オーブ代表カガリ・ユラ・アスハ。
そしてその恋人兼護衛兼補佐官のアスラン・ザラ。

時々喧嘩して仲直りして毎日ラブラブしてるこの2人は暑苦しい物語にはもう一つ可愛らしいカップルが。

 

今回はそんな二人?の喧嘩から始まった、ある日のお話である。

 

 

 

 


アストロSP2。―  W B C 世界的バカップル 編―

 

 

 

 

 

 

『ミ゛ャ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!』

 

孤児院内に響き渡る大声に、おもちゃに夢中になり遊んでいた子供たちが一斉に顔をあげる。
何人かの察しのよい子供たちは「またか」と呟き、好奇心旺盛な子たちはとてとてと声がするほうへと駆け出していった。
素っ頓狂な悲鳴の聞こえた場所をこっそりと覗きこんでみれば、わなわなと震えてる金色の猫が一匹、冷蔵庫の前で立ち尽くしていた。
彼女こそアスラン・ザラが煩悩だけで生み出したカガリそっくり猫、その名もカガトロ。

「かがとろ、どうしたの?」

じっと見ていた4歳の女の子が尋ねてみる。

『ワタシの・・・ワタシのプリンがないのミャ・・・!!』

3時のおやつの楽しみに残しておいたのミャ〜!と怒りの声をあげる彼女を見て、
女の子は可哀想に思い、その小さな手のひらでポケットに入ってるアメを差し出そうとするも・・・
悔しさに地団駄踏みながら「ミャ゛ーミャ゛ー!!」唸ってるカガトロに後ずさってしまった。


その時である。

 

『あ!カガトロぉ〜、大きな声だしてなにかあったのニャ?』

 

なんにも知らない、もう1人の主人公、アストロがにこにこ笑顔で現れた。
その手に「とろけるプリン・オーブ限定発売ハバネロ味・今ならカガリ様フィギュア付き!」の空容器を持って。

 

『あ、アストロ・・・そのプリン・・・っ』

 

カガトロが指差した先にあるプリンの空き容器。まずいと言いながらもアストロの口のあたりには唐辛子に染まった真っ赤なぷりんが一欠けら。
誰が犯人かなんて問わずともわかる。

 

『あ?これ?まずいニャ』

 

 

『ミャ゛ーーーーーーーー!!!!』

 

プリンを勝手に食べられてしまった上に、勝手に食べたくせに、
あんなにあんなにうまいあのプリンを、迷いも遠慮もなく「まずい」と言いきったアストロのその一言にカガトロの怒りは脳天に達してしまった。

 

火山の噴火音のような大声とともに。

 

 

『みぎゃーーー!!みぎゃみぎゃぁあ!!じっかにかえらせていただきますミギャ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!』

 

 

 



 

 


 

 

 

 

 


『とゆーわけだったのミャ・・・』


「そうか・・・そんなことが・・・」

 

ところかわってアスハ邸。


ここのご主人様カガリ・ユラ・アスハとその下僕・・・
失礼、恋人のアスラン・ザラが夕食後のまったりとした時間を使い夜の帳を理由に人目を忍んでいちゃいちゃしていたところ、
大きな大きなリュックを背中いっぱいに背負いぷぅっと頬を膨らませたオレンジ色の可愛らしい猫が現れた。

月に1度ほどの里帰りなら隣に黒猫一匹がついてくるはずなのに、その様子だと家出してきたことは容易に想像できた。

カガリそっくりの拗ね方からして、アスランには彼女の不機嫌の理由がただの痴話喧嘩だということにもすぐさま気付いたが、
理由を聞かずにいるとさらに機嫌を損ねるのは目に見えているので何も知らないふりをして「どうしたんだ」と尋ねる。

すると、

『かくかくしかじかこうなのミャ!』

・・・ということだったのである。

 

 

『アストロはサイテーミャ!ミャ!ミャ`ーーーーーーー!!』

地団駄踏みつつ鼻息荒く可愛らしく暴れているカガトロ。もはやなだめてもその怒りはおさまりそうもない。
ここは1つ、怒り疲れてアストロを許すまでこの屋敷に置いてやったほうがいいと、2人はそう結論付けた。

 

