アスランがカガトロに寝取られてしまった、私はお払い箱、さようならアスラン。

 

 

 

 

 


アストロSP2。 ― 後 編 −

 

 

 

 

最初はパニッくっていたカガリも次第に落ち着きを取り戻し、少ない脳内を必死に使って現状を打破しようと頑張ってきた。

そのたびに打ち砕かれ現実をつきつけられアスランを恋しく思っていたのだが、心のどこかではそれも暫くのことと、楽観視していたのである。

しかしカガリの思うよりもずっと長くカガトロはアスハ家に居座った。

 

カガトロが里帰りという名の家出をしてから丸2日目。
人はそれをたった二日、というだろうが、カガリのアスランシックは刻々と限界に近づいていた。

・・・アスラン、私たちもう2日もキスさえしてないんだぞ!

今日も無邪気な猫ロボットはアスランの膝の上というカガリの定位置をしっかり占領しているところ。
嫉妬の炎がめらめら燃え上がる。
まさか自分がこんなにも嫉妬深い女だったなんて・・・。
元婚約者がとてつもない美人でも、赤毛の可愛らしいあの子が近づいても、巨乳もキラにもこんなに嫉妬したことなんてなかった。

むしろオーブに住むカガリ親衛隊の隊員たちの証言からは、そんなカガリを見て成長した大人の女、と人気に火がついたほどなのに。

 

まるで母親をとられ子供返りしてしまったようである。
カガリもそれを自覚していた。

 

はぁ・・・と何度目かのため息をついたそんな時、カガリをよく知る人物が彼女に声をかけた。
「カガリ様・・・」
おどおどと様子を伺うように、声をかけた女性・・・信頼の置けるカガリの母親代わりマーナであった。
マーナもカガリの不穏な空気を敏感に感じ取っていたため最近のカガリへの接し方は壊れ物を扱うように丁寧である。

そんな彼女の様子がおかしい。

「その・・・玄関に・・・」

「?」

新聞なら間に合ってますと言え、と言うところだったのだが、マーナが伝えようとしていたことが何のかはすぐにわかった。

風通しをよくするために開けていた窓から元気な声が聞こえてくる。

『カガトロー、迎えにきたのニャ−』

「あ、アストロ・・・!」

慌てて窓の上から見下げる階下の景色の中に、青い毛色の猫一匹。
そう、忘れるはずもないアスランが生み出した猫型ロボットアストロである。

『カガリにゃー、久しぶりニャー!』

その元気な声はカガトロの耳にも届く。

『あ、アストロ・・・きたのみゃ』

一瞬、笑顔になったのを、アスランは見逃さなかった。
やっぱりカガトロもさびしかったのだろう。自分と遊んでいる時でも時折ふっと何かを思い出したかのように静かになる。

ようやくその原因が迎えにきたか・・・とアスランはカガトロを膝の上から下ろしてソファから立ち上り言った。

「カガトロ、迎えにきたぞ。帰る準備をしような」

随分優しく促してあげた。頑固者もそろそろ素直になる頃だろうと。なんせ二日も好きな人と離れ離れになるのは・・・アスランだって耐えられないという経験あり。
会いたくてたまらなくなるちょうどいいタイミングでのお迎えだと、アスランはカガトロの頭を撫でてそう思う。

ところがどっこい。彼女はアスランの予想の上をいくかなりの頑固者だったのだ。

『ふ、ふーんだミャ!もう遅いミャっ』

ぷいっとそっぽを向いて鼻息荒く拒否される。

『アストロなんてしーらないみゃっ』

そう言いながらアスランのふくらはぎに顔を埋めるように甘えながら抱き付いた。それにカチンときたカガリが怒鳴り声をあげる。

「カガトロ!いい加減素直になれっ」

『カガリにいわれたくないミャっ』

「むむ・・・!正論・・・!」

なんと生意気な猫だろうか。
でもこんなにも意地っ張りなのは身に覚えがあるため強くいい返すこともできない。

「わ、わかったよ!じゃあ私がアストロを独り占めするからなっ、いいな!いいんだなっ」

『い、いいミャ!いいんだミャ!』

「いいんだな!ほんとにほんとにいいんだなっ!」

『ホントにいいって言ってるミャ!ほんとにほんとにいいんだってばミャ!!』

そっくりさん同士の応酬をアスランは止めることもなく微笑ましく見つめていた。
彼にしてみれば可愛いカガリと可愛いカガトロの喧嘩なんて可愛いだけ、なのである。

 

