☆★☆アストロ物語。☆★☆
だいきゅうわ:カガリとアストロとやっぱり時々アスラン・・・なのニャ♪
愛するカガリの変調に思い悩むアスランとは反対に、何も知らないアストロは無邪気だ。
『♪ニンゲンになったらー、ニンゲンになったらぁ〜』
朝食後、今日は一日中デスクワークで忙しいカガリに拗ねることもなく、
一人で積み木遊びで楽しんでいるアストロ。
お守り役のアスランは、先ほどまで積み木遊びに参加していたのだが
今は椅子に座ってぼうっとカガリのことを思い出していた。
アストロから聞こえてくる替え歌が、実に楽しそうなのがどこか遠くの出来事に感じる。
何も知らなさそうなアストロが、唯一何かを知っているのかもしれない。
歌声につられるかのようにしてアストロの様子を覗った。
アスランが自分をじっと見ていることにも気付かずアストロは歌いつづけている。
『♪こいびと100にんできるかニャ〜』
・・・アストロ、おまえは何か知っているか・・・?
カガリのことを・・・カガリはどうしてあんなに元気がないんだ・・・?
『♪ひゃーくにーんで、もみたいにゃっ』
そうだ・・・アストロ・・・俺も気を揉んでるさ。
カガリ・・・。
どうして君はあんなに元気がないんだ・・・?
『♪巨乳のチチをわしづかみぃ〜』
あぁ・・・いいなぁ・・・、それ。
俺も元気がないときはカガリの胸に飛びつくんだ。
そうすれば元気に・・・、きっとカガリも元気に・・・
『♪もみもみもみもみもみもみとぉ〜』
・・・・・・・カガリの巨乳・・・万歳・・・!!
・・・・。
「ちょっと待て!!!!」
『ニャ?』
「おまえその歌は何だ!?」
『ニンゲンになったらっていう有名な歌なのニャ!』
「そんな歌はない!!!」
アスランはその場に倒れ込みたくなった。
頭を抱えて、このまま寝室に連れて行ってほしいと・・・ついでにカガリに添い寝してほしいと。
ついでにおやすみのちゅーをしてほしいと。さらについでに、○○○を・・・!
「ダメだダメだダメだ!!!今はこんなこと考えてる場合じゃなーーーいっっっ!!!」
アスランはボウフラのように湧き上がる煩悩を追い払うのに必死になった。
今自分は、カガリの苦しんでいる理由を知り、その心にある苦しみを解き放ってあげなくてはならない。
なのに、頭の中では
「よいではないか〜よいではないか〜!へっへへ〜」
と、カガリの服を脱がせまくっているではないか。
アスランは頭を抱え込んで勢いよく首を横に振りまくる。
「煩悩たいさーーーん!!!カガリの柔肌はお預けにしろーーーー!!!」
『柔肌・・・♪覚えたニャ♪』
「覚えるな!!!!」
アストロは見事なまでに知識を吸収してゆく。
それは素晴らしいことのはずなのだが、如何せん、手本になるべき人間がずれている。
アスランが自分でそれに気付かない限り、アストロのまともな猫には育たないだろう。
「もういい・・・アストロ、俺は考え事をしているから話しかけるんじゃない」
いつになく真剣な表情でアスランは言った。
その声のトーンが普段より低かったため、アストロは静かに頷く。
珍しく真面目なアスランを目の前にして、アストロも大人しくしていようと思ったからだ。
『アスラン、かんがえてるのニャ』
そう言い、一人の積み木遊びを再開させる。
「・・・・・」
『アストロも考えるのニャ〜』
一人ぼっちは寂しいのだ。
アスランとおんなじ事をして、少しでも寂しさを紛らわせたい・・・。
それはアストロの切ない思いだった。
ちらちらアスランをこっそり見るも、やっぱり難しそうな顔をして考え事をしている。
声をかけても、答え返してくれそうにない。
だから何を考えよう?
今日の晩御飯は、ビーフシチューだとメイドさんが言っていたので考えなくてもよい。
『そうだニャ〜・・・!』
「・・・・・」
少しでもアスランに構ってほしくて、わざとらしく大きな声で言うのだが、
やっぱり振りかえってはくれなかった。
けれどアストロは気にせず言葉を続ける。
『ニンゲンになったらー、頑張って乳を大きくするのニャ♪』
「乳!?」
乳にだけ反応しやがった。
けれどアストロは、どんな理由だろうとアスランが答え返してくれたことがとっても嬉しかったのだ。
『そうだよね♪ニンゲンになったら乳がでかくないとね♪』
嬉しくってウキウキした気分でアスランに話しかける。
『アスランもやっぱり乳がでかいほうがいいー?』
「そりゃもちろん!カガリなんて最近またおっきくなってきたしー、
やっぱ俺のおかげ?なーんて!・・・・・・・・・って何言わせる!?」
『乳を大きくしたいのなら、キラ様にマッサージしてもらうといいのニャ!』
「キラ!?どうしてキラ!?リアルすぎ!!!!」
微笑む親友が脳裏に浮かぶ。
キラに会わせたことなど1度もないのに、なぜキラを知っているのだろうか。
カガリが口にした言葉を覚えているのだろうが、
まさかカガリが「胸を大きくしたいのならキラだなっ」なんて言ってるはずはない・・・!
いや、そうだと信じたい。
「アスランはヘタだから・・・」
なんて思われていたら・・・自分は苦悩で前髪が後退するだろう。
「うううーーー!」
蹲るような恰好のアスランに、アストロはそっと寄りそう。
『アスラン、元気だすのニャ』
元気を出してほしい。
アスランにはいつも、変態ちっくなニヤケ笑いをしていてほしいのだ。
『そうだっ!キラ様に乳を揉んでもらうといいのニャ!』
「イヤに決まってるだろう!!??」
『ニャ〜』
怒られながらも、アスランとのやりとりが楽しいアストロは、
あんまり反省する事もなくアスランのお叱りの声を受け入れた。
そしてその嬉しさを身体中で表すために、元気を出してもらうために、アスランに愛の歌を捧げる。
『♪ニンゲンになったらーニンゲンになったらぁ〜
こいびと100人できるかニャ〜?』
「だからそんな歌はなーーーいっ!!!!!」
肩で息をするほどに大きな声で制止したアスラン。
『だってアストロ・・・愛の歌、これしかしらにゃいモン・・・』
「誰だ教えたのはー!?」
多分おまえだ。
けれどこの場にそれをびしっと言ってあげることのできるマトモな人間はいなかった。
そのせいでアスランは一人暴走してしまう。
「いいか・・・!歌っていうのはこういうものだ・・・!コホン・・・
あーあー。・・・♪とおくぅ〜はなれぇてぇえーるぅほどにーぃい、ちかくぅにかんじてる〜〜ぅ〜ぅ」
『ヘタ。』
「ほっとけぇぇ!!!!」
その日、カガリが仕事を終えるまでの間、
この部屋からはものすごい音の外れた歌声が響き続けることとなる。
そのせいかおかげか、アストロは2つめの愛の歌として音程のずれまくったReasonをばっちり覚えた。
そんなこんなで結局、
アストロとの会話は脱線するだけで真相に迫ることはできなかったのである。
つづく。
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