「ほら、カガトロ。いつまでも怒ってないで」

アスランはご機嫌とりにと、カガトロを抱き上げた。

「可愛い顔が台無しだよ」

おまえはどこぞのホストか。

『みやぁ〜…』

抱き上げた小さな体はとまさしく猫そのもので、人懐こい猫のように頬を摺り寄せてくる。
アスランの頬も自然に緩んだ。

『やっぱりアスランはアストロと全然違うミャ〜!』

心底嬉しそうにアスランにぎゅうっと抱き付くカガトロ。
カガトロにとってアスランは理想の男なのである。

アストロなんかと違い優しくて男前で器用で変態で天才で・・・

この数々の賛美の中に何かおかしなところがひとつあるのだが、とにかくいい男なのである。

どうせならアスランが自分の恋人だったらよかったのに・・・猫でありながらそんな淡い気持ちさえ抱いてしまう。
こういう時は人間になりたかったのだと、切ない乙女心をきゅんきゅんさせていた。

 

カガトロはたまに考える。
アニメのように魔法がかかって人間になることができたのなら、カガリよりずっと可愛くなってアスランのために尽くすいい女になるのだと。
そんな願いが叶わないことはわかっていても、カガトロのアスランへの憧れは、もはや伝説が美化されすぎるのと同じように日が経つほどに大きく強くなっていったのだ。

 

そしてアスランもアスランでカガトロが可愛くて仕方ない。
なんせ自分が生み出した子である。カガリに似せたからというのが一番の理由だが、予想以上にかわいい猫に育ってくれたではないか。

 

実の娘のように微笑ましく温かい眼差しを向け頭を撫でてやった。
するとカガトロはにっこり笑い項垂れるようにうっとりとしながらアスランに寄りそう。その姿はまさしくカガリである。可愛らしい。

『そーだっ、ワタシ、今日はアスランといっしょに寝るミャ!いいミャ?』

アスランは微笑みながら頷いた。

それがあまりにも自然で、毎夜の営みの前の合図のようでいて・・・2人(うち一匹)を見ていたカガリは驚愕した。

 

・・・か、カガトロ・・・!私の分身のくせにあんなにうまくアスランを誘えてる・・・!!!!
(※注:誘ってません)

 

 

 

 

『それじゃ、ワタシをベッドにつれていくのミャ!』

すでに夕食を終えていたアスランたちの今日という日はあとはもう眠るだけの時間ほどしか残されていなかった。
いつもならベッドにいく前にもカガリといちゃいちゃしてるのだけれど、カガトロがそばにいるのではさすがに無理である。
人前では恥ずかしがるカガリもきっとそうだとうと思い、アスランは少しだけ苦笑してカガトロに言った。

「はいはい、お姫様」

『姫っていうミャよ!』

「はいはい」

『はい、は一回ミャ!』

「はーい」

長年連れ添いながらもラブラブさを忘れていない熟年カップルのようないちゃつき具合に
立ち尽くすカガリに気付かず、2人(うち一匹)はアスランの部屋の寝室へと移動していく。
もちろんお姫様だっこのままで。カガトロはベッドへと運ばれていったのだ。

そこにいたカガリはヒロインの面影さえもない、そう、まるでただの脇役。
例えるなら・・・ガンダムSEED・DESTINYというアニメの主人公シンのような存在だった。これ以上ないわかりやすい実例である。

 

―――さっきまでアスランといちゃいちゃいちゃいちゃしていたのは自分だったのに・・・

 

ぽつんと1人取り残されていたもののこの徒ならぬ事態にはっと気付き、慌てて2人(うち一匹)の後を追いかけた。
2人(うち一匹)が怪しい関係になる・・・一線を越えてしまうかもしれない・・・!!・・・そんな関係になるはずもないが。

 

 

 

一方、お姫様だっこで運ばれたカガトロはアスランの部屋の大きなベッドの上ですでにごろんと寝転がっていた。

そんなことをまだ知らぬカガリは、戦闘態勢を整えるためまず自室へ戻り、お気に入りの枕を抱きかかえまたアスランの部屋へと向かう。
これはカガリなりの、アスランお誘い法の一つである。
大抵がそんなことしなくてもお誘いされる側なのだが、カガリだってたまには攻める。

「あ、アスラン・・・ッッッ」

ドンドンドン!!!と、拳でアスランの部屋のドアを殴るかのように叩く。
片手で抱きかかえるように自分専用のお気に入りの大きな枕をぎゅうっと、もう片方は部屋の扉をノックし続けて・・・。

「アスラン!・・・いるんだろっ、で、でてこい・・っっ」

その勢いは恋人の部屋を訪れる可愛い彼女というよりただの取り立て屋である。

しかし取りたて屋と罵られようと残念ながら彼女には、
彼のような手先の器用さを生かしたピッキング技術も夜這いスキルも0に等しいため、正攻法・正面突破で行くしかなかったのだ。

ノックしてから10秒ほど、部屋の扉が開いた。

「カガリ?どうしたんだ?」

「・・・う」

まるで忘れ去られたかのような言葉ではないか。
ちょっぴり悔しい気持ちに返す言葉に詰まってしまう。
言葉で伝えるのは、実はアスラン以上に苦手なのかもとさえ思う。考えずにでてきてしまう言動もあるのに・・・

怯むな自分!