『アストロなんてカガリに《のり》つけてあげるミャ!』

「わかった・・・!」

それを言うなら熨斗だろう!というツッコミさえ忘れ、カガリは玄関先へと駆け出した。

『・・・みゃ・・・っ』

どうでもいい、のりをつけてあげる、と宣言したカガトロもなぜかついていく。やっぱり何だかんだ言ってもアストロが気になってしょうがないようで・・
アスランは苦笑しながら二人に遅れを取るも追いかけていく。

 

 

 

 

 

玄関に到着したカガリはドアノブに手をかけた。

「アストロ・・・今開けるぞっ」

すぐさまアストロを屋敷に入れるはずだったのに、それを制止する声がかかる。

『だめミャーーー!開けちゃだめなのミャ!』

それはやっぱりカガトロだった。
わざわざ追いかけてきてカガリを止めたのである。

「カガトロ!いい加減にしろっ」

『開けちゃだめったらだめなのミャ!!』

随分大きな声で叫んでいたため、それは強固な扉の向こう側にいたアストロの耳にも届いたようである。

『カガリ・・もういいニャ』

「え?」

『カガトロがいいっていうまでアストロはここには入らないニャ』

泣けてくるほど男前である。
けれどそんな男の決意を知る由もなく、カガトロは意固地に声を荒げた。

『ぜーーったい入ってもいいなんていわないみゃーーー!!』

「・・・」

一体どうすればいいものか・・・頭を抱えたくなった。

 

そんなカガリに一通り起こった出来事を見守っていたアスランがこっそりと耳打ちをする。

・・・しょうがないよカガリ、ここはもうカガトロの機嫌がよくなるまで待とう?

・・・う、うん・・・

せっかくカガトロをうちに帰すチャンスを逃してカガリは落胆した。
そして自分の中にあった影のような気持ちに気付いてはっとなる。

わ・・・私ってヤなやつだな・・・

カガリは反省するかのように自分の頬をぺちっと叩いて首をぶんぶん振った。


 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間、アスラン、カガリ、カガトロは部屋の中で何をするでもなく時間を潰していた。
カガリはアストロのことが気になっていたものの、アスランに暫く放っておこうと言われた手前、行動に移せないでいる。

そんな中、開けっ放しの窓から随分冷たい風が入ってくるなと思った頃、空が黒くかすみ始めていたことに気付いた。
天気予報では午後からは曇りだと聞いたがそれにしても薄暗い。夜になるのはまだ早いし、明らかに夕焼けとは違う空色に、ここ最近予報は当たってないことを思い出した。
カガリは外にいるアストロを気にし始める。
少し経てばカガトロも許してアストロをうちに招き入れることができると思っていたのだが、そんな気配は一向に見えない。

・・・雨、降ったらアストロどうなっちゃうんだろう・・・。

「雨・・・降るかもな」

心配を先に口にしたのはアスランのほうだった。
技術者でアストロの製作者であるアスランのほうがカガリ以上に気になって仕方ないのかもしれない。
そして、アスランが先に言い出したことから、このまま雨が降ると大変なことになるかもしれないと、余計にそう思わせたのだ。
危惧していたことは現実となる。

「あ・・・!」

ぽた、ぽた、と、零れ落ちるかのような雨粒が降り始めてしまったではないか。

 

 

もう一度窓の外、カガリは身を乗り出してアストロがいる玄関先を見てみた。
泣き顔のような曇り空からは、次第に激しく雨粒がしとどに降り注ぐ。それは玄関前で体育座りをしていたアストロの体を冷やすかのようで・・・
カガリは眉をひそめた。

さっきまではカガトロに帰ってほしくてアストロをうちにいれようとしたが、今は違う。
ただアストロの身が心配になっただ。
どんなに生きてるように動いていても彼はロボットなのである。
機械のことなど知らないカガリでもわかる。雨に濡れてしまえば・・・壊れてしまう可能性だってあるのだ。

もしかしたら、このままではアストロは・・・

「アスラン・・・」

「だめだ」

言おうとしていたことが何なのかわかっているようで、それでも頑なに拒まれた。

「な、なんでだよっ」

「アストロが入らないって言ってるんだから・・・彼の意見を尊重するべきだ」

「そんな・・・!」

男のプライドは男であるアスランが一番よくわかる。
カガリにしてみればそんなプライドなんて意地っ張りなだけで理解し難いものだった。
何よりアストロは自分たち二人の子供のような存在である。

