昨晩のけだるさを残しながら迎える爽やかな朝、
カガリをぎゅうっと抱きしめながらごろごろベッドに転がってテレビを見ていたら、
番組の途中、白いネコが画面に映った。


「可愛い!」


目が覚めたらまるで日課のようにテレビの電源は最初からつけていたとは言え、
アスランにしてみればカガリの瞳はいつだって自分だけを見つめるようにしていたから、
そのネコがカガリの目に入ったことが気に食わない。


「可愛いなぁ〜」


カガリがそのネコに喜びの声をあげる。
今まで俺の腕の中で恥らっていたのに・・・と、
アスランはきゃあきゃあはしゃぐその姿に目を細めつつ、
画面の中の白猫に軽い嫉妬を覚える。

俺って繊細だなぁ・・・とわけのわからないことを考えながら。

 


そしてその日、さっそくカガリの喜ぶ姿
(「アスラン、ステキ!大好き!愛してる〜〜〜!ちゅーしちゃうぞvこのこのっ」)
を想像して、あるペットロボを制作したのだった。

 

 

 

 

☆★☆アストロ物語。☆★☆

だいいちわ:アストロ、たんじょう!!

 

 

 

 

「カガリ、カガリ!できたぞ!」

今しがた自分がこの世に生み出した傑作品を抱えてアスランはカガリのもとへ。
執務室の扉をノックもせずに開けたことに、カガリが驚いていたが、そんなことはお構いなしである。


「あ、アスラン・・・?どうしたんだ?」


いつもなら鬱陶しいほど、このオーブの真夏の暑さ以上にひっついてくるアスランが、

「有給ください!」

とだけ言って部屋にこもったのも驚きだったが・・・

礼儀正しい彼がノックもせずに部屋に入り込んでくるのは、
ほぼ毎夜の夜這いを除いて初めてのことで、これまた驚きなのである。

 

「見ろ、カガリ!」

「え・・・?」


執務室の机の上に、少し大きめの黒いぬいぐるみのようなものが置かれた。


・・・どこかで見たことがある。


カガリは真っ先にそう思った。

 

「カガリのために作ったんだぞ!名前は・・・」


めずらしく笑顔全開のアスランを少々不気味に思いながらも、
カガリはこのぬいぐるみが「何に似ているのか」思い出した。


色こそ濃紺で、目こそ翡翠ではあるが・・・これは・・・

 

 

「トロだ!!」

 

 


思い出したようだ。
そう、今朝のTV番組の中で出ていたキャラクター、白猫のトロだ。


アスランは嬉しそうに、頷くも、こう答えた。

 

「違う、こいつは『アストロ』だ!!」

 

「アストロ・・・?」

 

「宇宙の意もある。宇宙で愛し合った2人にはぴったりの素晴らしい名前だろう!」

 


どっからどう聞いても、アスランの名前を足しただけだろうと言うのをカガリは堪えた。
ステキな名前にしあがったのも偶然の産物だ。


が、興奮してるアスランにそんなことを言ってしまえば、ひどく落ち込んで前髪がさらに抜け落ちるか、
「お仕置き」と称されてあれやこれやそれやどれや、と色々されてしまうに違いない。
恋人期間もけっこう長くなり、カガリはアスランの全行動パターンを心得ていた。


「ワァ!ステキナナマエダナァ!」

「そうだろう!」


政治の場で鍛え上げた作り笑いが完璧に決まった。

 

・・・とは言うものの、この可愛い猫は気に入った。

カガリはその黒猫の頭をなでなでしてあげる。
するとアスランが、まるで自分がなでられたかのような、とろけるような顔をした。
恋する乙女は盲目で、それさえも「可愛い!」とは思うのだが、
カガリの弟やその恋人が見たら鉄拳ストレートが間違いなく飛んでくる、
そんな笑顔だった。


「あ!白猫じゃないのは、オリジナリティを出したんだ。ロシアンブルーをイメージして」


「・・・へ〜・・・(ぜっったいアスランの髪と瞳の色を選んでる・・・)」


それも内緒にしておいてあげた。

 


「で・・・カガリっ」

「なに?」

「ほら、わかるだろう?」


アスランはそっと目を瞑り唇を差し出す。

あぁ・・・これは・・・

 

 

「お礼のちゅーは?」


「・・・・・・。」

 

まぁ、予想できたことだ。
ここで何もせず終われば、それこそ今夜痛い目にあう。

「はいはい」

カガリははぁっとため息をつきながらも、ちゅ、とアスランの唇にキスをした。
作ってもらったのだ。仕方がない。
けれど作ってくれと頼んだわけではないのにお礼と言われるのも・・・
が、やはり今日の睡眠時間が5時間未満になるのは辛いので、
大人しく言う事を聞いておいた。


カガリは気を取り直して、もう1度アストロの頭を撫でてやる。
するとアスランがアストロの背中に手を回し、何かスイッチを押したようだ。


「・・・?」

「見ててご覧」


カガリは言われるとおりアストロをじぃっと見つめた。
すると、ガがガ・・・と機械音がした後、アストロの口元がもごもご動いた。


「わ!な、なんだ!?」


素直に驚く。

アスランはまだ答えを教えてくれない。
けれど、すぐにアストロの仕掛けがわかった。

 


『・・・はじめましてニャ』

 

「・・・・しゃ、しゃべったぁ!」

 

驚きでカガリは口元を両手で抑えこんだ。
今まで、キラのトリィとか、ハロとか、
アスランが作ってきたペットロボを見てきたが、
こんなにはっきり、まるで生きてるかのように喋ったのは初めて見た。


「アスラン、すごい!すごい!」


きゃっきゃはしゃぐカガリを見て、プレゼントは大成功したとアスランは微笑む。

 

「私はカガリ。よろしくな、アストロ!」


『よろしくニャ、カガリ!』


こうして、カガリはアスラン制作、黒猫アストロと出会ったのだ。

 

 

 

 

 

 

つづく。

 

 

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