「あ、あの・・・い、一体・・・こ、これはドッキリ!?」



俺は辺りを見まわした。
どこかにカメラが隠されているのかもしれないと思ったからだ。




だ、だ、だだだだだだだだって!!!
け、けけけけけけけけけっこんですよ!?


け、けけけけっけけけけっこんって・・・!!



結婚ていうのは、男と女が結ばれて、
『今夜は寝かさないよ・・・』『もうっ、いつもそうでしょ♪』とか。

男が仕事から帰ってくると、
『あなた、お風呂にする?ご飯にする?それともあ・た・し?』
『もちろんおまえだ〜〜っ』『きゃぁ〜〜〜♪』



っていうのだろう!?



って俺、結婚に対するイメージ片寄りすぎ!!!!

 



「会って間もないお前にこんなことを頼むのは・・・失礼だと、突然すぎるのはわかってる。」


何かの冗談とは思えないくらいに真面目に真剣にカガリさんは言う。


「私の名前はカガリ、カガリ・ユラ・アスハ。この名をどこかで聞いた事はないか?」


「アスハ・・・?」


どこかで聞いた事がある・・・。この名前・・・。
アスハ、アスハ、アスハ、明日葉、それはアシタバ。


「あ・・・!」


頭に閃いたある一族の名前。アスハ・・・!そうだ、アスハ財閥だ!!
俺んちだってそれなりにかなりの金持ちだが、
アスハ家といえば、世界3大財閥の一つ・・・!!


まさか・・・カガリさんは・・・!?



「私は、アスハ家代表ウズミの一人娘。私は近い将来アスハ家を継がなくてはならない」


目の前にいるのが、おいそれと近づける相手ではないことに俺はおののいた。
どうりでフレンドリーな人なのに高貴そうな雰囲気を醸し出しているのか・・・
その理由が今はっきりわかった。


けれど・・・だからと言って・・・


「そ、それと結婚にどういう関係が・・・!?」


俺の切なる問いかけに、カガリさんは先ほど以上に苦々しい表情で答える。


「私には今、婚約者がいる」


「こ、こんやく・・しゃ」


「アスハ家の遠縁にもあたるセイラン家の一人息子、ユウナだ・・・っ」


思い出したくもない様子で眉間に皺が寄っていた。
そんな顔、笑顔の似合うカガリさんらしくないと、

尋ねた俺がもういいですと答えようとか思うほどユウナ、という男を語るカガリさんが辛そうだったのだ。

けれどしっかり聞かなくてはならないことだと、俺だってそんなことくらいわかる。

俺も同じようにツライ気持ちを共有しながらカガリさんの言葉に、こちらは何もいわずただ耳を傾けた。



「わたしたちアスハ財閥は5つの大きな家、一族で成り立っている。
それぞれに代表者が何人かいて、何か大きなことを決める時は多数決で物事を決めるんだ。」


その話は聞いた事がある・・・!
アスハ財閥は正式には5代氏族で成り立って、そのトップがアスハ家、ウズミ・ナラ・アスハだってことを!

でも、なぜ・・・!?それが何故、カガリさんの結婚話に・・・!?


「セイラン家が提案したユウナとの結婚が・・・
カガリ・ユラ・アスハの明るく楽しい未来を考えよう会にて決議されてしまったんだ・・っ!!」


それどんな会なんすかーーー!?
ってゆーか真面目に仕事しろよアスハ家!!!


「恐らく代表者の一部に・・・裏で金が動いたらしい・・・セイランによって買収されてしまったのだ」


「な、なんでそこまでしてカガリさんと結婚を・・・!」


「恐らくは・・・トップであるアスハ家の財産と地位、名誉の全てをセイラン家の物にするために・・・」


現代風味な悪人にありがちなパターンだ。
結婚を理由にうまい蜜を吸おうとする蜂・・・いや、ヤブ蚊のような男だな。


「でも、トップの娘であるカガリさんの味方は多いはずじゃ・・・!?」


「今回賛成した代表者以外の人たち以外は皆この決議に怒りの声をあげてくれている。
けれど会議で決まってしまったせいでセイラン家も1歩も引かないのだ。
だからこそ何としてでもセイラン家の悪事を暴かなくてはならなかった・・・!
そこで信頼のおける我がアスハ家の諜報部員たちがあの決議の日から証拠を掴みに調査に乗り出したんだ」


「それじゃ・・・何とかなったんじゃ!」


「しかしアスハ家直属の諜報部員たちでも証拠を掴む事はできなかった・・・っ」


俺のあんな過去はわかるのにーーー!?
つーか、俺の過去調べてる暇あったのかよ!!??


