そして次の日・・・。


俺は約束通り兄貴の買い物にデパート巡りに付き合わされている。
朝早く叩き起こされて不機嫌な上、街を歩く人はなぜだかカップルが多い。

彼女もいない俺にとって見せつけられているかのような男女のいちゃいちゃぶりは、
兄貴と2人きりで出かけなきゃならないというイラつきと重なり機嫌はサイアクだった。


けれど兄貴の、

「好きなもの買ってこい」

の一言で憂鬱はおさらばだった。
俺は受け取った1万円札を手に真っ先にゲームソフト販売コーナーに向かう。


ただ今人気のあの超有名RPGは残念ながら売り切れていたものの、
ずっと気になっていたサッカーゲームを購入することができた。

RPGはまたの機会にでも・・・と、俺がソフトを手に兄貴が待っているはずの場所へ戻ると・・・


「・・・・・ん?」


ざわざわと兄貴がいるはずの方が騒がしい。
あぁ、またしてもイヤな予感。


「ちょっと兄ちゃん!どこ見てんだよ!!あぁん!?」
「これ、これ!汚れちゃったよ、弁償してもらおうか〜!?」


やっぱり・・・。

屈強そうなたち悪い男が2人、兄貴を囲んで睨みを利かせている。
兄貴は怯えた様子ではないものの困惑の表情で・・・。
どうしていいのかわからないんだろう。
どうせわけのわからない因縁つけられて絡まれてるだろうに、はっきり突っぱねればいいものを・・・


「あのバカ・・・!」


実は兄貴は柔道は黒帯で、小さい頃から習っていた合気道も剣道も有段者である。
そのくせ一般人に手を上げるのは気に入らないとばかりに
自分の強さを誇示することなど1度もなかった。
それが本当の強さだ!とばかりの兄貴の行動は確かに素晴らしいといえば素晴らしいのだが・・・


「だからってこんな時まで・・・っ」


大の男2人に絡まれても、いかにも自分が強そうだという「気」を見せない。
おどおどしてるその姿はいくらでも毟り取れそうな雰囲気である。

俺は慌てて駆け寄る。


「ゲーム代、取られたらどーすんだよっっ」


まだ欲しいゲームはたくさんあるんだ。
わけのわからない男に奪われてたまるか・・・っ!

 

俺が助けなきゃとばかりに人ごみを掻き分け兄貴のモトへ向かおうとする。

 

けれど・・・俺より先に、兄貴に救いの手を延べる人間がいた。

すっと兄貴の前に立ち、男たちを睨み上げる小さな身体。

 

 

金色の、眩しい髪が見えた。

 

 

「恥ずかしいヤツらだな、おまえら」

 

 

女の声。低く、凄みのある、でも綺麗な声。
女は続ける。


「肩があたっただけで汚れるわけないだろう」


「あぁ、姉ちゃんが弁償してくれるってのかい!?」


「おまえらのようなヤツに払う金はない、さっさと去れ!」


「あぁ!!?」

 

ヤバイ・・・非常にヤバイ。
兄貴が殴られようと蹴られようと踏ん付けられようと、
男なんだから後で笑い話にもなるんだけど・・・
女の人にケガでもさせてしまえば笑えるはずがない。


さすがに兄貴も事態に気付いてる様子で、女性を庇おうとさらに前にでようとしているのだが、
その女性がそれに気付かずに兄貴を守るかのように男たちのまえに立ちふさがっているではないか。


何やってんだよ・・・強いくせにバカ兄貴!!アホ、まぬけ!

さっさと助けろっての!!あぁもう・・・!!

 

「おまわりさーーーんっっ、あそこですーっ!変な人が暴れてまぁぁすーーーっっっ」

 

俺は腹に力を入れとびきりの大声で叫んだ。
ざわざわと周りはさらに騒がしくなり、一気に俺に視線が集中したのがわかったが、
今はもう恥ずかしいとかそんなこと気にしている場合ではない。


「おまわりさーーーん、はやくきてーーー!!こっちですーーーっっ」


くそ!兄貴のやつめ、帰ったらただじゃおかないからな!
ゲーム10本は買わせてやる!
ついでに新しく発売された新天堂のWillも並ばせて買わせてやる・・・!!

