クリスマスというものは、家族なり恋人同士なり寄りそい合いながら幸せな時をすごすものだと思う。

僕は今、1人だ。

 

 

 

 

天使が微笑む日

 

 

 

「ごめんなさい、キラ。その・・・・24日にお仕事が入ってしまいまして・・・」

言葉を濁しながら、そう言った彼女。
それはつまり、イブの日、2人でいようとの約束が破棄されたということで・・・

「・・・・・・仕方ないよ、お仕事だからね?」

いつまでも深く頭を下げる彼女。
だからできるだけこれ以上彼女を傷つけないように優しく優しく言ったつもりだ。

 


そしてこの日を迎えた。

父さんと母さんは2人きりで旅行中。
それならカガリとアスランと、小さなパーティーでも開こうか?
と思っていたけれど、二人でお祝いできることが嬉しそうなカガリを見たら、何も言えなくなった。

テレビ画面には賑やかな街が映る。
なんて僕の心とは違った光景なのだろうか。
1人寂しく、ジングルベルを口ずさんでしまった。
寄り添い合う恋人たちがうらめしい・・・・。

「・・・・・・・・・・・もうすぐ、ラクスだな」

ラクスの仕事は生放送というもので、なぜわざわざクリスマスにそんな番組なんて企画するんだ、と
胸に湧き上がる小さな怒りと嫉妬をどこにやっていいのかわからない。

 

とりあえず今は、画面越しだろうと彼女の姿が見たかった。

 

チャンネルをかえるとちょうど、歌番組らしきものが始まっていた。
そこにいたのは、今日隣にいるはずだった彼女。
メインゲストとしてトークに参加している。

司会者が男ということが、またなんだか悔しい。
あぁ・・・・・そんなに近づかないでよ。

 

番組が進行していく中で、司会者の男は言った。
「ボクはですね〜、彼女いるんですが今日仕事で怒られたんですよ〜。」
軽く周りの人間の笑いを誘いながら、ラクスのほうへとすこし身体を近づける。
・・・・だから、近づきすぎ・・・!
本当に彼女がいるんだろうか?

「寂しい、とか、ラクスさんはそういうことありませんか?」

質問がまるで記者のようだ。
ここでラクスのゴシップでも探そうとしているのだろうか?
・・・・・そんなの無駄なだけなのに。
僕の存在は秘密なんだから。

 

「恋人がいたら・・・わたくしもそう思いますわ」

ほらね?
寂しいけれど仕方がない。

でも、ちゃんとわかってるんだ。
彼女が僕の存在を隠すのは、僕のためだってことを。
彼女の深い優しさだっていうことを。

 

「いっしょにクリスマスを過ごせないのは寂しいですわね・・・・」

 

うん。
僕も寂しいよ。

 

「でも、いつだって心は一つだと思います」

 

凛として言った彼女に、司会者の男は軽口をたたくことはなくなった。
ラクスの周りが温かい空気に包まれたのが、画面越しでさえわかる。
なぜなら、僕の温度もすこし上がったから。

 

 

「ねぇ・・・そう、思いませんか?」

 

キラ、と。

 

画面の向こう側から、彼女が僕に微笑みかけた。

今のは、僕に、だ。
絶対僕にだ。

 


まったく・・・ラクス、君って子は・・・・
一部の感のいいマスコミたちが騒ぐかもしれないよ?

 

あぁ、でも
受けてたってやる。
負ける気なんてしない。

 

君を、世界中で一番想っているのは僕なんだから。

 

 


「明日は1日遅れのイブ、かな?」

ふたりで、お祝いしよう。

またジングルベルを口ずさむ。
今はやっぱり1人だけれど、今度はなんだかとても幸せだった。

 

 

 

 

END

 

 

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