「もう終わりだと思った・・・けれどユウナが口を滑らせ言ったのだ。
『年末までにぃ〜、誰もが認める家柄の婚約者を連れてきーたらぁん、結婚は許してあ・げ・る・ん〜』と」


「・・・ヒドイ・・・!」


「すまない。似てない物真似だった」


「そこじゃないっす・・・!」


カガリさんもかなりの天然だ・・・!!
俺の周りにはこういう人しか集まらないのか・・・!?






それにしても・・・彼女は本気だ。

目がマジである。自分の幸せは二の次らしい。



「ユウナは私にそんな相手がいないことを知って言ってきたんだ。
チャンスだった。でも・・・私は途方に暮れた。アスハ家にふさわしい家柄の男なんて・・・そうは居ない。
けれどセイラン家にアスハ家をのっとられてはいけない・・・!
私は何としてでも新たな婚約者を見つけ出さなくてはならなくなったんだ!」


「む、むちゃくちゃな・・・!」


「それはわかってる!!でも、私には時間がない・・・!もう、おまえに頭を下げて頼むしか・・・!」



偶然、街で俺と再会したのはこういう運命だったのか!?


でもだからといって俺は頷くなんてできない・・・!

 

 




「あんたの幸せはどうすんだよ!?」



そうだ。彼女だって幸せな結婚をする権利があるのだ。
この際、俺の事はどうでもいい。彼女に・・・幸せになってほしい!
・・・できればその相手が兄貴ならこんなに喜ばしいことはないんだけど・・・。


カガリさんは俺の怒鳴りつけるような声に、その時初めて俺から視線を外し俯いた。

あ・・・しまった。もうちょっと柔らかく言えばよかったか・・・?
初めて彼女を傷つけてしまったかもしれないと、反省した。




でも俺・・・この顔見た事ある・・・。

視線を外しどこか遠くを見ているような彼女には不似合いのぼんやりとした表情・・・。





そうだ、こないだの喫茶店でこんなカガリさんを見たんだ。
切なそうな空気に溶けて消えてしまいそうな・・・
胸が締めつけられる、そんな表情。



彼女の心に・・・今、一体何がおきているのか・・・?




 

 

 

「私には・・・双子の弟、キラがいる」


双子の弟・・・っていうことはそいつが長男・・・?
・・・だったらアスハ財閥を継ぐのも彼でいいだろ・・・!?

そしてカガリさんは好きな男といっしょになれば・・・!


「だったらそのキラって人が・・・!」


「でも!・・・・・・ある冬の日・・」


俺が次に口にする言葉を知ってか、それをぴしゃりと遮るようにカガリさんは話し始める。



「駅前でエアギター片手に一人で歌っていたストリートミュージシャンの女の子に一目惚れをして
18の誕生日にその子と駆け落ちしたんだ・・・」


「・・・駆け落ち・・・エアギター・・・」


一体どっちに突っ込めばいいのかわからない。


「それから・・・キラとは・・・なかなか会えない。
私は、彼の夢のためならどんなことにも耐えようと・・・決めたんだ!たとえ・・・会えなくても・・・!」


「そう・・・ですか」


あの喫茶店でカガリさんが、俺と兄貴の話で切なそうな表情を浮かべたのは
もう2度と会えないかもしれない弟の事を思っていたんだろう・・・。

俺だって・・・兄貴はイライラするし鬱陶しいって思うこと多いけど、会えなくなるかもって思ったら、少し寂しい。



「会えないの・・・寂しいですね」



ぎゅうっと胸が締めつけられた。
カガリさんはどんな思いで弟さんのことを話してるんだろうか・・・?



