この3日間でおまえとカガリさんの結婚式のお祝いの言葉を考えたんだ。聞いてくれ・・・」



それはもういいから、聞きやがれーーー!!



兄貴を思う優しい俺の想いを踏み潰すかのように、
兄貴は白い指で同じく白い紙を一枚広げると、そこに目をやりゆっくり語り始めた。








 

「・・今日この日を晴れ晴れしく迎えることができ、大変誇らしく思います。
カガリさん、純白のドレスに染まるあなたの眩しい姿、俺はつい目を細めて見惚れてしまい、
まるで産まれたてのヴィーナスのような眩しさに目が眩んでも・・・いつまでも見つめていたい。

そう、俺の気まぐれエンジェル。ラブハートよ君に届け・・・!

君が誰かのものになるのは耐えられない・・・悔しいです。俺のほうが絶対幸せにできます。
でもあなたのその輝きが永遠に続く事を願い・・・

ついでに別れることも願い、これをお祝いの言葉と変えさせていただきます」



「祝ってねぇぇぇええーーーー!!!!!」



それただの告白じゃん!!しかも俺はどうでもいいの!!??



「違う違う、そうじゃなくて・・・っ!!」


「あ・・・ドレスじゃなく白無垢だったのか・・・」


「違ーーーぁう!!!アホ兄貴!!!」


「シン・・・言いたいことはわかってる。ちゃんと明日はごちそう作るから」


「わかってねーよ!!!!」



ダメだ・・・疲れる。


兄貴とまともな会話をしようとするとただ疲れ喉が潰れるだけだ。
残っていた気力もしぼんでしまった・・・。



兄貴はそれをまた、どういう意味で勘違いしたのか・・・俺の肩をポンと叩き笑顔で言う。



「安心しろ。ゆで卵、頂くから」



ち ぃ が ぁ う う ぅ ぅ 〜 〜 ! ! !



でも・・・

ダイニングチェアーに腰掛け美味しそうにゆで卵を食べてくれている兄貴に・・・今日はもうこれでいいかと思ってしまう。

とにかく何か胃に入れてくれたことにほっとしたんだ。
あのまま餓死なんてシャレになんねーし・・・。


明日は明日の風が吹くって誰かが言ってたしな。
もうそれを信じるしかないだろ?

俺も向かいの椅子に座り、また5つ目の卵に手を伸ばした。


久しぶりの兄弟2人の食事は会話もなくて
兄貴の鼻歌も気持ち悪い呟きもなくて静かだったけど・・・


あんなに飽きていた卵が美味しく感じたんだ。

 

 

 




それからゆで卵を5つずつ食べ切った後、兄貴は立ち上がりそっと目を伏せ俺に言った。



「シン・・・最後にお願いがあるんだ」

「な、なんだ・・?」


「これを・・・」


どこに隠していたのか兄貴は手紙らしきものを取りだし俺に差し出す。




「彼女を想い描いた手紙の中で一番よく書けたと思うものを選んだ・・・これを、渡して欲しい」





それはラブレターだった。キテーちゃんレターセットで書いた。

女性を前に、いや、カガリさんを前にしたら途端に口下手になってしまう兄貴の、
精一杯の想いが込められているんだろう・・・。・・・キテーちゃんなのはこの際置いといて・・・



「それなら・・・自分で・・・!」


そう、自分で渡せばその想いはより伝わるんじゃないだろうか!?



「いや・・・俺だとばれると問題があるだろう?だからシン、これは・・・
カガリさんを思う黒髪緑の瞳の自分と血の繋がりがあるイニシャルA.Z、
誕生日は10月29日のナイスガイから渡すように頼まれたって言ってほしいんだ」


「ほぼ兄貴断定できるじゃん!!」


どこまでも手がかかるヤツである。
自分だってことアピールしたいくせに意地っ張りめ!!


・・・でもここで俺が折れて受け取ってはダメだ!
これは俺が渡すより兄貴からのほうが絶対いい!


「おまえが渡」

「おやすみ、シン!」

「だから聞けってのーーー!!!!」


兄貴はいつものよーに俺の話を聞く事もなく自分の部屋へ走り去って行った。
去っていく際に涙が零れ宙に舞っていたと思うのは気のせいだと思いたい。


・・・つーか泣くくらいツライなら俺から奪え、アホ!



もとからカガリさんは俺のものというわけではないが・・・
こんだけ好きなくせして思い切ることのできない兄貴の不甲斐なさが情けない。




俺の手には無理やり頼まれたキテーちゃん封筒の兄貴のカガリさんへのラブレター。

人の物を勝手に見るのは許されない行為だろうけど・・・
好奇心というよりこの手紙には一体何が書かれてあるのか不安になりそっと開けてみる。




そこには封筒と同じキテーちゃんの便箋に、兄貴の綺麗な字が並んでいた。










『はじめまして、俺は貴方を想うプラント町在住の19歳です。

貴方に出会った時、俺の心は生まれて初めてのときめきを覚えました。
それは俺の運命だったと感じたのです。

キテーちゃんのような白い肌、マイパロディーのようなぷっくりした愛らしい頬、
プー助さんのような美しい金色の髪・・・その全てに虜になりました。』



それ誉めてんの!!??




『毎晩お星様に向かって祈りを捧げてきたのですが・・・
貴方は別の誰かと結ばれてしまうのですね。

けれど俺は貴方の幸せを祈ってます。どうか世界で一番幸せになるように・・・

あなたへの想いだけは、あの永遠に輝く星のように消える事がない俺を、
1度でいいから想い返してください。
拙い文を読んでくださってありがとう・・・。


君が好きです。




黒髪緑の瞳イニシャルA.Z誕生日は10月29日のナイスガイより











 


P.S.イニシャルのAは「ア」です』





ここまで書くなら名前書けーーーー!!!

自分だってわかってほしいんだろう!?


っていうかこんな手紙マジで贈るのか!?

っていうか、俺の兄貴ってなんでこんな変なヤツなんだーーーーー!!??







この手紙をびりびりと引き裂いてやりたい衝動に駆られても
それを必死に我慢した俺の健気さに、涙がでてきそうになる・・・







・・・それと、最後の、「好きです」に、
本当に涙がでてきたのだ。・・・くそ!!








 

 

 



4 END

 

 

シンくんの苦難奮闘、アスランの暴走、の回でした!(笑)
頭がAで「エ」の読み方の単語は知ってますが、名前でも「ア」以外に
読めるのってあるんでしょうか・・・。ありますよね?
英語はわからん!オーブは日本語のようなんで私はプラントよりオーブで暮らして
皇室(ちょっと違う)の一日とかを見て朝から爽やかになりたいものですね!

BACK

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送