Romantic  Connection

 

 

 

 

 


各国の代表が集う晩餐会。

 

アスハ邸で行われたこの晩餐会は、
オーブ国代表の座につくカガリも例にもれず参加していた。
いつも着ている服よりも、もっと肌を露出したデザインのドレスを身につつみ、
その姿は嫌が応にも男たちの目に止められる。

 

そして、彼女の護衛兼恋人の黒髪の男は、その光景をただ、黙って見つめているしかなかった。
腹立たしさと、悔しさとが身体をうずまいていく。

 

 

 

そんな展開が打破されたのは、たった一杯のワイン。

 

 

「未成年ですから」と断るカガリの言葉も聞き入れてもらえず、
酒に弱い彼女が、とある国の重鎮とやらにすすめられ無理やり飲まされたせいで、
気分が悪くなってしまったのだ。

 

それをいいことに、カガリの腰に手をまわし引き寄せようとしたその男の前に、
アスランは割りこんだ。

「代表は気分が悪いようですので」

それだけ言うと、ふらついた彼女のその身体を抱き上げる。

 

抱き上げた瞬間、甘い香りがした。
香水なんてつけてるはずはないのに、それはカガリの匂い。
どこまでも魅惑的な、女の匂い。

首に回された彼女の腕が熱かった。
柔らかな膨らみが谷間となって視線の先に映り、その感触が身体に張り付く。

やましい心臓の音を聞かれてるかもしれない。
それとも、周りの喧騒にかき消されているか?

 

 

賑やかな会場の中を、アスランは掻き分けるようにすり抜けていく。
会場を出て通路を歩けば、カガリが言った。
「・・・・・ごめ・・んな〜」

いつもと違う甘えてくるような声に、酔っているということがわかる。
気にするな、と一言伝えると、首に回された腕がさらに熱くなった気がした。

 

 

通路を抜け、カガリの自室へと向かう。
恋人として何度も訪れたことのあるこの部屋。

でも2人にはまだ、恋人同志の身体の関係はなかった。

一つになりたいと思うことは、何度もあった。そのたびに、まだ時期じゃないと言い聞かせて長い時を過ごしてしまった。

 

 

 

 

抱き上げた身体を、ベッドにそっと沈めると、ドレスがめくり上がり白い脚が見えてしまう。
胸元がはっきりと見え、柔らかそうな膨らみに自然にのどを鳴らしてしまった。

アスランの首に絡まっていた腕がするりと抜ける。そのままベッドへぱたりと落ちた。
肩にかかっていた重みがなくなったことに寂しさを覚えながら、
彼女のそんな動きにさえ、今は扇情的に思えてしまう。

 

知らずに襲いくる、情けない男の欲を必死に押し止めようとする。
こんなにも醜い感情を、彼女に知られてしまうことが怖かった。

軽蔑されて、逃げられて、嫌だと言われたらきっと立ち直れない。

好きだから欲しいのに、好きになりすぎて怖くなってしまった。
2年の歳月を経た今でさえ、彼女に自分の思いを伝えられないでいる。

 


「アースーランッ」
「なんだ?」

色のあるその格好とは正反対に、まるで子供みたい甘えてくる姿。
アスランの内なる思いは全く知らない、純なその姿。

 

無邪気に、嬉しそうに笑いながらカガリは言葉を続けた。

「なんでさぁぁ」
「ん?」
「なんでぇ、おまえは〜〜」
「・・・・?」
酔っているからか、歯切れの悪い言葉たち。
アスランはその続きを根気よく待つ。

「わたし・・・を・・・・・・・・・」

 

気のせいだろうか?
先程よりもカガリの頬が赤かった。
唇が小さく動いているのに、その後の言葉が聞き取れない。

 

「なに?・・・どうした?」

優しく聞き返す。
彼女にしか見せない瞳を向ければ、動いていた唇からもれた言葉を聞き取ることができた。

 


「・・・・・・・どうして・・わたしを・・・抱かないんだ・・・?」

 


その言葉は、時を止めてしまったのかと思った。

 

 

 

 

意味を理解すると、心臓が早鐘のように鳴り始める。
落ち着け、と何度も言い聞かせるのに、言い聞かせる毎に苦しいほどに強く鳴る。
自然に、呼吸も荒くなってしまった。

「わたしは・・魅力ないのか・・・?」

甘えたような声が、くらくらとする感覚へと変換されていく。

 

魅力がない、なんてそんなことあるはずない。
今でさえ、その声に表情に、彼女の全てに眩暈がするほどに酔いしれているというのに。
今だって、本当は

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すごく、抱きたい・・よ・・・?」

 

 