「会いたい・・・」



「・・・・・・・・・・」




カガリさんの双子の片割れが行方不明になった独りの寂しさは、彼女しか、わからないんだろう・・・。



「会いたい・・・!あぁ、1週間に6日しか会えないなんて・・・っ」



「・・・はぁ!?」


あの、今、なんて?


「1週間に6日、毎晩うちに来るんだ。『お金がないからご飯たべさせてよ〜』って」


た、たかられてる・・・!?それ、たかられてる!!


「会いたい・・・キラ・・・!毎日くればいいのに・・・っ」


それって駆け落ちの意味ねーじゃん!!!!
カガリさん、やっぱりかなりの天然!?


「しゅ、しゅ、週6日だったら・・・そいつがそのまま会社継げばいいんじゃ・・・!」


そうだ!その通りだ!!俺、よく言った!!!


「それはダメだ!今のキラの夢は、アスハ家を立派に引き継ぐことではなく。
夫婦デュオ、『ラ・クプル』を全国区にすることなんだ・・・!」


カガリさんは熱意をこめまるで自分の事のように力を込めて燃えている。
そしてそのすぐ後、はっとしてがさごそと鞄から何かを取りだし差し出した。


「な、なんすか・・・これ」


正方形の・・・CDだということは、受け取ってわかった。
カガリさんがにっこり微笑んだ。


「キラの夢、夫婦デュオ『ラ・クプル』のデビュー曲『わだかまりの詩』、だ!」


どんな歌だよーーーー!!!???

受け取ったCDのジャケットは、茶色の髪の男とピンク色の髪の女の子が
そのタイトルとは思えないほどににこやかに微笑む写真が使われている。


「離婚協議中の夫婦の埋められない深い溝をこれでもかと言うくらい虚しく綴ったラブバラードだ」


売れねーー!!!それ絶対売れねーーー!!!
全国区むりーーーー!!!!

諦めてとっとと会社継げよ!!!!




怒りか呆れかわからない震えが俺を襲う。
ぷるぷるとCDを持つ手が震えていた。


「・・・ふふ、感動してくれたのか?」


違います!!違いますよ!!!!


「受け取ってくれて嬉しい。おまえと少し近づけた気がするよ・・・」


「そ、そ、そうデスネー・・・」


カガリさんの弟愛には兄貴に通じるものがある・・・。
世の兄姉はこんなもんなのか・・・!?
俺んちだけが異常だと思ってたんだが・・・!?


って、カガリさんと距離を縮めてる場合じゃない!
そうじゃないんだ!
問題は、ラ・クプルの歌がどんな歌かってことじゃなくて・・・っ


俺がカガリさんにプロポーズされてしまたってことだ!!



これもある種の政略結婚だろうけど、カガリさんはきっとそんなこともちゃんとわかってるんだろう。
それをわかっていて俺に頼むしかないってことは・・・相当追いつめられてるんだ。
年内までにって・・・本当に時間がない。

他にいい家柄の男なんて・・・

 



・・・そ、そうだ・・・!



ザラグループの男でいいのなら・・・俺じゃなくて・・・!





「カガリさん!結婚するなら俺じゃなくても、兄貴はどうですか!?」



そうだよ、ザラ家の男なら兄貴でもいいってことだ!

本当にカガリさんに気持ち悪いくらい愛を注いでるのは兄貴なんだ・・・!
これなら、カガリさんも、兄貴も、幸せになれる・・・!
兄貴は鬱陶しいけど本気でカガリさんを大切に愛してくれるだろうし、

そうなればきっとカガリさんも兄貴を本気で愛するようになるだろう・・・!



なんていい考えなんだ!と思った。


でもカガリさんは、



「それはダメだ」



と俺の最高の提案を一蹴した。




「な、なんで!?」


何がいけないんだ!?
兄貴の乙女趣味が実はばれてしまっているのか!?


