「アストロが・・・アストロがおかしいんだ・・・っ!!」

 

涙で潤んだ瞳、紅潮した頬、上目遣いのトリプルパンチでそう告げられたアスランは、
その場で押し倒したくなったのを根性という名の理性で押し止める。
カガリの顔は真剣だ。
ここでカガリの気持ちを無視するようなことがあれば後が恐ろしい。
1ヶ月口を聞いてもらえなくなるだろう。
そんなことになったらアスランは呼吸ができなくなる。
だからどんなに押し倒してあんなことやこんなことやそんなことまでしたくとも、
ぐっと堪えてみたのだ。

 

そんなアスランの涙ぐましい努力は1時間前のことだった。

 

 

 

 

 

☆★☆アストロ物語。☆★☆

だいろくわ:かなしみのあすとろ・・・なのニャ。

 

 

 

 


「どこかおかしいのか・・・」

今、アスランは自室にて主電源をOFFにした状態のアストロと向き合っている。
起動させてから今まで、アストロの電源を切ったことはなかったので、
喋らずに、それこそ本当に人形のようなアストロは少し違和感がある。
しかし、こうしなければアストロの回路を開く事はできなかったのだ。

アストロがおかしい、カガリが言った言葉はアスランにも覚えがある。

きっと回路のどこかがおかしくなってしまったのだろう。
なんせカガリのために!と数時間で作り上げた子でもあるのだ。

「♪思考回路は〜ショートすんぜんっ」

誰も居ないのをいいことに、今話題の美少女アニメの主題歌を口ずさみながら、
アスランは工具片手にアストロの修理を始めたのだった。

・・・ちなみに彼の名誉のために言っておくが、アスランは決して、
美少女フィギュアを買い漁りパンツを覗き込むアニメヲタクではない。

ではなぜ、彼は毎週かかさずこのアニメを録画つきでチェックしているのか?

それは――

 

「あのセーラー、カガリに似合うよな〜♪」

 

そう、彼はカガリヲタだったのだ。
(彼女にしたら迷惑な話である。)


 

アスランの部屋のクローゼットの中には、同じデザインの護衛服が3着、
あとは全部カガリのためにこっそりそろえている萌え系アイテムが並んでいる。

そのどれもが、寝不足なら寝ろよ!!と、ツッコまれてしまうほどに夜なべして、
頑張って縫い上げたものばかりである。
もともと手先が器用とはいえ今ではお裁縫はプロ級だ。
もしも護衛を解雇されてもその職で食っていけるほどである。
ちなみに3サイズは完璧だ。コーディーの目は恐ろしい。

セーラーからバニー、メイド服まで。
特に、この屋敷のメイド服をチェックして、
そこにさらにアスランの趣味という名のオリジナリティを付け加えてできあがったメイド服は、
数ある萌えアイテムの中でも自信作の一押しだった。

もう1度言っておく。
彼はメイド萌えではない。カガリ萌えだ。
しかし未だにカガリに着て欲しいとおねだりもできていない繊細な男だ。

が、一般ピーポーから見ればそんなことはどーでもよくて、気持ち悪いだけである。

 

 


それはともかくとして・・・
話を戻すと、アストロを今から修理しなくてはならないのだ。

 

しかし、

 

「・・・?」

 

お気に入りの工具を使い回路を開いてみたもののこれと言った以上は見つからなかったのだ。

それにしては最近、ほんとうにおかしい。

どうおかしいのかと問われれば、
ここ数日、要らぬ事までベラベラまるで機関銃のように喋りまくるあの姿は消え去り、
大人しく物静かで、まさしく「借りてきた猫」状態になっている。
そんなアストロを、アスランも少々気にかけていた。

人のことを笑顔で、下僕だの変態だのハゲだの散々に言ってくれたものの、
(いくつかは言われてない)
自分が生み出したものには愛着がある。

 

アスランは首を捻った。

ただ単に大人しいのはこちらとしてもありがたい。
このまま気遣いもできるネコになり、ぜひカガリとの甘い一夜を邪魔しないでくれれば・・・
それは願ってもないことだ。
が、カガリの元気がなくなるのだけはいただけない。
どうやって説明するべきか。

 

「ま、だんだん俺に似て寡黙なナイスガイになったんだろうな〜」

 

それだけはありえないだろ。

 

 

 

 

 

 

つづく。

 

 

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