カガリは自らを奮い立たせた。

「え・・・えっとぉ・・・い、いっしょに寝ていいかっ」

アスランが目をぱちくりさせたので、カガリは慌てて取り繕う。

「カガトロも大勢で寝たほうが楽しいだろっ、な!?いいだろ!いいよな!!」

「あ、あぁ、そうだな。・・・どうぞ」

カガリの気迫に気圧されたのかアスランは彼女を部屋の中へと招き入れた。
促され足を踏み入れたカガリにとってもたくさんの思い出のある彼の部屋の奥・・・
そこにあるベッドには、やはりカガトロがうつ伏せて脚をぶらぶら一人遊びに勤しんでいる。

 

・・・あ、あそこは私の居場所なのに・・・!

 

カガリの抱きしめていた枕が手からするりと抜け落ちた。

「か、カガリ?」

アスランがそれをさっと拾い上げるも、悲劇のヒロインに浸ってしまっている彼女には聞こえない。

「カガリ?」

「あ・・・ご、ごめん・・・なんでもない・・・」

平静を装い、彼が拾ってくれた枕を受け取る。しどろもどろの答えに、アスランは首を傾げるも詳しく尋ねることはしなかった。
鈍感・最低と言われ続けたアスランはあれ(女難)から女性という女性と距離を置くようにしていたものの、
さすがに猫ロボットに嫉妬しているなんて想像もつかなかったのだ。

 

『カガリもいっしょに寝るのミャ?』

カガリをライバル扱いしてはいるものの、カガトロはカガリのことも大好きなので嬉しそうに尋ねてくる。
しかし余裕のなくなっていたやきもちやきカガリにはそれが大人の猫の余裕にも思えたのだ。

「あぁ・・・そうだ・・・いっしょに寝るんだ・・・ははは」


女の子にしては低めの声が、何か危ないものにとり憑かれたかのようにさらに低くなる。
何が起こっているのか気付かない暢気なアスランがベッドに腰掛ける。

それがゴングだった。

ライバルの対峙、全面戦争勃発である。

アスランの本命としてここで負けてはいけない、アスランの身も心も奪われてなるものか!!
と、大人の女として四の五の延べずにそうっとアスランの横に滑り込もうとする。が!


『川の字ミャ!』

「!!」

猫らしい俊敏な動きでど真ん中を占拠されてしまった。

・・・か、かがとろぉ!

アスランはカガリの胸のうちに気付かないまま電気を消しベッドへ横になろうとしている。
ぱっと消えた部屋の灯りは、まるでカガリの心の内側のようで、いつも前向きちょとつもーしん娘カガリの心に深い影を落とした。
ぱたんとベッドに仰向けになる。スプリングが揺れた。いきなり暗くなったから、暗がりでアスランの姿がよくわからない。

 

こういう時真っ先にアスランは自分に触れてきて、なんにもしない時でも小さなキスをしてくれるのに。

そうして暗闇に目が慣れた頃に、優しく微笑んでくれるアスランの笑顔に気付けるのに。

「あ、あすらん・・・」

今日は触れてきてくれない。なんだか急に寂しくなって、迷子の子供が母親の名をつぶやくように声をかける。

「・・・ん?どうした?」

そのカガリの不安そうな声に、アスランはいつものように甘い声で言葉を返した。
あんまりにも甘い素敵な声だったから、悲しい気持ちもさっきの怒りもどこか遠い彼方へ忘れ去って一瞬だけとろけてしまったカガリ。

「あ・・・あの・・・」

「ん?」

アスランが上半身を起こし、寝転がってる自分を見つめてるのがわかった・・・。ドキドキ心臓が鳴り始めた。

あぁ・・・このまま・・・私を好きにして・・・

キャラじゃないから。という理由で普段は絶対絶対絶っっ対に口にしない言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡っていった。

「あ、アスラン・・・・」

カガリはそっと目を瞑る。アスランの甘い唇を待った。早く口付けて欲しい。もう待てない。今日はOKだから・・・。

「カガリ・・・・」

アスランの声が近づいてきた。あと少し・・・あと少しで望んだものが手に入る・・・。

 