「・・・私はゆくゆくはアスハ財閥のトップを引き継ぐといっただろう。
・・・おまえのお兄さんは長男だ。
ザラ家を引き継ぐ人間をアスハ家に迎え入れるなんて・・・ザラ家に失礼だ」


乙女趣味がばれているようではないけど・・・話はややこしくなってしまった。
たしかにザラの名を継ぐのは間違いなく兄貴だろうけど、

俺はうちを継ぐなんて絶対イヤだし、いつか飛び出して世界を見てやろうって思ってる。



でも、兄貴の方が・・・!!



「それに・・・それにおまえは私に声をかけてくれただろう?
あれは少なくとも嫌われてはいないと思っているのだが・・・」



たしかに声かけましたけどーーー!!!!

嫌ってるっていうかむしろ好感持ってるのは確かなんですけどーーー!!!



「ち、違うんですよ・・・!俺は・・・っ」


「私と結婚してくれたら・・・後は自由にしてくれていい。
アスハのことは気にせず好きなことをやってくれればいいんだ」


申し訳ないという表情で、カガリさんが頭を下げる。
無茶なお願いだってことは、彼女は身に染みてわかっているのだ。


「ヒドイ女だということは重々承知してる・・・。
でも・・・私はアスハを守りたい・・・!頼む・・・っ」


「カガリ・・さん・・・」




どうしていいかわからないけど・・・とにかく今日は1度帰ってもらおう。
そう、兄貴が戻ってくる前に。

俺もどうすればいいのか考える時間がほしい。



兄貴が今帰ってきたら、それこそ大変なことになりそうだ。



・・・そうだ、兄貴が帰ってくる前に・・・っっ






「ただいま〜、シン。お客さんなのか〜?」


帰って来たし!!!!!
おまえ、なんでこんなタイミングよく!?




「ちょうどよかった。シン!お兄さんに挨拶して帰るぞ」


カガリさんが立ち上がる。


「ちょ、ちょ、まった!まった!!」


俺の制止も聞かず、玄関に向かうその後を慌てて追いかけると、玄関で丁寧に靴を脱いで並べている兄貴がいた。



カガリさんの足音に気付いたのか振り向くと、笑顔だったのが一転、
兄貴の目がこれ以上開きません!ってくらいに驚きで見開かれている。

そりゃそうだろ・・・
誰だって、名前も知らぬ思い人が家に帰ってきたら居るなんて・・・。



それだけなら、幸せなハプニングだ。
「よかったな、兄貴!」なんて、俺も手放しで喜べたはず。





「お兄さん、お久しぶりです」



カガリさんの声に、固まったままの、兄貴の頬が紅く染まる。



カガリさんと兄貴の、感動の再会。

 



それは・・・

 



 







「私にシンをください!!」




 

 



その一言に始まり、終わった。


兄貴の手からするりとスーパーの袋が滑り落ち、ぐしゃっと、何かが潰れた音がする。
あぁ、きっと卵だ。ゴーヤチャンプルになる運命の卵は次にオムライスとなるはずだった。
そして今、影も形もない姿となり、潰れてぐしゃぐしゃになっているはず。



感動の再会は泡となって消えた。
オムライスの卵も、割れて潰れてしまったのだ。



時が止まったかのようにぴくりとも動かない兄貴を前に、天を仰いで卵に祈りを捧げる俺の嘆きはきっと神様しか知らないことだろう。












・・・っていうか、これ、俺とカガリさんのラブストーリーなのかよ!?





 

 

 

 

END




アホな展開、ついていけますか?(笑)
以前友人がゴーヤを食べさせてくれたのですが、苦くて無理でした・・・。ごめんなさい。
わたしは沖縄には住めないわ!・・でも沖縄そばはうまい!大好き!
シンは苦いものきらいだろうーなーと思って・・・味覚がわたしと似てるかも。
どーでもいー話でした・・・。

今はシンカガ・・・いや、カガシンですが、安心してくださいっ
ここの管理人はアスランを愛してるんですから!!!(笑)

 

BACK

 

 

 

 


 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送