「展望デッキ?カガリが呼んでるのか?」
「そうだよ」


ラミアス艦長との所用が終わり、多分AA内にいるはずのカガリを探そうとしていたアスランのところにキラがやってきた。
カガリが展望デッキで君を待っている。
そう伝えた瞬間、アスランの頬がすぐに緩んだ。
キラはその姿を見て、やはりアスランがカガリを嫌いになるだなんて絶対にありえないことだと再び確信する。

「なんだか大事な話があるみたいだから・・・」
そう言ってキラは歩き始めた。それに合わせてアスランもキラに続き並んで歩く。
「大事な・・・話・・・」
一体何があるのかわからないけれど、アスランにとって大事なことはカガリに会えるということだ。
断る理由もないし、そんなもの見つかるはずがない。
大事な話というのが何か、左手を顎にあて視線を下げて考えても思いつかないが、そんなことはこの際ほっておこう。
カガリに会える、それだけでいい。

「ちょうど僕も君と話したいことがあるんだ」
「なんだ?」
ふいにキラが言った言葉にアスランが顔をあげる。
「・・・・・・アスランは、カガリが好きだよね」
「え!?・・・・な・・・なんで知って・・・!?」
「・・・・・・・・・・知らない人、いないと思うケド・・・」
「えぇぇええ!?!?」

耳から首まで真っ赤になるアスランを、初々しいとキラは思う。
2人とも可愛くて仕方がない。自分にだってたくさん恋愛経験があるわけじゃないけれど、この2人は特別だ。
2人とも初めての恋なんだろう。それが本当にまっすぐで素直で、こちらも応援したくなるのだ。

「ちゃんと、伝えてね?泣かせないで」

うまくいってほしいから。幸せになってほしいから。
キラは願いをこめてアスランに微笑みかけた。
それを見て、アスランはキラの優しさに気付き、こんな素晴らしい親友を持てた自分を誇りに思った。

「・・・・・あぁ・・・!」

頼もしいアスランの返答に、キラはもっと笑顔になったのだ。

 

そしてキラは展望デッキまでアスランについていき、
視界の中にカガリの後姿を確認するとアスランの背中をそっと押す。

「お姫様が待ってるよ。がんばって!」

アスランは声には出さずに1度だけ力強く頷いた。
その瞳には、先ほどのカガリのようにもう迷いなんてない。


いつまでも片想いのままでいたいなんて思うはずがない。
ちゃんと伝えて二人で笑いあいたい。
少し前にあったカガリの胸の大きさ発言で、しばらくは視線を合わせづらい日々が続いていたが、
それも今日でおさらばだ。
今からは、2人の肩書きは大切な友人から恋人同士にかわり、思う存分視線を絡ませあい愛を囁きあう。
アスランは甘い決意を胸にカガリへと大きな声を張り上げた。

「カガリ・・・・!」

声をかけられ、カガリはアスランに気付き振り向く。

「アスラン・・・・・!」

スローモーションのように、2人に華が咲き誇るような笑顔が戻っていく。
そしてそんな2人を見て、キラは2人の幸せを思いながら何も言わずこの場をそっと去るつもりだった。

 

 

だったのだ。

 

 

キラが踵を返す間もなく、一呼吸置く間さえなく、カガリの叫びが展望デッキ内に響いた。

 


「アスラン・・・・!私の胸を揉んでくれ・・・っっ!!!!」

 

「「ええぇぇぇぇぇぇぇええ!!!???」」

 

今度はアスランとキラの見事に重なった声がデッキ内に響く。
真っ赤になり「う」「あ」「え」と小さな奇声を発するアスランの一方で、キラはまさしく
『開いた口が塞がらない』というのを身をもって体験していた。
どちらにせよ2人ともこの状況は飲み込めていない。

そんな2人に気付くこともなく、カガリが頬を染めながら言葉を続けていった。

「ほら・・・コーディネーターって・・・好きな男に胸揉まれるもん・・・なんだろ・・・?」

恥らうその姿は誰がどう見ても可愛い乙女なのだが、発言は呑み屋にいる酔っ払いと変わらないのがいただけない。
何をどうしたらそんな勘違いをするのか問いただしたいのに、
アスランもキラも今は変なところへと跳ねあがった心拍数を元に戻すことで精一杯だ。