 

カガリの心のうちを知ってか知らずか、アスランが呟く。

「・・・雨が強くなってきたな」

もちろんアスランの頭脳を駆使した防水機能つきで、ほんのちょっとしたことでは壊れることなどない。

しかし・・・

「これだけ濡れてしまうと・・・機能が停止するかもしれない」

「そ、そんな!」

製作者であるアスランの言葉にカガリの顔は一瞬にして青褪めた。

『ふ、ふーんだミャ!どうせアスランに直してもらえるミャ−』

未だに素直にならないカガトロがツンツンと言い返した。しかしアスランは・・・

 

「・・・・・・・無理かもしれないな」

 

と暗く呟く。

 

「1度壊れてしまったものを直すのは案外難しいんだよ。新しいものを作り直すよりも・・・」

 

「・・・・そ、それじゃあアストロは・・!」

 

カガリからの問いかけだったが、アスランはカガリでなくカガトロに向き直り答える。
その答えは、衝撃的なものだった。

 

 

 

「死んで、しまうかもしれない、な・・・」。

 

 

『・・・!』

 

 

 

アスランが言おうとしていることが、カガトロにもしっかりわかった。ロボットが死ぬ?そんなことがあるはずがないのにわかるのだ。
小さな体が震える。明らかにカガトロの目が変わったことにアスランは気付きつつも見てないふりをして。

 


「いい!もういいよ!私が助ける!」

もう、我慢できない。
カガリは男のプライドなんて理解できないままカガリはアストロのもとへと向かおうとした。

これでアスランと喧嘩になって、今までよりもずっと険悪なムードになってもかまわない。其の時はちゃんと謝って、甘えて、寂しかったことを白状して・・・それでいいじゃないか。
だってアストロはアスランと自分の大切な子供みたいな存在だから。大好きなアスランが私のために作ってくれた、大切な存在だから―――

 

けれどカガリが駆け出すより先に、小さな体が走り出す。
黄金色の毛色を揺らし、泣く機能なんてないはずなのに、涙が見える。

すばしっこくて、カガリが「あ」と言う前に駆け出した小さな小さなな子猫。

 

二人の、もう一匹の可愛い子供。

 

 

『アストロぉ!生きるほうが戦いだミャーーーーー!!』

 

 

多分、カガリ親衛隊製作による月刊カガリ様Vol.35で特集された<貴方が選ぶカガリ様名台詞>特集でも読んでいたに違いない。
なんせアスランの本棚には全号、保存用・観賞用・読書用と3冊ずつ揃っているのでその可能性は高い。

 

 

 

 

 

カガトロは必死になってアスハ家の大きな扉を開けようとしていた。
ドアノブに手が届かず、体当たりでドアをぶち破ろうとしているもののそこまでの力はなくて、慌てて追いかけてきたカガリとアスランが手を貸した。

ゆっくり開いた扉の向こうに、ぐったりと倒れこんでいたアストロを見つけた時、カガトロは泣きながら駆け寄った。

『アストロ、アストロ!』

倒れていたアストロをアスランは抱き上げる。

『アストロ、アストロぉ!』

足元ではカガトロがまだ騒いでいた。
カガリはしゃがんでカガトロの頭を撫でる。

「大丈夫。アスランが直してくれるから・・・」

『かがりぃ・・』

「だから・・・直ったら、アストロにごめんなさいって言うんだぞ?」

『うん・・・言うミャ!ぜったい言うミャ!大好きって言うミャ!』

随分な変わりようである。
大好きな人の危機を目の当たりにして改心したようだ。
カガリはそっと安堵のため息をつき、もう一度カガトロの頭を撫でた。

・・・今度は、私が素直になる番、だな。

大好きな人を思い、カガリはそう決意した。

 

 

 

 

 

 

 


 

「ふぅ・・・こんなものかな」
レンチを手にしたままアスランは乱暴に利き腕で汗を拭う。
カガリはどきっとしながらお疲れ様の意味を込めて冷たいお茶の入ったグラスを差し出した。
「ありがとう」
受け取りそれを口にしたアスランの喉が鳴り、それさえもドキドキしてしまう。

