Angelus

 

 

 

 

「こら!危ないだろ?」

 

脚立をよじ登り、緑のツリーのてっぺんに彼女の髪と同じ色の金の星を飾ろうとした彼女。
注意したにも関わらず、「いつもやってることだろう?」というような瞳をこちらに向けてくる。
たしかに、毎年やっていること。
ツリーのてっぺんに星を飾ること、それは彼女の特権だ。
しかし

「・・…妊婦が高いところなんて、危ないだろう?」

 

今の彼女のお腹は大きかった。8ヶ月目に入ったばかりだ。
診断で、2人いることもわかっている。
そんな大きなお腹で、いくらたいして高くはないといっても、無茶にもほどがある。

 

「ほら・・・・」

 

両手を広げて、降りるように促す。
しぶしぶと、それに従って、俺の胸へと降りてきた。
お腹を圧迫しないように、そのまま優しく抱きしめる。
そして、出会った頃より長くなった金の髪に唇を寄せて囁く。

 

「・・・・今年は俺が飾るから、ね?」
「・・・・・・うん」

少しだけ残念そうに呟いた。
抱きしめていた身体をそっと離すと、カガリは右手に持っていた星を俺に手渡してきた。
表情は悔しそうに、わずかに唇をとがらせて。

 

全く、君は・・・・。

 

少しでも機嫌がなおるように、その唇に軽いキスを落とした。
少し頬を染めて睨まれたけれど、彼女の口元は笑っている。

 

それを確認すると、先程までカガリが上ろうとしていた脚立に足をかけた。
俺の身長だと、脚立の一番上にまで上らなくてもてっぺんに手が届く。

そんなことさえも、カガリには少し悔しいんだろうけど。

「私の特権なのに・・・・」
「今年だけ、な?」
「ま、しょうがないか。」

 

星がてっぺんに飾られると、カガリはお腹に両手を当てた。
優しく優しく撫でる彼女。

「もうすぐ、お母さんになるんだもんな」

そう言いながらお腹を優しく撫でる彼女は、もう立派な母親だ。
聞こえるかな、と歌を唄い始めた。
俺の大好きな音色が部屋に響く。

 

 

産まれてくる君達へ

君達はきっと世界一幸せになる
世界一素敵な母親がいるのだから、きっと
だから、早く産まれておいで
いっぱい愛してあげよう
そうして今度は、家族4人でお祝いしよう

 


「私とアスランと・・・来年は4人でお祝いだな」
「あぁ」

同じ事を考えていたことが嬉しくて、脚立から降りると真っ先に、またカガリに口付けを落とした。

昔と変わらず、赤くなる。
嬉しくてつい笑ってしまったら、ふいをついて唇に何かが触れてきた。

それは、柔らかい彼女の唇

「おかえし」

ふいうちの、珍しい彼女からのキスに俺は慌てて頬をおさえた。

「アスランは赤、か?」

けらけらと彼女が嬉しそうに笑うから、俺も負けずに言ってやった。

「カガリも、だろ」

互いに見詰め合ったあと、噴き出して、最後は笑い声が歌のように重なりあった。

 

 

これが俺とカガリの幸せな音色

 


 

 

聞こえているかい?

 

 

 

 

 

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