 

ざわめく周囲を気にせず俺がまた叫ぼうと・・・兄貴のいる方へ目をやった。

するとすでに男2人の姿は見えなくなっていた。
どうやら俺の声にびっくりしてすぐに去ったようだった。

ほんと、弱い相手(と思ってる)には強気の姿勢でいざとなったら逃げ出す、典型的な悪人だ。
警察相手に暴れないあたりまだ可愛らしいものだとも思うけど。

 

「バカ兄貴!!手間のかかるヤツだな・・・っ!」

 

俺はそう言いながらまた駆け寄った。

 

 

その俺の声に、兄貴を守るように立っていた女性が俺に振り向いて・・・俺はただ驚いた。

 

金色の、強そうな眼差し。


一つの陰りもない真っ直ぐな吸い込まれるきれいなひとみ―

 

 


一瞬だけ、どきっと心臓が強く鳴った。

 

 

 


「あ、あの・・・っ」


兄貴が先に声を出す。

俺がその声にはっとなり、見惚れてしまっていたことに首をふって意識を引き戻そうとすると、
兄貴はそんな俺に気付かないまま勢いよく頭を下げて礼を述べた。


「あ、あ、ありがとうございまし・・たっ!!」


「いや・・・無事でよかった。ここは変なヤツらが多いな。気をつけろ」


「は、は、はい・・・っ」


兄貴が真っ赤になりながら首を縦に何度も振りながら答える。

照れなんて知らない兄貴も、こんな風に助けられて恥ずかしいのだろうか。
少しは俺の気持ちも味わい理解することになったのだろうか。

 

それにしてもどっちが男でどっちが女かわからない。

この助けてくれた女性、確かに美人だが気が強そうで俺の苦手なタイプである。
喋ってわかったのだが、男勝りというか、男らしいと言うべきか。

 

どっちにしろ、俺のタイプじゃないし兄貴のタイプでもないだろう。
まぁ、気持ち悪いくらいに女に興味のない兄貴に、タイプも何もあったもんじゃないが。

 

 


「それじゃ・・・失礼する」


女性は小さく微笑むと姿勢よく俺たちの元からすっと去って行った。
まっすぐ歩く後姿は、意志の強さを覗わせる。
本当に勝気で強気な女性なのだろう。

 


「さーて、兄貴。俺らもとっとと帰るぞ!」


また面倒事に巻き込まれるのはご免である。
とっとと帰ってサッカーゲームで遊びたい。家でしたいことがたくさんあるのだ。
(ついでに夕食はハンバーグだ!)

 

 


けれど兄貴は・・・俺の意思に反してその場から動こうとしない。

もしかして・・・本気でびびってたのか?と疑問を口にする間もなく、
こっちが心配するくらい女に興味のない18の男の口から漏れた言葉。

 

「・・・あの人は・・・だ、れ・・・?」

 

うっとりしている。それは誰が見てもはっきりわかるほどに。

まるで華が飛び交い星が舞うほどにキラキラした瞳で立ちつくし、
助けてくれた女の背中を見えなくなるまで見つめ続けている、兄貴。

 

 

「・・・・だ、れ・・・?」

 

「ま、ま、マジ・・かよ・・・っ」

 

 


―その時、俺は―

 


・・・人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった・・・――

 


(兄貴の好きなマンガより一文引用)

 

 

 

 

 

 

1 END

 

 

ハチクローーー!?(爆)

アスランきっと大好き漫画なのよ・・・!
でもここで白状すると・・・実は私ハチクロ読んだことがな・・い・・んですっ
騙してごめんなさい〜!!正確に言えば、1巻だけは読んだんですけど
ちゃんと読めてないんですが、あのふわふわの絵は好きですよ♪
ついでにキティーをキテーに。
リラックマをリラクマに変更。
まんまだとまずいかな〜とか思いまして、なんとなく。キラックマでもよかったかな(笑)。
リラックマは最初、ラリックマにしようと思ったんだけど・・かなりヤバそうなクマだと思いやめました(爆)。

それにしてもいや〜、まさか連載はじめるとは思ってませんでした!
でも書き始めたら止まらなかった。め、珍しい・・・!
3話からとんでもないお話としてすすんでいきます(笑)。
カガリファン、アスランファン、怒らないでネ☆
全話読み終わった後にすごい突き抜けた爽快感があるアホ作品に仕上げたいです(笑)。
あとこの1話の冒頭部分あまり気に入ってないので落ちついたら書きなおそうと思っております。
現在2話まで執筆公開(拍手にて)済み!!
物語が大きく動く3話を早く書きたくてしょうがないです〜。
それでは続きは少々お待ちくださいませ!

 

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