「私・・・・知らなくって・・・・。・・・・・・アスランになら・・・揉まれ、たい・・・」

・・・恥らうその姿は本当に誰が、どう、どの角度で、見ても可愛い乙女なのだ。
だからこそ、呑み屋の酔っ払い発言をどうにかしなくてはならないと
大好きで可愛くて清楚で純真な妹をコレ以上汚すまいと、キラはなんとか声を振り絞った。

「か、カガリ・・・・・。そ、そ、そそれ・・・どこで聞いた・・・の・・・?」
「ん?ディアッカの持ってた雑誌に載ってた女性のコメント欄におっきく載ってた」
「・・・・・・・ディアッカさんか!!!」
「・・・コーディネーターの恋人だけに許された儀式だろう・・・?愛を確かめ合うマッサージじゃないのか?」
激しすぎる勘違いにキラは頭を抱え込みたくなった。
そしてカガリは2人の様子を見て「何か」に今更ながらに気づき始める。

・・・・・・・あれ?私・・・何か間違ったこと・・・言ったのか・・・?

でも間違いなく、あの雑誌には大きく書かれてあったのだ。
胸が大きい女性への『どうしてそんなに大きく育ったのか?』という質問に、
女性は笑顔の写真とともに『好きな男に揉まれたんです』と答えていた。
だからコーディネーターは好きな者の胸を揉むことで、さらに深い絆で結ばれるものだと思ったのだ。
胸が大きくなりたい自分とアスランに想いを伝えたい自分にはなんていい告白なのだろうかと、
思い切って「私の胸を揉んでくれ」で全てOKだと思ったのに、カガリの思いとは正反対に事はうまくすすまずにいる。

・・・・・もしかして、頼み方がまずかったのだろうか?

その考え自体間違っているという単純な答えに辿りつくこともなく、カガリはまるでハツカネズミのようにぐるぐる思考回路に迷いこむ。

・・・・・・・頼み方?それとも他に何か???

意識が思考回路の深いところまで潜りこんだところで、ある事実に気付く。

まるで自分はアスランと両思いのような気でいたのだ。
だからこそ、このお願い事は2つ返事で受け入れてくれて、2人は晴れて恋人同士になるとばかり思っていた。

違うのだ。
アスランは自分のことを好きではないのだ。
あぁ、そうか・・・。またしてもやってしまった。
アスランの気持ちに気付くこともなく、想いを勝手に暴走させるなんて・・・・

別の意味で暴走していることにも気付かずに、
カガリは今にも沈みこんで暗くなりそうだった自分を奮い立たせ、2人に向き直って笑顔を見せる。
ふられたのを認めなくては・・・・。そして立ち直らなければ。

「・・・・・そっか!そうだよな・・・!ごめんな、アスラン・・・・!」

零れそうになった涙はなんとか押し止めた。
今、涙を見せたら、優しい彼はきっといつものように自分を受け止めてくれるだろう。
だから、強く見せようと必死に笑顔を繕う。

「・・・私・・・アスランが自分を好きでいてくれると思っててしまった・・・恥ずかしいな、へへ」
「か、かがり・・・?」
「アスランが・・・87センチの私の胸を揉みたくないって・・・わかったから・・・もうしつこく言わない」

違うよ!それ違う!気付いてカガリ!胸じゃない!
とキラはなんとか妹のとんでもない勘違いを教えようと
カガリにアイコンタクトで伝えたけれども、カガリは気付くはずもなく自分の言葉を続ける。

「・・・・ごめんな。これからは・・・いい友達でいてくれよな?」

友達、という言葉に胸がぎゅっとなったが、カガリはその痛みを振り払い右手を差し出す。
それは、アスランと友達の証として握手するために差し出したのだ。

そして今、そのカガリがそっと差し出した右手を見てキラはさらに慌てた。
一体今どういう状況なのかはやっぱりさっぱりよくわからないし、いろんな意味でとんでもないことにはなっているが、
どんなに色んな意味でとんでもないことになっていても、このまま2人は結ばれませんでした〜。
なんて終わり方だけは絶対にあってはならない。

「ア、アスラン・・・!君・・・!」

なんとかしなくてはいけない。
こうなったらもう男らしさを見せるのだ。
いけ!アスラン!君の出番だ!
とばかりに視線で訴えると、わかったのかわかっていないのかアスランは先ほどキラに見せたのと同じように力強く1度頷く。
そしてカガリが握手しようと差し出した手を握り締め、こちら側に引っ張り
もう少しでキスができそうな距離ほどに顔を近づけた。

 

そうだよ、アスラン!今言うんだ!カガリ、君を愛してる、と!