カガリは紅くなった頬を押さえ、なんとか話題を探そうとしていたがお茶を飲み干しアスランが先に口を開いた。

「ちょうどメンテナンス前だったし、タイミングよかったかも」

空になったグラスを机に置き、お気に入りの工具セットを工具箱の中に片付け始めた。
男のくせに几帳面なのだ。物を出しっぱなしにしないのはカガリも見習わなくてはいけないと思わせる。

工具箱に全ての工具を仕舞い込むと箱を閉める。ガシャと、その音で、アストロのそばに寄り添うように眠っていたカガトロが目を覚ました。

『・・・んー・・・あすとろ・・はミャ?』

「あ、起きたか。じゃ、アストロもスイッチ入れて・・・」

若干の起動音の後に、アストロが目をぱちくりしてからゆっくりと動き始めた。

『ふわぁ。おはようニャ〜。』

自分に起きた出来事を知らないようなまぬけな声に、アスランとカガリは同時に噴出した。

『アストロ、よかったミャ!』

噴出し笑った二人と違い、カガトロは心底安心したかのようにほっとしながら胸を撫で下ろしていた。
アストロはカガトロが許してくれたことですでにニコニコ笑顔である。

そんな二匹にアスランは声をかけた。

「どうする?もう一晩泊まっていくか?」

ここから二匹が暮らす施設まではそれほど時間はかからないだろう。
けれど時刻はそろそろ空が夕闇に染まる頃だ。アスランは二匹に判断を任せることにした。

『いいミャ!早く帰っていちゃちゃしたいから!』

アストロよりもカガトロが答える。アストロは横でうんと頷いていた。
あれほどアストロを嫌がっていたのにやはりただ意地を張っていただけのようである。

 

 

カガリは窓越しに外を見た。
雨は通り雨なだけだったらしく、今では沈む前の太陽が雲の合間から顔を覗かせている。
雲を見ても雨が降る様子ももうないし、念のため子供用の傘か雨合羽でも持たせておけば安心だろう。

 

「わかった。それじゃ、雨具持ってくるよ」

『うん!アストロ、手をつないで帰るミャ!』

『ニャ!』

 

まったく、誰の喧嘩が原因でこうなったと思ってる。
カガリは苦笑しながら、この二日間を思い出していた。
すっかり仲直りしていつものように振舞っている二匹が羨ましくなる。

 

 

 

アスランが念のためにもう一度アストロの起動チェックを行っている間に、
カガリはマーナに子供の頃使っていた雨具を用意してもらい、カガトロリュックの中に二匹分詰め込んだ。
そこへカガトロがてくてく近づいてくる。

『ねぇねぇカガリ』

「ん?なんだ?」

何を言われるのか、身構えていると・・・こっそり耳元で大胆発言。

『・・・いっぱいちゅーしてアスランとの赤ちゃん、はやく会わせてミャっ』

「・・・!か、かかかがとろぉ〜〜!」

「どうしたカガリ?」

「な、な、なんでもないっ」

噂をすればなんとやら、カガトロのお願いを叶えるためのもう一人の声にカガリは顔を真っ赤にさせる。
今はまだ、カガトロやアストロが二人の子供だけど、いつの日か本当にわが子を手に抱く日がくるのかもしれない。

そのためには・・・アスランに頑張ってもらわねば。

 

・・・ば、ばかっ、私ってば何考えてるんだー!!

 

アスランの傍に起動チェックが終了したらしいアストロ。
カガトロは手元のリュックサックを奪うかのようにしてアストロの元へ。

 

片手は仲良く手をつないで、もう片手は元気よく振って、さよなら、またね、の挨拶。

 

 

『『じゃあまたニャー(ミャー)!!』』

 

 

どたばたと可愛くもちょっぴり憎らしく、騒がしさはまるで台風のよう。
二人の間をひっかき回したかと思えば、大切なことに気付かせてくれて、そして幸せいっぱいに帰っていってしまった。

 

「結局ただの痴話喧嘩だったな」

「ん」

 

あ・・・そういえば・・・。とカガリは思い出す。
アストロの故障騒動で忘れさっていたけど、勝手に険悪なムード続行中なのである。

カガトロがいる間、何をしただろうか?ちゃんと伝えられた?
やきもちを焼くばっかりで肝心なことを言っていない。言いたくて言いたくてしかたなかったのに。

 