まさか、こんなところでこんな風に、
彼女に自分の中にある欲を伝えるなんて思いもしなかった。
考えることもなく出た言葉。
アスランの中でそれは、とてつもなく大きく膨らんでいたせいなのかもしれない。

 

「じゃ、しよぉ!」
「こらこら」

酔って足元はふらふらなはずなのに、寝転がったままアスランの服の裾を強く引っ張る。
まるで、脱いでくれと言わんばかりの行動を、アスランは苦笑しながら優しく諌めた。

 

「とりあえず俺は・・・」

 

慎重に言葉を選ぶ。
抱きたい、という気持ちに偽りはない。
すぐにでも抱きたい。繋がりたい。一つになれたら。

 

でも、
今は駄目だ。

「大好きな子、傷つけるような抱き方はしないから」

 

 

酔った勢いにまかせて繋がるのはカンタンなことだ。
したい、と言った彼女の言葉が本当だとしても、今、手をだすのは許せなかった。

初めての時は、2人がちゃんとお互いを意識して、
怖がらせないように、優しく優しく大切に・・・甘い時を与えてやりたい。

一生思い出に残る素敵な時でありたい。
男のくせに、随分ロマンチストだと笑われようと構わない。
一番愛しい人を一番喜ばせて愛したいと思う気持ちを大切にしたい。
カガリを、大切にしたい。

 

「・・・・・・・・・・・カガリのこと本当に、愛してるから」

 

だから、その時までは彼女に手をだすことはできない。
今にも飛びそうな理性は、深い愛情で押し止められていた。

 

「だから、抱けないよ。今はね」
「そっかぁぁぁ」

 

赤くなった顔を冷やすようにして、アスランは金の前髪をわけ、カガリの額に手を当てた。
その手に、今度はカガリの両の手が重なる。

「へへへ・・・そっかぁ」

重ねた手をぎゅっと握られた。
酔っているせいでその力は弱くても、アスランの心ごと強く捕まえて、
手と手から、愛しさが伝わってくる。

 

「・・・・おまえの気持ちがわからな・・くて・・・不安だったんだぁ・・・・・」

 

染まった頬に、潤んだ瞳。
彼女の言葉はどこか震えているかのようにも聞こえてくる。
もしかしたら、ずっと悩んでいたのかもしれない。

 

だから、今度はこちらの気持ちを伝える番だ。

 

「怖かったんだよ・・・・・・言って・・・嫌われるのが・・・」

 

重ねられた手が、先程の腕のようにまた熱くなった気がした。
かっこ悪い言葉を口にすれば、彼女からくすくすと笑い声がもれる。

「バカだなぁ・・・・」

額にあてていた両手が外れて、それに合わせてアスランもゆっくりと手を離す。
瞳と瞳が、重なり合う。

 

染まった頬の彼女がにこりと笑った。

 

アスランの、大好きなその笑顔で

 

「こんなに・・・好き・・なのにぃ・・・」

 

微笑みながら、そう言った。

間違いなく、彼女はそう言った。
アスランの幻想でも夢でもなくて、耳に届いた言葉は、最高の喜びの音色。

 

「だからぁ・・・」

そのまま潤んだ瞳がゆっくりと閉じられていく。

 

「・・・・・・・・・・目が・・・覚め・・た・・ら・・・・・・しよぉ・・な・・・?」

酔いがもたらす眠気が限界だったのか、その言葉を言い終わると、
今度は穏やかな寝息が聞こえてくる。

 

瞼を閉じ切る、最後の最後まで彼女は微笑んでいた。
自分に向かって、可愛い笑顔を見せてくれた。

 

軽蔑されるどころか、愛しそうに、自分の言葉に耳を傾けてくれた。

 

 

 

君を抱きたいんだ

 


その深く強い思いは、とりあえずは保留。
でも

「気持ち聞けたし、な」
本当に幸せそうに微笑んでいるのは、こちらなのかもしれない。


目が覚めた彼女に、今度は自分の正直な気持ちを伝えよう。

たとえ、どんなに醜い感情でもきっと受けとめてくれる。
そしてまた、照れながら幸せそうに笑ってくれるんだ。

 

 

 

 

END

 

初心に戻って何か書こうと思い、最初は24話かなと思ったんですが、
何も思い浮かばず断念。
それならば、望月の中の理想のアスランを・・・!と思いまして。
まだちょっとスランプ気味かもしれませんが・・・これが望月の中のアスラン基本形です(笑)
そして、「目が覚めたらしような?」はカガリに言わせたかった言葉のひとつ(笑)
タイトルも初心にかえり、敬愛なる岡崎律子さんの歌から。
女の子の気持ちを歌った素敵な歌です。

 

BACK

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送