GAME

 

 

 

 


「アスラン!」


部屋で大人しく読書に耽っていたアスランは、その愛しい声に本から顔をあげた。
天気がいいから外に出ようとでも誘われるのかと思い、椅子から腰をあげようとした時、彼女の手に見なれぬものがあるのに気づく


「なんだ、それ?」
「これか?オセロ!」
「オセロ?」


彼女が持っているのは、折りたたまれたずいぶん小さなオセロ盤。
旅行先でも遊べるような、折りたたみ式のものだろう。

あまりボードゲームが、いや、家の中で大人しくするのが苦手な彼女にしては珍しいものを、なぜに持ち出したのか


「これなら勝てるぞ!!」


あぁ・・・・なるほど

 


1人思い出して納得する。
以前、チェスであっという間に勝ったこと、パソコンのタイピングゲームは相手にならず、苦手だと言いつつキラから借りたテレビゲームでも圧勝だったこと、全てを一瞬にして思い出した。

負けず嫌いな彼女らしいというか。


「やらないのか?やるだろ?」


どこか有無を言わせないその言い方に苦笑がもれる。
もちろん、彼女の誘いはすべて受けるつもりだ。


「いや、やってもいいけど、そうだな・・・・ハンデはつけないのか?」
「いらない!」
「でもカガリ弱いし・・・」


子供のように、頬を膨らませて睨んでくるが全然怖くはない。
むしろ面白い・・・なんて言ったら怒られるのだろうか?

そんな考えがちらりと頭をよぎったが、やはり怒られるのはまずいと思ったのか、口に出すことはなかった。


「カガリが強くなったら、ハンデなしでもいいぞ?でも、今は俺も楽しみたいから・・・10石、ハンデをつける」
「・・・・・・・・わかった・・・。そのかわり負けても文句言うなよな!!」
「もちろん。」
「私が勝ったら、泣いて謝らせてやるぞ!」
「じゃ、俺が勝ったら、俺も何かカガリに」


「ぜっっったい、私が勝つ!!」


そう叫ぶと折りたたみ式のオセロ盤を勢いよく広げ、白と黒を真中へ2つずつ並べる。
そのあとは、黒の石を、おまえが黒星だなんて言いながらアスランに手渡した。

そんな姿も子供っぽくて笑えるのだが、やはりそれも必死に隠してみせた。

 

 

 

ぱちんと、オセロの石が落とされる


カガリの考える時間の4分の1ほどの時間でアスランをそれを返してしまうせいか、アスランはまたカガリに少し睨まれた。
それを優しく受けとめ、微笑み返したら、照れたのか、慌ててオセロ盤に視線を合わせる。

 

 

 

その、くるくる変わる表情に魅入る

眉間に皺をよせて唸っているかと思えば、考え込んでは黙り込む。
ちらりと上目遣いでこちらを見ては、いい作が思い浮かんだのか、花が咲くような笑顔になる。

 

 

アスランが愛しくて愛しくて仕方ないもの

 

 

目の前の少女はそれをわかってやってるのだろうか?

 


「ここ!どうだっ」

そんなふうに可愛く笑うから、アスランの心臓の音は強く鳴り始める。

とくとくと鳴る音が、頭の中を支配して、思考回路がおかしくなってくる。

必死の思いで、残ったわずかな思考をフル稼動させた。


元来、こっちだって負けず嫌いなのだ。
たとえそれが愛しい彼女であっても、だ。

彼女の前では常に優勢でありたい。

こんなふうに笑顔ひとつで一喜一憂してるなんて、知られたくない。

どこまでもかっこいい男でありたいのだ

 

 


・・・・・・・・何より賭けてるのだし


何をお願いしてみようか?

好きだって言ってほしいし、キスもしてほしい。

だから負けられない。

 

 

 

 

 

 

 

 


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「はい。俺の勝ち」

 

結果はハンデの10石をカガリに渡して33対31
アスラン優勢勝ち

 


「さて・・・何をお願いしようかな・・・」

にやりと笑ったアスランを見て、カガリの身体中に危険信号が走る。

 

「できないことはしない!」

「それじゃ、賭けの意味ないだろ・・・」

相変わらずの彼女の態度。
アスランの言うことを予想しているのか、すでに顔が赤い。
そんな姿を見て、可愛いと思いつつ、やはりその予想通りの答えをだしてあげた。

「・・・・好きって言ってもらってキスしてもらおうか?」

「無理!」

「ダメ」


いつも繰り返される会話。
一向に慣れない彼女。

 

「・・・・・・・・・・・・他のにしないか・・・?なっ?」

「・・・・・・わかった・・・。じゃ、俺がするからいいよ」


ガタンと椅子が音を立て
立ちあがったアスランがカガリの側に寄る

口ではどう言おうと逃げ出さない
それは愛されてる証拠
そう思うとどうしようもない愛しさに駆られてしまう。

カガリの頬に優しく手を添え、カガリと唇を合わせようとした時にカガリの唇がわずかに2回動く

それじゃ聞こえないよ?って意地悪を言ってみてもいいのだが、愛しさに負けてそのまま口付けた

1回目は、優しく

2回目は、激しく

「・・・・・・ん・・・・っ」

2回目のキスのあと、高鳴る心臓の音をごまかそうと、カガリはアスランにむかって大声を張り上げた。


「おま・・・えっ!!普通1回だろ!?」
「カガリがしてくれない分2回で」

さも当たり前かのように言うアスランにカガリは二の句が告げなくなる

 


・・・・・・・こんの、黒男め・・・っ!!

 

「何か言いたそうだけど?」

「べっつに!」


真っ赤な顔の彼女に自然に笑ってしまう。
どんな姿も可愛いのだ。


「ごめん」
「べつにっ」

いつまでも怒らせるわけにはいかないんで、素直に謝ってみたら、素直じゃない彼女の言葉。
でも許してくれてることなんてアスランはちゃんとわかってる

 

 

「・・・・・・・それにしても、おまえさぁ・・・・・」
「ん?」
「わざと僅差で勝っただろ」
「違うよ。今回はほんとに危なかったし」
「なんで」

カガリにとってただ何気なく聞いた言葉だった。

それなのに、その一言にアスランの頬がわずかに赤く染まる。
次の瞬間、綺麗な笑顔をカガリに向けて、

「カガリの表情が可愛くて」

照れてるのか、照れてないのか、

でもその姿に、さっきの黒さなんてかけらも見つからない。


「・・・・・・・・っ」

今度はこちらが染まる番。
アスラン以上に赤くなっていることは間違いない。


「おまえ、白か黒かはっきりしろよ・・・・」
「?」

 

ドクドクと鳴る心臓の音なんて、彼はきっと知らないだろう。
その笑顔や仕草ひとつで一喜一憂してるなんて、
知らなくていいけどさ。

いつも惑わされて、やっぱり負けてるのは私ばっかりだ

 

悔しいから言ってはやらないけど、な。

 

 

 

END

 

 


望月の描くアスランは白が多いですが、黒でも好きです。
というよりも、カガリと出会う前のアスランは無色のような気がして・・・
カガリへの想いがなければ色なんてないと思ってます。

 

 

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