カガリはそっとアスランに寄添い、その手に触れた。

「カガリ・・・」

「た、たまにはな・・・」

やっぱり可愛くない言葉が出てきてしまって、自己嫌悪。

「何か言いたそうだけど?」

アスランが嬉しそうに促してくる。こいつ、わかっていて意地悪してるのか?とちょっとムッとしながらどうしようかと。

「べ、べつに・・・・・・・寂しかったとか、もうちょっと・・・かまってくれてもいいんじゃなかったのか・・とか・・・」

「うん」

「思ってなんてないし・・・・・・・・」

「うん」

「・・・でも、でも・・・」

 

あぁ!もう!キャラじゃなくたっていいっっ!

全国のカガリ親衛隊の女性隊員さんたちには申し訳ないけど・・・我慢の限界である!

 

 

「すごく寂しかったんだぞっ!」

 

 

そう白状してアスランの腕に飛びつくように自分の腕を絡める。
恥ずかしくて顔も合わせられないけど、気持ちが高ぶって言いたいことがすらすら出てくる。

 

「カガトロにやきもちやいちゃっただろっ!」

 

「私だってアスラン独り占めしたかったのに・・・」

 

「アスラン、キスもしてくれなかったし!」

 

止まることのない溜まっていた気持ちは、アスランにしっかり伝わっていく。
恥ずかしさで逃げ出したくなるほどなのに、彼のそばから一秒でも離れたくないカガリが、アスランに抱きついた手に一層力をこめた。
それはちょっぴり痛いくらいのものだけれど、アスランはその痛みさえも嬉しくてたまらない。

ただ、カガリの非難にも似た告白を浴び続けて、幸せに頬を緩ませていた。

 

「私のほうがアスラン好きなんだからな・・・っ」

 

止めの一言!はがっちりアスランの心を鷲摑みにしてしまった。

そんなものなくても、すでにアスランの心はカガリのものだというのに、それを知らないカガリは今日もアスランを翻弄してしまう。

「・・・嬉しいな」

一通り、言い終えた後に待っていた、アスランの声。
焼いてた本人はそれどころじゃなかったというのに、余裕綽々ではないか。

 

「だ、だって!猫だって惚れるに決まってるだろっ、私がこんなに好きなんだぞー!」

 

言い返すつもりでようやく見上げることのできた彼の顔は、それはもう嬉しそうに微笑んでいて。カガリの心はその微笑み一つで一瞬で打ち落とされてしまった。

自分の顔はきっと真っ赤だろう。呆けていてまぬけ顔で、こんなに綺麗に彼のように微笑めるはずがない。

 

綺麗で綺麗で、どきどきさせられて憎らしいじゃないか!

 

 

「うーーー!馬鹿っ!」

「えぇ!?何が!?」

 

照れ屋で恥ずかしがり屋なカガリはとうとうアスランに絡み付いていた腕を自ら解く。
このままだと心臓がもたないとわかったから。

恥ずかしくてたまらない。好きで好きでたまらない。

 

「カガリ・・・!」

彼女のぬくもりが消え、途端に冷えた腕に寂しさを感じたアスランは迷うことなくカガリに手を伸ばす。
この場から走ってでも逃げ出しそうなカガリを、逃がさないとばかりに抱きしめて。

「こうしたかった・・・とか」

ふんわり包まれて、アスランの腕の中でカガリはこくこくと頷く。
嬉しすぎる答えが返ってきて、アスランはカガリの耳元に小さなキスをすると、全ての女性が溶けてしまうくらいの甘い声で囁いた。

「じゃあ・・・2日と3時間25分ぶりにいちゃいちゃしようか」


「・・・バカっ、2日と3時間と28分ぶりだ・・・っ」

 

こうして二人は、勝手に喧嘩して勝手に仲直りして、相変わらずの一日をまた始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

END

 



あとがき

そして人はこれをWBCと呼ぶのであった(爆)。
拍手コメントで、WBC関係ねーよ!といただきまして・・・(笑)。
腰痛と闘いながらなんとか書き上げました。
アストロはあと1作だけで完全終了させたいです。さすがにそれ以上は考え付かない。
今はシリアスを描きたくてしかたないんでしばくらお預けですが・・・。新作ネタに困ったときにでも掲載してると思います(笑)。
相変わらずの馬鹿げたお話を最後まで読んでくださいまして本当にありがとうございました!

 

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