 

キラが両手の拳を握り締めアスランの次の言葉を待つ。
やはり最後に決めるのは男の役目だ。
アスランが男を見せるのを、カガリにその深い愛を伝えるのを、

「君を愛してる」というその言葉を・・・キラは拳をぎゅっと握り締めて息を止め待ったのだ。

 


「お、俺は・・・・・君の胸しか揉みたくない・・・ッッ!!!!」

「アスラン違うよぉおおおお!」

 

温かく見守る気持ちが滑り落ちて行くかのようにキラは1人間抜けとも思える大声を出してしまった。
そしてまた慌てる。
こんな告白、あるはずがない。
自分が女性だったらふざけるなと平手一発食らわせているかもしれない。

「ちょちょちょっと!アスランッ!君ってば・・・そんなんでカガリが喜ぶわけない・・・っ」
「アスラン・・・嬉しい・・・!」
「はずなんだけどーー!!??」

もはやすでにキラは景色の一部になっているのだろうか。
2人だけの世界に入りこんだ2人を止める術をキラは持たない。
ありえない世界で繰り広げられるありえない会話に
キラは脱力したいのか力をこめて否定したいのかよくわからないままでいた。
アスランもカガリも赤く染めた頬も潤んだ瞳も真剣そのもので、そんな姿を見せつけられれば、
もう2人をただ呆気にとられて見つめるしかできない。
完全に自分は景色の一部だ。

「カガリが他の男に揉まれてるところなんて想像したくもない・・!カガリの胸は俺のものだ・・・!!」
「私だって・・・!!アスラン以外に揉まれたくなんてない・・・っ!!」
「・・・・・・カガリ・・・ッ」
「アスラン・・・・!」

むせび泣いてしまいそうなほどの感動が互いを包み込む。
大好きなその人のたった1人の誰かに、自分を選んでくれたなんて、それは何て幸せなのだろうか。

「・・・私・・・てっきりおまえは他の女の胸を揉みたいんじゃないかとばっかり・・・」
「馬鹿だな・・・君は・・・・」

いつものようにアスランは紳士ぶって大人な表情を必死で作り、この手をカガリへ触れるためにのばす。
カガリのふわりとした小さなその手をまた強く優しく握りかえし、もう片方の手は腰へまわす。
そっと、ぎゅっと、2人は抱きしめあった。

「・・・・・・・カガリの胸しか揉みたくない・・・」
「アスラン・・・・私・・・本当に嬉しい・・・」

カガリはアスランの背中に自分の両手をまわす。
抱きしめられたことはあるが、こうやって自分の想いを行動にうつすのは初めてだ、とカガリは思った。
抱き合う2人は正真正銘の恋人。2人だけの甘い時間に揺られている。

 

今、2人は恋人同士になったのだ。おめでとう自分たち。

 

 

 

 

そのあまりにも不思議な光景に、1人、取り残されたキラがはっと我に返り叫んだ。

「ね、ねぇ!?これって告白なの!?成功したの!?ねぇ・・誰か教えて!!」

キラの切なる叫びは、互いに互いしか見えない恋する二人に届くはずもなかった・・・

 

「だ、誰かー!!」

 

 

 

 

 

END

 

ギャグに見せかけてシリアス・・・んなわけなくてやっぱりギャグ。
な ん だ こ れ は ! ? (爆)
もうすみませんすみませんすみませんマリューさんが97かはしらないすみませんすみませんすみませ・・・!
なんか最近すごくお馬鹿な作品をたくさん描きたくてしょうがない・・・。
青春の日々2 〜キラ様の日記・キレそうな僕の1クール〜 でした。

きっとこんな話が種43話後にあったはず・・・はず。

 


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