 

 

 

 

しかし、カガリの願いは打ち砕かれる。

 

 

 

『だめミャ!』

 


 

彼の声だけに宙を浮くような夢見心地に浸っていたカガリはその一声で現実に引き戻された。

 

『ちゅーはだめミャ!あかちゃんが出来ちゃうミャ!』

 

アスランとカガリの間にいたカガトロがミャーミャー言いながらアスランの胸に抱きつき、キスしようとしていた彼の行動を止めたのだ。

「うーん・・・カガリにおやすみのキスさせてくれないか?」

胸にがっしりひっついてくるカガトロの頭を撫でながら、アスランはお願いしてみた。
しかしカガトロの許しは簡単には貰えなさそうである。

『赤ちゃんできちゃったらどうするつもりミャ!』

「あ・・・いや、そこまではするつもりは・・・。じゃ、じゃなくて!キスではできないから・・・っ」

いくらアスランとはいえカガトロがいる前でキス以上ができるなんて思ってなかったし、軽いキスをしたらすぐに眠りにつくはずだった。
手を出したいのは山々だけれど、カガリがそばにいてくれるだけで幸せな夢を見ることができるのだから、今日はそれで我慢するつもりだったのだ。
まさかカガトロにおやすみのキスさえも止められてしまうなんて。

しかも間違った知識が埋め込まれているのは何故だろうか。さすがに詳しいことがインプットされていたらそれはそれで怖いけれども。


『じゃ、どうやったらできるミャ?』

「え・・・!?」

『おしえておしえてミャー』

参った。子供のこういう質問は本当に困る。
しかもカガトロはカガリが元となってできた猫型ロボット。好奇心旺盛なところも、貪欲に求め続ける探究心も、本当に瓜二つ。

「えっとな・・・う〜ん・・・どうするか・・・」

『おしえておしえてミャ〜』

未だにアスランに抱きついたままカガトロは無邪気に問いかけ続ける。アスランは頭を抱えた。本当に困ってしまったのだ。

 

 

しかし一人だけ、壮大な勘違いをしている者が・・・。

 

 

―――カガトロ・・・、アスランに教えてもらうんだ・・・私の時みたいに・・・っ

 

 

カガリはいろいろ教えてもらったらしい。
実際のところはお互い若葉マークの初心者だったため、男としてのプライドを見せたかったアスランが必死だっただけなのであるが、
それはアスランの名誉のために黙っていてあげたいところだ。

 

あの夜の、とろける過去のいろいろを思い出し、ついに二人(うち一匹)の関係に耐え切れなくなってしまう。
落ち着いて考えればアスランとカガトロの間に何かがあるはずもないのに、この時のカガリは完全にハツカネズってたのだ。

 

 

「あ、アスラン・・」

「ん?カガリ・・?」

「や、やっぱり・・・私、自分の部屋で眠る・・・」

「え?」

 

カガリはベッドからのろのろと立ち上がる。持ってきた枕を持ち帰る元気もない。
いきなりのことでアスランは驚きながらカガリを止めようとするが、それより先にカガリが声を張り上げる。

 

「ごめんアスラン・・・・・・・・・そして・・・さよならーーーーーっ!!!!」

「え?カガリー?」

 

アスランの声は、とてつもなく速い逃げ足のカガリには届かなかった。

誤解したまま、ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐると、同じ考えが頭を駆け巡り駆け回る。

 

 

―――なぜアスランは自分を捨てててしまったのだろうか?(注:捨てられていません)

―――私はアスランをカガトロに寝取られてしまったんだ・・・!!!(注:寝取り違いです)

 

 

「アスランのバカ・・・ぐすっ・・・ばかやろーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

 

飛び出したアスランの部屋から自室までの道のりの間に二人の思い出が蘇るかのように思い出された。

 

 

アスラン、さようなら、アスラン。今でも大好きな人・・・!
明日会うのが辛い。

でも安心しろ、おまえをクビにしたりはしないから―――


「でも時給10円減らしてやるーーーっ」

 

切ない乙女心とともに自室へ駆け出し逃げていったカガリ。
恋する乙女は大好きな彼のためにいつも可愛らしく不安定。

 

 

果たして二人の運命や如何に・・・。

しかし、ネタバレするまでもなく、仲直りしていつものようにいちゃつく、そんな展開へ続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

前編END

後編につづく。

 

 

 

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